FRAGILE(ショートショート)
惑星Aから惑星Bに向けて俺は依頼された荷物を運んでいた。中身はわからない。昔ながらの木箱で厳重に封印されていて、開けるのも一苦労だろう。
大きさは、2m四方ほどもある。中で時々動く気配があるから怪獣でも入ってるんじゃないかと、少し緊張する。
AからBは通常の航路がしっかりキープされているので、最も安全な道筋である。余程のことがない限り、安全に荷物はBに届けることができるであろう。
問題は荷台でガタガタ動いているのが、本当に怪獣で突然木箱を壊して暴れ出したら、どうなるか、ということである。荷主からは、FRAGILE(こわれもの)とだけ聞かされている。
突然木箱の中から唸り声のような音が聞こえた。
「あうーん、あうーん」
どう考えても怪獣だ。俺は緊張した。まさか木箱を壊して出てきたりはしないだろうとは思うけれど、まさか、が起きれば対処しようがない。
宇宙船はもうじき惑星Bに着くところまできた。気はまだ抜けないものの、少し安心した。
やがて船は無事Bについた。俺はほっとした。宇宙船をとめて、やがてフォークリフトが荷物を受け取りに来た。これで、俺の任務は終わった。
船から降りて、依頼主から、代金を貰った。
「どうだ、中身に興味はないかね」
依頼主がいった。
「そりゃあ、興味はありますね。移動中、動くは、鳴くはで、恐ろしかったですからね」
俺はそう答えた。
「ほう鳴くのかね」
依頼主は意外そうな顔をした。
「実は私も実物を見るのは初めてなんだよ。だから楽しみで楽しみで仕方がなかったんだ」
「それはそうでしょう」
俺は愛想笑いを浮かべた。
「ではここで開けよう。大丈夫、危険ではない。狂暴ではないと聞いている」
早速部下がバールを持ってきて、木箱を開けにかかった。段取りよく木箱はばらされていった。すると中にはガラスケースが入っていて、天井に空気穴がある。虫かごのでかいやつみたいだ。
俺はそのガラスケースの中にいるモノを見て驚いた。この世にこんな生物がいるのだろうか。初めて見る奇妙な姿の生き物であった。
目が2つしかなく、鼻と口と思われるものが顔に対して平べったくついていて、腕が2本、足も2本、どうみても面妖な姿である。体毛もほとんどなく全体的にツルリンとしている。
「これが絶滅した地球といわれる星に住んで支配していた、地球人というものらしい」
依頼主がいった。
「こんな奇妙な生き物を見るのは初めてです」
俺は興奮していった。
「いい見世物になるだろう。これで一儲けしようと思っている」
依頼主は笑いながら、俺にサヨナラをいい、地球人をそのまま連れて行った。世の中には不思議な生物がいるものだと感心した。