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京都-米原 遠まわりの旅
最速18分を6時間かけて行く
京都から米原へ、通常行くとしたら、皆さんはどんなルートで行くでしょうか。東海道新幹線なら最速18分、運賃1,170円、自由席ならそれに990円を足せば行けます。JR西日本が誇る新快速なら54分。運賃1,170円だけで行くことができます。
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まぁ、東海道新幹線でわざわざお金を掛けなくても、乗り換えなしで1時間以内で行けるなら、在来線で行けばいいでしょう。
というわけで、朝10時、京都から出発です。ちょうど新快速がやって来ましした。近江塩津行ですが、私が乗った車両は米原止まり。この電車に乗っていけば11時前には米原に着くことができるでしょう。
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京都から新快速に乗って次の駅は山科です。
私はそそくさと降り支度をして、下車し新快速を見送りました。
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そうです。今日は京都から米原まで、遠まわりをしていく旅程。新快速で米原までひとっ飛びなど、もったいなくてできません。
山科駅を出てすぐには京阪京津線の京阪山科駅があります。ここからびわ湖浜大津行に乗車します。やって来た列車は地下鉄からの直通列車。京阪電車に乗るのは何年ぶりでしょうか。
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京阪京津線は国道1号線に沿って逢坂峠を越えていきます。その道中は険しく、途中では61‰(パーミル)という日本の鉄道の中でもかなりの急勾配を登り、大谷駅の先では通称90度カーブとも呼ばれる半径45mの急カーブを駆け抜けます。1車両あたり16.5mの4両編成の列車がキーキーと音を立てながらカーブを曲がっていくその姿は迫力満点。
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上栄町駅で途中下車。列車は身をくねらせるようにして発車していきました。この駅も急勾配の途中にある駅で、駅周辺も起伏に富んでいます。駅すぐ南の長安寺の参道からは昔ながらの街並みの向こうにビル群を眺めることができました。
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そして、20分後にやってくる次の列車に乗車して、びわ湖浜大津へと向かいます。上栄町を発車してすぐ、列車は道路の中を走る併用軌道区間に入ります。実は路面電車の法律では、車両は30m以下と定められているらしいのですが、京津線は特例で4両編成66mの車両が路面区間を走ります。
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列車は京津線の終点・びわ湖浜大津に到着。駅前のペデストリアンデッキからは、遠く青い琵琶湖を望むこともできました。今日はきれいな晴天なので、琵琶湖は本当にきれいでした。
そして、このびわ湖浜大津駅は京阪石山坂本線との乗換駅として、ターミナルのような大きな駅舎となっています。ちなみに石山坂本線は「いしやま-さかもと-せん」と読みます。私はしばらくの間「いしやまざか-ほんせん」と読んでいました。
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続いて向かうのは、その京阪石山坂本線の終点、石山寺です。石山坂本線はくねくねと市街地を巡り、細かく乗客を拾っていきます。JRとの乗換駅である膳所や石山で多くの乗客がおり、終点石山寺まで乗っていたのは30人ほどでしょうか。12時過ぎに石山寺に到着しました。ちょうど大河ドラマ「光る君へ」ゆかりの地ということもあって、駅前は大賑わいでした。
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ここからは路線バスに乗っていきます。石山寺駅を12時15分に出る甲賀市コミュニティバス朝宮線。このバスが今回の遠まわりの中でのゴールデンルート。石山寺駅から山を越えて、信楽高原鐵道の終点、信楽駅までを結ぶ路線バス。本数は少なく、休日は2本。12時15分発を逃すと夕方までバスはありません。
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バスに乗車したのは6人ほど。1人は途中、信楽町に入ったところで降りていきましたので、地元の利用客と思いますが、残り5人はみんな信楽駅まで乗り通しました。バスファンと思しき人もいましたので、このバスは信楽へのバイパスルートとして知られているのでしょうね。
