【読書記録3】六人の嘘つきな大学生
Brain Library管理人の透です。
今回紹介するのは、浅倉秋成さんの「六人の嘘つきな大学生」
伏線の狙撃手と言われる作者を有名にした話題作!
2024年秋に実写映画化予定の本作品を一足先に活字で楽しんでみてはいかがですか?
あらすじ
新進気鋭のIT企業「スピラリンクス」の最終選考に残った6人の大学生。
最終選考はグループディスカッション。上手くいけば全員で内定を勝ち取ることができる。
6人は、与えられた1ヶ月という時間で最高のチームを作り上げ、全員合格を目指す。
しかし、最終選考の直前に、突如として選考内容が変更となる。
「6人の中から内定者を1人選ぶこと」6人が仲間から敵に代わった瞬間だった。
たった1枠の内定をかけ最後の選考に挑むが・・・。
選考の最中「●●は人殺し」と告発文の入った封筒が見つかる。
6人の嘘とは何か?
就職活動という異様な状態の中で描かれる6人の嘘と真実を見抜けるか?!
書感
まず、作者と同世代のためか、就職活動中のこの異様な心理状態についてついつい共感してしまう。
いわゆる就職氷河期といわれた時代の就職活動は想像を絶するものであったことは、私自身も身をもって体感している。
来る日も来る日も、複数の会社説明会や面接など梯子した記憶が今もなお鮮明に残っているのは、あの日々に強烈な劣等感や猜疑心を植え付けられたからだろう。
この本を読んで、伏線回収の面白さよりも何よりも私の心を射抜いたのが、人事側の目線だった。
否定し続けられ、自分はダメな人間なのだと自分自身にレッテルを貼ってしまったが、実はそんなに自分のことをしっかり見てくれた人などいないのだ。
現在の日本の就職試験のあり方は、社会に出る前に、若者たちのやる気と自信を根こそぎ奪い取るものである。
そんな社会問題にも触れている作品に思えた。
嘘に嘘を重ねる6人の大学生たち。その嘘や真実が明らかになるたびに、真実や真犯人がコロコロと代わっていく展開は、驚きと共に、全ての学生に共感してしまう不思議な感覚が味わえる。
さも当然のように、人生の1イベントとして、乗り越えてきた就職活動のあり方を考えさせられる作品であった。
伏線の狙撃手と言われるだけのことはあり、全ての伏線を見事に回収している手腕は見事なもので読み応えがあり、全世代にぜひ読んでもらいたい一冊であった。
私と同じ、就職氷河期を乗り越えてきた30代には、深く深く刺さる1冊であることには間違いないだろう。