企画(ショートショート)
「次の企画は宇宙人にしましょう」
助手がいった。
「宇宙人はカネがかかるな」
プロデューサーが答えた。
「じゃああゾンビなんてどうです。メイキャップ代くらいしかかかりませんよ」
「何かありきたりなんだよなあ」
「地底怪獣現るってのは最近どこもしてませんけど」
「やぼったくないか」
「バンパイヤものとかはどうです」
「ゾンビとあんまりかわらんだろう」
そういいながらプロデューサーは
「だんだん湯が熱くなってきたな」
といった。
「やっぱりこれは歓迎の儀式なんかじゃないですよ」
助手が言った。2人は大きな風呂というか鍋のようなものに
入っていた。
「まあ次の企画は我々がここを生きて帰れたらの話かな」
プロデューサーが力なく笑った。
「お前が食人族の企画が面白そうだっていうから、はるばる予算をつけて、ジャングルまで来たのに、出くわしたのはいいが、まさかいきなり調理されるとはな」
もはや観念したかの如くプロデューサーが念仏を唱えだすと「カット」という声が聞こえた。
食人族の1人がカメラを回していた手を止める。そこへ食人族の親分みたいなのがやってきて、こういった。
「こんな感じでいいかい。もっと派手にやってもいいよ。幾ら出すか次第だね。何なら本当に食っちまっても構やしないんだけどな、こっちは」
何だい、やらせかい。土人みたいな恰好をした連中と違って、親分はTシャツに半ズボンだった。食人族もだんだん世間に慣れてきて、商売をするようになったようであった。
安心したプロデューサーと助手は鍋から命からがら引っ張られて出して貰った。
「幾らが相場だね」
プロデューサーが聞くと、近くに会計担当の男がいない。
「あれ、他の連中はどうしたんだ」
助手も「さあ」と答えるばかりであった。
「安心しろ。まだ食ってない。皮を剥いだところまでだ」
その言葉を聞いてプロデューサーは失神しかけた。
「冗談だ。悪く思うな。だがギャラ次第だな。それも」
どうやら脅迫しているようである。
「心臓に悪い奴らだ。幾ら出せばいいんだ」
「日本人だから特別サービス、1億円でどうだ」
親分が言った。
「何て奴らだ。足元見やがって」
プロデューサーが地団太踏むと、助手がいった。
「何しろ人を食った連中ですから」