叙景(前半)
風がふいている
すべてを揺らすことで
すべての均衡を保つために
過飽和の水蒸気が
空と海の境界を曖昧にして
この世界を平面にする
飴色の崖から
無垢で脆い石灰の肌が
日々と共に崩れ落ちる
旅立ち前のツバメは
翼の確信を得るために
低空飛行で折り返す
伏せられた水槽の中で
CO2 を分け合う植物たちが
証のように水滴を広げる
零れ落ちる花びらに似て
マダラチョウは
三次元に翅を揺らす
少女を見守る
老人の曇った瞳に
一瞬、青が戻る
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