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イルカのたわむれ (下)

虚子少年の生活圏

 イルカのたわむれ (下)  小説     (上)もお読み下さい
 食事が終わると、釣り場を赤島の南端付近に移動しました。ここは最初の処のように、よく釣れました。2時間近く経ったころ、じさんが、「潮目が変わった、浅海の方に流れるようになった、これからは、流し釣りをしながら家に帰るぞ」と言いました。
 流し釣りはアンカーなしで、潮の流れにまかせて釣るので、”かせ”に掛かりやすく、虚士には無理なのです。じさん一人、右手で釣り糸を垂らして、左手で艪を漕ぎながら釣ります。虚士は休憩となります。

 
 虚士が座って海を眺めていると、10m程の処の海面が波立ち、それがだんだん近づいてくる、「何だろう!」と思わず立ち上がって見る、何か大きな動物のようにみえる。
 
 「じさん、あれは何かな!?」「イルカが虚士の処に遊びに来たとじゃろ!」とにこにこしながらじさんが答える。するとイルカは虚士に触れんばかりに近寄り、船の速度に合わせて次から次にうねり出す、10数頭はいるだろうか、そのうち飛び上がるものも現れる、遊んでいるようだ、興奮した虚士が「じさん、イルカは釣らんと?」と聞いたら「みぞか(かわいい)けん釣らん」と答えました。
 イルカの戯れに虚士は興奮しっぱなし、手を出したらかすかに触れてきて、何か話しかけているように感じました。イルカと遊んでいるようで、虚士は夢見心地でした。
 
 30分位虚士について来ましたが、飽きたのかいなくなりました「またねー!」。みぞかったなあ、虚士にとっては今日一番の収穫でした。じさんは、赤島と兜が鼻の中間位で、流し釣りをやめ家路に付きました。
 
 虚士は帰りの船で、海中から魚の入った”てご”を引き上げ、数え始めました、全数100匹を超えていました。このうちの10匹ぐらいは虚士の釣果です。直経40cm位の”てご”いっぱいになりました。

 平瀬にに着岸したら、母が出迎えに来ていて、釣果を見て「わーよかじゅうじゃったねー!」(いっぱいとれたねー)と喜んでくれました。
家族総出で魚の料理をします。屋外の土間でしますから、どら猫も虎視眈々と魚をねらって来ます。虚士は追い払い役です。
 刺身に煮付け、味噌汁10人家族ですが食べきれませんので、残りはご近所にお裾分けします。

 魚料理が食卓に上がり、家族全員で夕食です、久しぶりのがらかぶで会話が弾みます。虚士は目をまん丸にして、イルカに触れた話を家族に自慢しました。じさんが、がらかぶの刺身を肴に焼酎を飲んでいます。虚士がやって来て「じさん、また行こうな!」と言うと、にこにこして「うんうん」と言いました。     
完--(上)もあります。

(以上は実話に基づいていますが、細部の記憶が怪しいので”小説”としました)
 
 
 
 
 

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