【読書記録2】トヨタの子
吉川英梨「トヨタの子」
実在する企業のトヨタ自動車の創業者と御曹司を主人公の物語を奇想天外に描く!実在する人物を登場人物に置きながら、疾走感のある作品に仕上がっている。
ぜひ、ご堪能ください。
あらすじ
物語は、幼き日の豊田章男が自宅倉庫でお札の付いた古びた箱を開けてしまうところから始まる。
そこから、豊田章男は祖父であり、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎の元へ何度もタイムリープをしてしまう。
実在するトヨタ自動車の創業者と御曹司がリアルに生きた時間を、タイムリープという奇想天外な設定で、面白く描き出している。
所感
「新しい伝記の形として、これもありなんじゃないか?」この本を読了して最初に思ったことだ。
元々、本好きだった私は、幼き日に野口英世やヘレン・ケラー、キュリー夫人など様々な偉人の伝記を読んだ。
確かに感嘆したしたことは覚えているが、楽しさやワクワク感を覚えた記憶はあまりない。
「すごいなぁ」と思って、本を閉じてそこで終わり。
しかし、今私はこの本を読了して、近々トヨタ博物館に足を運んでみようとまで考えている。
どこまでがノンフィクションなのか確かめたくなったのだ。
創業者、豊田喜一郎氏の記述の部分は、ほぼほぼ真実に近いのではないかと推察しているのだが、その答え合わせがしたい。
一読者にそう思わせたのだから、この小説は伝記と捉えても間違いないと思う。
トヨタのプロパガンダの本だと言われてしまえばそうなのかもしれない。
実在する者の物語が美しく描かれれば、その感想も間違いではないのだと思う。
しかし、トヨタの創業者の夢や希望は、本当に美化されただけのものなのだろうか?
そういう情熱がなければ、新たな物を生み出すことなどできない。それもまた、事実なのではないだろうか?
日本の現状や未来に憂え、そつなく生きていくことを望む人が増えた、昨今の若者にこそ手にとって読んで欲しい一冊だ。
我々が、今当然のように乗っている自動車が、どのように大衆車として定着していったのか、ぜひ知ってもらいたいと私は、強く思う。