【中学受験】夏期講習の授業時間について@2024年の考え
今年の夏期講習も無事に終わり、ほっと一息ついたところで、夏期講習の総括をしたいと思います。あくまで雑感レベルに過ぎないので、そこに普遍性があるとまでは申しません。気軽にお付き合いいただければ幸いです。
今年の夏期講習は、昨年までより授業時間を1時間伸ばしました。今回の記事では、それについて考察したことをまとめます。これまでの記事でも「授業時間をどうするんだ」問題に触れていますので、よろしければ併せてお読みください。
今年の6年生は春期講習でも5時間に慣らしており、GW特訓でも6時間に耐えているので、夏期講習では6時間に踏み込む決断をしました。その結果は、ポジティブな面とネガティブな面の両方が見えました。そこから、指導にはトレードオフが存在し、それを的確に理解しなければならないと感じた次第です。
夏期講習明けの9月の合判模試の結果で申し上げますと、授業時間を1時間伸ばした結果、授業時間を伸ばす前の学年と比較すると、国理の成績の伸びは良かったです。かわりに算社の成績は伸び悩みました。その結果に、「なるほど」と思うところがありました。
授業時間を伸ばしたことによるのポジティブな面は、「解説が必要な教科で伸びた」という面です。1時間伸ばしたことで、国語と理科の演習解説量は増えました。
国語は、文章に対する認識や解釈を大人にしていく必要があるので、子供が一人で勉強して成績を伸ばすのが難しい教科だと考えています。そのため、授業時間を伸ばすことの恩恵を受けやすかったのかなと。7月の結果から1人以外の子が成績を上向かせているので、授業時間の増加が良い影響を与えているというのは間違った評価ではないと思っています。
理科に関しても、社会と比較すると理論を解説する必要性が多い教科です。家庭での反復学習だけでは伸ばしづらい指導が必要な単元があるので、授業時間を伸ばした好影響が出たと考えています。前回比で教室平均偏差値の伸び率が一番良かったです。
逆にネガティブな面は、算数社会の成績に出てしまったと感じています。
「授業時間を1時間伸ばす」というのは、単純に「勉強時間が伸びる」というわけではないようです。授業時間が1時間伸びるということは、それだけ時間と体力を削るということです。その結果、家庭学習の時間は去年までの子達と比較すると減った印象です。それは、家庭学習の量に一番比例しやすい社会の成績に直撃してしまったと感じています。
そして、その家庭学習にも影響を与えたと思います。授業時間が伸びたことで「確認テスト」を行う回数も増やすことができましたが、その結果「対策」という学習を増えすぎたと感じています。範囲が指定されているテストとされていないテストでは出来る子が分かれるのですが、授業や確認テストで感じている手応えほど、過去問で点数が取れない子が増えました。それは授業時間の延長が影響している気がしています。
さらに授業時間の延長の影響が顕著に出ているのが「過去問」の消化量です。去年までの子と比較すると、今年の6年生は家庭で取り組んだ「過去問」の年数が圧倒的に少ないです。それが「子供たちが不真面目だから」かというと、必ずしもそうとは感じません。確実に、伸ばした1時間の影響は出ていると思います。過去問の時間を確保するのが難しくなったのもそうですが、授業時間が過去問を行う体力を削ってしまったとも考えています。
そのため、去年の子達よりも算数の問題で取りこぼしが多いと感じています。算数の過去問の取り組んだ量は、自然と「取りこぼしを減らす」という技術を磨いてくれます。また、様々な典型題にランダムに取り組むので、典型題への感度も高めてくれます。それは「指導」だけでは磨ききれない技術なので、過去問の消化量が減ったことは、成績を上げられなかった要因の一つなのでしょう。
同様に社会の成績を上げきれなかったのも、過去問をこなす中で身に付く「知識の汎用性」が高まらなかったと考えています。やはり、「確認テストのためにテキスト学習で対策する」というだけでは、総合的な問題を乗り越えきれないものです。これまでの子達と比較して、社会で苦戦する傾向にあるのは、「1時間の壁」と感じています。
と、授業時間は「増やすことで伸びる」ことと「増やすことで滞る」ことの両面が存在しているようです。そのトレードオフをしっかりと考えないと、より良い中学受験にはならないよう思います。単純に「授業時間を増やす」「指導される時間を増やす」というだけで、補習講座や個別指導を加えても、それがかえってマイナスになることもあるのでしょう。
今年の6年生だけでいえば、拘束時間が長く、宿題の量が多い管理型の大手学習塾から転塾してくださった2人の子は、この9月に自己ベストを更新してくれています。その子達の姿を見ると、精神的にも成績的にも無駄な負荷を除くというのは、必要な指導の方向性のように感じています。
以上が、今年の夏期講習の総括になります。まずは、その傾向を把握した上で、ここから6年生の課題を入試までに克服するために取り組んでまいります。
そして、同時に今後の方針についても、以下にまとめます。
1.夏期講習の授業時間は、来年以降も6時間にする。
ただし、これまでと同様のシステムでは、トレードオフが発生するところもあるので、それについてはさらに指導の質を高めていけるように善処し続けます。
2.20時以降に授業を延ばさない。
以前の記事で、20時以降にも指導する可能性を検討していましたが、それはマイナス面が大きいと判断して、今後も伸ばさないことにします。
これが「万能な話か」と聞かれると、「そうである」とは言い難いところです。最難関校を目指そうと思えば、それは「甘い」話です。ゆえに、あくまで私たちの教室の合格実績の範囲内でお考え下さい。
具体的には、四谷大塚・日能研の偏差値50~55の学校くらいまでと感じてはいます。それ以上は、もう少し無理をさせてでも追い込まなければならないと感じています。
逆に言及するとすれば、四谷大塚・日能研の偏差値40を超えられない子は、現状がオーバーワークになっている可能性もあると感じるようになりました。これまでお預かりした子達のオーバーワークになっている子は負荷を落とすことで、かえって成績や学力、生活が整う可能性もあると考えております。
そんな風に考えている学習塾ですが、もし興味がございましたら、ぜひ一度学習相談にお越しください。