ryoma sato

球体としての月の展開図を想像するように。

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球体としての月の展開図を想像するように。

マガジン

  • ぶん殴られました。

    脳震盪がおこったときのカルテ。本、音楽、映画、アート、インテリアが主。

  • 鹿の角

    天に向かって広がるあの角はすべてを受け入れる。

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「感動は感情的ではない。全身全霊で虚無感と新しい世界への高揚感を味わうことだ」

良い本、良い映画、良い音楽ーーー良いものとの出会い。 自分が「良い」と感じるものに出会った夜は寝付けない。高揚しているのは確かなのだか、冷静な自分もそこにはいる。この名状しがたい感覚を言葉にしてみようと思う。 私がこの感覚を味わったことを思い出せるは小学校の頃だ。小学校の時に毎年新刊が出版されていた「ハリーポッター」、何度も読み返した「ダレン・シャン」。本を手に取るなり、寝る間も惜しんで読み続けた。歩きながら、トイレ、もちろんベットの上でもだ。文章をひとつひとつ味わうので

    • 空白

       夏が肌にまとわりついてくる夜。俺は、あぐらをかきながら大江健三郎の死者の奢りを読んでいた。死者たちが生前の個性を濃褐色の溶液に溶かしながら、死者という強烈な個性を吐き出し続けている。一本一本、短くなるまで煙草を吸いながら、そんな絵を想像していた。読み終えたと同時に灰が太ももに落ちた。しばらく、輪郭がはっきりとしない横顔が書かれた単行本の表紙を見つめ続けた。高揚するような面白い小説を読み終えたあとは、 いつもこの様に余韻に浸るのだが、この時は特段長かった気がする。知ったか知ら

      • 私の「鹿」についての考察

        突然ですが、私は鹿が好きです。 きっかけは、、、、、ありません。 幼小の頃の鹿の思い出は、鹿のステーキを食べたくらいです。(北海道出身なので) 何故か好きなのです。 アンティークショップや古着屋では、ハンティング・トロフィーの鹿が飾ってあるところが多く、テンションがあがってついつい触ってしまいます。 自分でも謎だったので私の中での「鹿」を考察しようと思います。 私が改めて感じている鹿の魅力は2つです。 一つは角です。特に天に向かって広がっていくあの角の形が好きな

        • ある男

          男と目が合った。黄ばみ、黒ずんだ歯をのぞかせながら、奇妙な上目づかいで、俺を見透かすように見てくる。じっと見つめながら、犬のように身体を大きく震わせて、あばらを鳴らして、机に腕を打ち付け続けている。爪が異様にのびて、黒ずんでいる。時折、発する笑い声が、耳ではなく、俺の脳に響く。この男の行動には、一定の周期があるようだ。ぶつぶついいながら、全身を空気に叩き付け、肺で笑う。そして、肺を震わせくしゃみをする。 周囲は怪訝の目を向けているが、その男は存在していないようだ。ただ、俺は

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        「感動は感情的ではない。全身全霊で虚無感と新しい世界への高揚感を味わうことだ」

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        • ぶん殴られました。
          5本
        • 鹿の角
          4本

        記事

           雨が上がった6月の夜、男は持病の偏頭痛で頭を揺らされながら、駅の喫煙所のベンチに腰を掛けた。自分が生まれた年に製造されたZIPPOで煙草に火をつけ、向かいのベンチに座っていた若い男女たちを何気なく見つめた。そこの喫煙所は、自販機の明かりしかないため、顔が暗闇から染み出したように見える。女が笑う度に歯だけが一層闇から浮き出し、顔全体に広がっていく。ベンチが濡れていたことへの後悔が偏頭痛と共鳴を起こし、蒸し暑い夜への苛立ちが込み上げてきた。向かいの男女たちの視線が一斉に地面に向

          踊ってばかりの国 秋のワンマンライブ(2018.11.11) @東京キネマ倶楽部

          踊ってばかりの国の秋のワンマンライブに行ってきた。 圧倒的音圧を受けて、カラダは揺れ続け、脳は螺旋を描きながら昇天し、おれは何度も目を瞑った。 その音楽の海に溺れ続けるのには音の情報量が多すぎたため、視覚を遮断せざるを得なかった。 目を開けては閉じ、開けては閉じ、そのたびにステージが脳裏にこびりつく。 その映像が重なっていき、輪郭を持たない5人が音楽に溶けていった。 最高の夜、「行けるとこまで行った」夜

          踊ってばかりの国 秋のワンマンライブ(2018.11.11) @東京キネマ倶楽部

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          Sarah Moon12345(何必館 京都現代美術館)

          Sarah Moon12345(何必館 京都現代美術館)

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          小林秀雄「ゴッホの病気」

          個性的でありたいと願う人間に「どこが一番個性的であるか」という問いを投げかけるとなんと答えるだろうか。性質、性格、外見。それが個性的である所以は?私自身にも問いかけてみた。男、北海道出身、175㎝、眼が茶色、、、いくら挙げても記号の集合密度が薄まるだけであることに気が付く。これについて小林秀雄はゴッホが弟に宛てた書簡から語る。ゴッホは自分の精神病と戦い続けた男である。己の狂気性を恐れ、またそれに真正面から立ち向かった。正気の自我と狂気の自我は果たしてどちらが正しいのか。心理学

          小林秀雄「ゴッホの病気」

          内面着陸

          手の届くものになってしまった 君の横顔を重ねることも 手をかざして消してしまうことも 出来なくなってしまった ピントを合してシャッターを切るのは 君を時を宙に浮かせたいだけなのに あの星には君がいるけど おいしそうには見えないかな 目指すのはあのぼんやりとした月 雲をまとったあの柔らかな光のことで 見つめる先の黒い瞳にあの月が 1回転した自分がいる 鏡の前のあの人は今も 時計ばかりを見つめている 大丈夫だ、きっと全部写るさ、いずれ 今朝割った卵の黄身を目指そうよ 自由に料

          内面着陸