不妊治療のハナシ②
私は家に帰るなり、夫を捕まえて病院から渡された資料を渡し、フーナーテストのことを説明した。
フーナーテストは、タイミングを病院の受信前に合わせて、精子が膣内できちんと動いているかを確認するテストである。
私は覚悟していた。
きっと、夫は文句を言うかもしれないと。
そんなタイミングを合わせるなんてできないよ。とか、俺は種馬じゃ無い!とか言うかもしれない、と。
そしたら、言ってやるのだ。
妻にだけ恥ずかしい思いをさせるのか、と。
さあ、こい。論破してやる。
けれど。
夫は、ふんふんと資料に目を通し、分かったよと一言だけ言った。
それだけだった。
肩透かしを食らったような気分。
考えてみれば、夫は人のやることに文句を言う人では無かった。
私は自分の人間性を恥じた。
フーナーテスト当日、夫はアラームまでかけていた。
なんて事務的。
検査結果は、良好だった。
先生は、顕微鏡の写真を見てニンマリしていた。愛おしそうに眺めている。こんな表情もできるんだなと思ってしまった。
オタマジャクシが可愛くて仕方ないような感じだった。
長年、不妊治療に携わるとそんな心境になるのだろうか。お疲れ様。ありがとうございます。
とても元気ですね、問題ないですと私に向き合った途端に無表情になった。
次は、子宮卵管造営検査をやりましょうと言われた。
通水検査は経験していたが、子宮卵管造営検査は初めてだった。
あ、その前にまたタイミングとってね、と言われてこの日は終わり。
子宮卵管増絵検査が厄介で、検査日や検査時間も指定された日しかやってくれないし、2日くらい予定を空けていないとできないような日程。
仕事をしていたらなかなか難しい。
上司に説明して、あ、同僚たちにも訳を話さないと休みづらいなあ。
娘のことでも、休みをたくさんもらっているのに申し訳無いなあ。
費用も、1万円ちょっとかかりそうだ。
けれど、私はこの子宮卵管造営検査は結局、受けずに終わってしまった。
先生の言ったタイミングで、うまく妊娠できたからだった。
けれど、この妊娠が私の度肝を抜いてくれた。