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コスモスの咲く鉄道風景

秋という季節は実に鮮やかです。黄金に輝く稲穂、赤やオレンジに輝く紅葉。その他にも、彼岸花やススキ、柿など、秋を象徴するアイテムはたくさんありますが、中でも「秋桜」とも称されるコスモスは、ピンクや白、紫の大ぶりの花が秋風に揺れ、優雅な美しさを魅せてくれます。

普段、鉄道写真と風景写真を融合した「鉄道風景写真」を撮っている私としても、「コスモスと鉄道」は秋の重要な撮影テーマなのですが、そうは言っても、そう簡単にコスモスが線路端に咲いているとは限りません。だからこそ、鉄道を撮っている時に、線路端にコスモスが咲いていると、意識して撮影してきました。
今回は、これまで撮りためてきた写真の中から、コスモスの咲く鉄道風景をいくつかお届けしたいと思います。

①釜石線・土沢-晴山

釜石線・土沢-晴山(2022年撮影)

まずご紹介するのは岩手県を走るローカル線、釜石線です。この釜石線は2023年の夏まで「SL銀河」というSLが走っており、この日もたくさんのファンが訪れていました。SLが通過するとファンはあっという間に走り去り、落ち着いたところで撮ったのがこの一枚。白雲がたなびく秋空とコスモス、最高の一枚となりました。

②阿武隈急行・二井田-新田

阿武隈急行・二井田-新田(2024年撮影)

福島から伊達市や丸森町、角田市を通って東北本線の槻木までを結ぶ阿武隈急行。沿線には田園が広がっています。訪れた時は、まさに稲刈り寸前で、黄金の稲穂が広がっており、そのあぜ道の横に見事なコスモスが咲いていました。秋空も美しい写真になりました。やって来たのは新型車両。太陽にギラリと車体が輝きました。

③関東鉄道常総線・三妻-南石下

関東鉄道常総線・三妻-南石下(2012年撮影)

関東鉄道という大仰な名前の鉄道会社ですが、たしかに関東平野の広さを感じるにはもってこいのローカル線です。その線路の横には見事なコスモスが咲いていました。一両きりのディーゼルカーがその横を軽快に駆けていきます。ちなみに、この場所、その後、圏央道のインターができたため、今ではこの画角では撮影できません。

④信越本線・群馬八幡-安中

信越本線・群馬八幡-安中(2017年撮影)

かつては高崎から長野、直江津を通って新潟までを結んでいた信越本線も、北陸新幹線の開業で、今はぶつ切りに分断され、群馬県側はその名前のまま、高崎と横川という短い距離を結んでいます。走っている車両は211系。一応、国鉄時代に製造された車両なのですが、115系などの味のある国鉄型車両を駆逐した車両ということもあり驚くほど不人気です。

⑤アルピコ交通上高地線・信濃荒井-大庭

アルピコ交通上高地線・信濃荒井-大庭(2011年撮影)

この日、松本盆地は深い霧に包まれていました。視程が10mもないような濃さだったのですが、列車通過時には奇跡的に霧が晴れ始め、そこに朝日が差し込んで、空気が金色に輝いていました。やって来たのは「鉄道の日」を記念したヘッドマークを付けた元京王井の頭線の車両です。最近、東武鉄道から車両が譲渡され新しくなりましたね。

⑥北陸本線・芦原温泉-細呂木

北陸本線・芦原温泉-細呂木(2014年撮影)

北陸新幹線敦賀開業と同時に第三セクター・ハピラインふくいに営業譲渡された旧北陸本線のこの区間は、まさに特急街道でした。このコスモス畑は、地元の農家の方が、鉄道写真を撮る人に、との思いで丹念に育てられたと、後で聞きました。撮り鉄と地元住民の皆さまとの間で良好な関係を築けるよう、私自身も努力したいと思います。

⑦明知鉄道・山岡-野志

明知鉄道・山岡-野志(2013年撮影)

JR中央西線の恵那駅から山間部へと路線を伸ばす明知鉄道では、多くのラッピング車両が走っていますが、地元資本のスーパー、バローのラッピング車両が、野志駅近くのコスモス畑に差しかかりました。赤から白へとグラデーションが美しいこの車両。とてもラッピング車両とは思えないような見事な仕上がり。コスモスも百花繚乱です。

⑧近鉄吉野線・壺阪山

近鉄吉野線・壺阪山

私にとって、奈良県というのは実に縁遠い存在でした。中学の修学旅行でも来たことありませんし、新幹線からわざわざ乗り換えて撮影に赴くかというと、それも微妙なエリア。しかし、この壺阪山駅のコスモスは見事でした。和歌山線を撮りに行った際に壺阪山でもコスモスが咲いていると聞いて足を伸ばして初めての奈良県訪問となったものです。

⑨津山線・牧山-野々口

津山線・牧山-野々口(2023年撮影)

今や、日本全国から、国鉄時代から走っていた車両(通称・国鉄型車両)の引退が急速に進んでいますが、その中でも、JR西日本の岡山地区や、非電化路線の一部では、まだまだ国鉄型車両が活躍中です。牧山クラインガルテンの傍らにコスモスが咲いており、そこを、旧国鉄色をイメージしたキハ40系が颯爽と駆けて行きました。

⑩島原鉄道・諫早東高校前-愛野

島原鉄道・諫早東高校前-愛野(2015年撮影)

長崎本線の諫早から島原市を結んでいる島原鉄道。諫早市と雲仙市の境を流れる有明川の河川敷は、秋になると大輪のコスモスで彩られます。一両きりの黄色いディーゼルカーがトコトコと走る姿は可愛く、そして秋風に揺れるコスモスとの絡みも抜群。経営環境は厳しいですが、いつまでも走り続けてほしいローカル私鉄です。

むすびに

コスモスの咲く鉄道風景、いかがでしたでしょうか。そう都合よく線路端に咲いているわけではありませんが、丹念に探せば鉄道と絡めて撮るスポットはまだまだあるはずです。これからも、彩り豊かな日本の秋をじっくり楽しんでいきたいと思います。

(掲載写真はすべて筆者撮影。なお、環境の変化等により既に撮影できない車両、画角が含まれることがあります)

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