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バスは、最初は瀬田川に沿って進んでいきます。その後、国道422号線を、瀬田川の支流である信楽川に並行して渓谷沿いの道を進んでいきます。山里を進みますが、やがて信楽町に入り、路線名になっている朝宮では、有名な朝宮茶の茶畑が随所でみられます。やがて、信楽の市街地に入って、終点・信楽駅に着いたのは、石山寺駅から約1時間後の13時18分でした。
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信楽駅には、依然、鉄印を記帳しに来たことがありますが、その時はレンタカーでした。公共交通機関で来るには来にくい山深い町ですが、タヌキの置物に代表される信楽焼が町の随所で見られます。信楽駅の駅名票の前にもタヌキさんが鎮座しており、中でも圧巻なのは駅舎横の巨大タヌキの電話ボックスです。個人的にはこの巨大タヌキ、マツコ・デラックスさんにしか見えません。
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信楽駅構内には、記憶にも新しい、信楽高原鐵道列車正面衝突事故の事故車両の部品が展示されており、当時の事故の悲惨さを物語るほか、安全への強い思いを感じることができます。
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京都-米原遠まわりの旅、いよいよ後半戦。ここからは信楽高原鐵道に乗車します。信楽駅のホームは大小無数のタヌキさんが鎮座していて、それはそれは壮観な眺め。
やって来た列車は「忍」と書かれた車両。信楽のある甲賀市は、山向こうの伊賀と並んで、忍者の里として名高く、それにあやかった車両で、中の座席にもかわいい忍者キャラクターが描かれていました。
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こういう遊び心も楽しいものです。車内はボックスシートに1人ずつ、そのほかロングシート部にも多くの人が腰かけるくらいの乗車率。
13時54分、信楽駅を発車。信楽駅から紫香楽宮跡駅までは短い駅間距離でこまめに停車していきますが、そこから終点の貴生川までは山深い道を長い時間をかけて進んでいきます。貴生川到着は14時17分で20分少々の旅。短い乗車距離ですが、田んぼや山の景色を楽しめました。
貴生川駅は、JR草津線と近江鉄道が乗り入れています。草津線に乗ればJR東海道本線の草津駅や、あるいは関西本線との接続駅である柘植駅へと行くことができますが、私が乗り込むのは近江鉄道です。
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近江鉄道は米原からこの貴生川までを結ぶ本線と、八日市から近江八幡を結ぶ八日市線、高宮から多賀大社前を結ぶ多賀線の視線を有する地方私鉄。元西武グループなだけあって、旧西武鉄道からやってきた車両が多数活躍を続けています。
列車は湖東の田園地帯とのんびりと進んでいきます。最初、貴生川から水口くらいまでは比較的多くの高校生などが乗っていたのですが、やがてほとんどの人は降り、列車はのどかな田園地帯を駆けていきます。稲刈り直前の黄金の田んぼは本当にきれいでした。
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列車は、途中の彦根で10分以上の長時間停車をするなど、のんびり1時間半以上をかけて終点の米原に到着しました。近江ブルーに塗られた車両が、これまた近江ブルーの駅名票とよくマッチしていました。
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これで京都から米原まで、遠まわりの旅は終わりました。京都を10時に出て、近江鉄道で米原に着いたのは16時過ぎ。新幹線に乗れば最短18分で着くこの区間を、実に6時間かけてやってきました。京阪の山越え路線、1日2本だけの路線バス、第三セクター鉄道に、地方私鉄と、実にバリエーション豊かな公共交通機関を乗り継いで、のんびりとした旅を楽しむことができました。
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新幹線は偉大です。JR西日本が誇る新快速も速達性という観点では偉大な列車です。しかし、時には、いろいろな交通機関を使いながら、先を急がずに進むプチ旅行もいいものだと改めて思いました。日本にはまだまだ面白そうなローカル線がありますので、今後もいろいろ計画しては、楽しんでいきたいと思っています。
(掲載写真はすべて筆者撮影。Google Pixel 7aで撮影)