![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/78317249/rectangle_large_type_2_7dd6261048a0b165047235b25d23a09f.png?width=1200)
アンドロイド(ショートショート)
三沢博士はアンドロイドを開発した。人造人間である。どう考えても完璧な出来栄えだったのだが、どこをどう間違えたのかわからないが、一向に動いてくれない。電気ショックを施してみたが、駄目だった。駄目元でくすぐってみたが、ニコリともしない。
「何もかも完璧なはずなんだが、何が足りないんだろう」
博士はいろんな文献を読んで調べた。少年ジャンプやムーまで読んだ。
そこで1つの結論を得た。
「魂が入ってないのだ。魂を入れねばならぬ」
そこで博士は恐山から一番能力が高いと評判の乙女婆さんにお願いをしてみることにした。
「わたしゃ、死んだ人の霊魂を呼び寄せて口寄せすることはできるけど、ロボットに魂を入れるなんてできやしないよ」
あっさり断られたが、
「魂をアンドロイドに入れるのは私が交渉しますので、霊魂を呼び寄せて下さい」
と頼んだ。
それではと、婆さんは支度にかかったが、
「で、誰を呼び寄せるんだい」
と聞いた。確かに誰でもいいという訳にはいかない。アンドロイドは女性である。女性であることが望ましい。そのうえ20代の女性をイメージして作ったので、20代か30代で亡くなった人がいい。
博士はググってみた。するとアンドロイドにピッタリな女性がいた。夏目雅子である。・・・これって、何か法律に引っかかりますかね?
夏目雅子を呼んでもらえるように頼んだ。果たして夏目雅子は現れた。
「わたしをよんだのはだれ」
「私です。工学博士の三沢創と申します。あなたに是非生まれ変わってきてほしくて呼び出しました。ここに持ってきたアンドロイドに是非、乗り移って下さい。そしたらあなたはもう一度人生を歩むことができるはずです」
「もう結構です。未練はありません」
あっさり断られてしまった。他人はなかなか信用してもらえず、協力してはくれないのだろう。そこで博士は考えた。脳みそも心臓もありとあらゆる臓器が人間に匹敵するのだから、このさい犬でもかまわないだろうと。犬でもアンドロイドの体なら言葉を発することができるはず。
犬なら去年失くした飼い犬のメスのリリイがいた。リリイを呼んでくれるように乙女婆さんに頼んだ。
すると30秒ほど苦しんだ後、リリイが出てきた。
「ワンーワン」
会話が通じなかった。だが身振り手振りで博士はリリイを口説いて、何とかリリイの魂はアンドロイドに乗り移ることに成功した。
リリイは動き出した。四つん這いであった。ここから博士とリリイの血のにじむ特訓が始まるのであった。
研究所に戻ると、まずは何とかして二足歩行できるように教育し、言葉も覚えさせた。まるでマイフェアレデイのようじゃないか、博士は充実した毎日をおくった。
リリイは人工知能のおかげで、物覚えもよく、1週間でほぼ人間らしくなった。ただ習慣というものはなかなかかえられず、食事は犬食いにすぐなるし、電信柱を見つけたら匂いを嗅いで、小便をするし、なかなか外に出すには勇気が言った。
「リリイ、お前はもう人間と同じなのだから、それを忘れないでおくれ」
「ごめんなさい。どうしてもいぬのころのしゅうせいがぬけなくて」
博士はある程度、犬の習性が抜けたころに使いにいかせることにした。同じ工学関係の星博士のもとへ。博士を驚かせるために事情は隠し、娘ということにしていかせた。勿論気づかれないように博士もついていった。
星博士の家へ着くとリリイは、お手伝いさんに取次ぎを頼んだ。
「やや三沢君が僕に何か土産物を持ってきてくれたのか。それはありがたい。娘さんだって。娘なんていたかな。まあいい。奥へお通ししなさい」
星博士がお手伝いさんに、いった。お手伝さんの名前をもとさんといった。
ここまで書いてオチがばれてしまっているけど続けます。
「これはこれは美しいお嬢さんだね。彼に娘さんがいるなんてしらなかったよ。女性に年齢を聞くのも失礼かもしれんが、あえて聞くよ。御幾つですか」
「10さいになります」
「えっ、10歳?それはないだろう。冗談のお好きな方だ。聞いた私が失礼だったね」
「お名前は。名前を聞くくらいは失礼ではなかろう」
「リリイです」
「本名かい?またハイカラな名前を付けたね。いやいい名前だよ、リリイ!」
「ワン」
「な,何だい、今のは」
「す、すいません、しゅうせいで、いや、のどがいがらっぽくて」
「そうかい。それならいいんだけど。ところで三沢君の家にも何度か遊びに行ったことはあるんだがね、あなたの存在を失礼ながら初めて知った限りだよ。いつもはどこにいたんだい」
「いぬごやです」
「犬小屋?ああペットと遊んでいたのかね」
「いえ、なかでねていました」
「えっ、どういうことだい。犬と一緒に寝ていたのかい」
そういわれてリリイはしまったと思い、気が動転してしまった。モニターで見ていた博士も気が気ではなくなって、星博士の家の呼び鈴を鳴らした。
「もとや、お客様だよ」
星博士が言った。
「もとや、もとや」
返事がないので、大声で言った。
「もとはいぬか!」
はい、期待通りのオチですいません。
「もとはいぬです。いっかげつほどまえににんげんにうまれかわりました」