【読書記録8】くらのかみ
旅と読書をこよなく愛するBrain Library七瀬 透です。
小野不由美「くらのかみ」
今回紹介するのは、小野不由美の「くらのかみ」。ホラーとミステリーが、見事に融合している作品だ。
ホラーの恐怖と、ミステリーの恐ろしさが同時に襲ってくる感覚は、なんともいえない感情を心に植え付ける。
新感覚ミステリーホラーを、この夏体感してみてはいかがでしょうか?
決して「四人あそび」はしないようご注意ください。
あらすじ
主人公であり、この物語の語り手である小学6年生の耕介は、夏休みに親戚の集まる本家を訪れていた。
そこで知り合った子供たち4人と、話に聞いた「四人ゲーム」を実行してみることに。
4人では絶対に成立しないはずのこのゲームが、できてしまったことに驚いた子供たちが確認すると、子供の人数が増えている。けれど、誰が増えたのかわからない。大人たちも、子供が増えたことに全く気付いていない。
そんな時に、さらなる事件が起こる・・・!
その事件をきっかけに、怪奇現象なのか、誰かの策略なのか、次々に怪異が相次ぐ。
これは、祟りか怨念か、それとも誰か身内の仕業なのか。ミステリーとホラーが融合し、真実は更なる深みにはまっていく。
書感
私が初めて小野不由美さんを知ったのは、まだ学生の頃アニメで見た「十二国記」でした。
最初はアニメで見たのですが、その壮大な世界観に鳥肌が立ったのは今でも覚えています。
その後、なけなしのお小遣いをはたいて小説を買い求めた記憶があります。
そんな小野不由美さんの知られざる傑作と書かれると、買い求めざるをえない。
書店ですぐに手に取ってしまったが、その期待を裏切らないのが小野不由美さん。脱帽です。
十二国記では、その壮大な世界観に魅了されたが、今作は、ホラーとミステリーの見事な調和に魅了された。
内容としては、子供たちが食事に毒草を混入させた犯人を探すのだが、常に1人増えた状態なのだ。
そんなホラー設定を忘れかけてしまうほど、子供たちの謎に迫る姿は圧巻なのだが、終盤「座敷童子」というスパイスが効いてくる。
この作品、児童向けミステリとして書かれています。子供が主人公のホラーミステリーでありながら、幸せと不幸の基準をどこに置くのか、善悪の判断は何でするかなど、子供に知ってもらいたいことが最後には語られている。
そして、子供特有の夏休みの楽しみに溢れた今作品は、今子供の少年少女にはもちろん、かつて少年少女だった大人たちの心にも響く作品であることは間違いない。
大人にも子供にも、ぜひ楽しんでいただきたい一冊である。
私の幼い子供たちにも、いずれは読んでもらいたい一冊だったので、我が家の子供図書館の棚にそっと、入れておいた。
いつか子供たちが手に取ってくれるその日まで、座敷童子は我が家の片隅で待っていてくれることだろう。