小学校の思い出
ケンジのお父さんと、お母さんは離婚して、お父さんと新しいお母さんのもとで暮らしていた。そのせいか多少ひねくれたところがあって、友達といえば、僕くらいなものだった。
僕は両親が別れたことなどないので、その気持ちはよくわからなかったので、他の友達と同じように付き合っていた。
ある日、ケンジが行方不明になった。夜になっても家に帰ってこなかった。学校の先生から、ケンジと仲のいい僕の所へ連絡が入って尋ねられたが、わかるはずもない。
翌朝、ケンジは元気に、しかし少し目を腫らして登校してきた。僕は何事もなかったかのように「おはよう」といった。
「昨日、お母さんと一緒に屋台でラーメンを食べた」とさも嬉しそうにケンジは僕にそう言った。家を抜け出して、お母さんの所へ会いに行ったのだろう。十分お母さんに甘えて、別れ際に泣いたに違いない。だから目を腫らしていたのだ。僕は咄嗟にそう感じたが「それはよかったね」といっていつもと同じように相手をした。あの時のケンジの顔が忘れられない。
今頃、あいつどうしているのだろうか。捻くれず、ちゃんとまっとうな道に進んで、社会人してるだろうか。僕は小学校を卒業後、祖父の家へ家族で引っ越したので、あれから会っていない。果たして生きているのかさえわからない。ケンジ君。今どうしていますか。元気でいますか。
広島の牛田小学校での思い出である。