さよなら札沼線
それは突然の別れでした。
当初、ゴールデンウイークの5月6日に最終運行を迎えるはずだった札沼線(正確には北海道医療大学-新十津川間の末端区間)。5月2日から6日は全列車指定席で運行すると案内された矢先、感染拡大を防ぐため、一度は最終運行を4月27日に変更。ところが、4月16日に全国に拡大すると発表された緊急事態宣言の影響で、急きょ翌日の4月17日の運行をもって廃止ということになりました。
突然のラストランになったこともあり、全国から鉄道ファンが押し寄せるということはなかったようですが、それでも沿線住民を始めとして多くの方が、急なお別れにも関わらず、ラストランに立ち会ったそうです。ライブカメラで最終列車を見たファンも多くいたそうです。
私は、いわゆる葬式鉄ではありません。運行最終日はどのローカル線も大混乱で、人混み嫌いな私はどうも苦手。それに、ローカル線の情景を撮るときに、地元の高校生などならともかく、鉄道ファンが大挙して集結しているような光景を撮っても、何にも面白くありません。
私の場合、札沼線を訪れたのは2019年の2月でした。すでに前の年の10月に沿線4町は廃止受入れを表明していましたので、多くのカメラマンや鉄道ファンは見かけましたが、それでも平和な中で最後の訪問と覚悟して訪れることができました。
今回は、その時の写真を数枚ご紹介し、自身のお別れの区切りとしたいと思います。
今回廃止される北海道医療大学-新十津川間の中心駅となるのが石狩月形駅です。到着日の夜、小さな駅舎にはひと気が全くなく、静まりかえっていました。
翌朝、秘境駅として名高い豊ヶ岡駅を訪ねました。板張りをしただけの簡素なホーム。実は月形町の中心街からもそれほど離れておらず、少し離れたところには集落もあるのですが、それでも林間に囲まれた駅は、まさに秘境駅と呼ぶにふさわしい雰囲気でした。
終着の新十津川駅に到着。すがすがしい青空が広がっていました。この駅も、駅舎こそ、こじんまりとしていますが、周囲には大きな空知中央病院があり、新十津川町の中心街ですので、それなりの賑わいがあります。
新十津川からの折り返し列車が、通称「日本一早い最終列車」です。下徳富駅のそばで撮影しました。この日は見事に晴れており、樺戸山地最高峰のピンネシリが美しい姿を見せてくれていました。
上の写真は本中小屋駅。背景には先ほど見た樺戸山地の雪山も見えています。国道から少し入ったこの場所。家々の数としては、豊ヶ岡以上の秘境駅といった印象を受けました。
石狩月形のひとつ手前、知来乙(ちらいおつ)でとらえた写真。背後に見えているのは阿蘇岩山の航空自衛隊当別レーダーサイトです。ここから、このように見えるとは思いませんでした。
札沼線の北海道医療大学-新十津川間は、4月17日をもって廃止となりました。経営が苦境に陥っているJR北海道では、留萌本線の留萌ー増毛間、石勝線の夕張支線に続く廃止となります。経営の立て直しのために、JR北海道は「単独では維持困難な路線」を発表しており、さらに輸送密度200人未満の路線は廃止を打診されています。留萌本線の全線や根室本線の富良野-新得間、高波被害で不通が続く日高本線の鵡川以遠は、これからも廃止の方向で議論が進んでいくことでしょう。さらに今回の一連の騒動が、インバウンドに支えられていたJR北海道の体力を確実に奪っています。
寂しい限りですが、事態が収束した暁には、ぜひ「第2の故郷」北海道に足を運びたいと思っています。
(写真はすべて筆者撮影。2019年2月)