見出し画像

クリエイティブとテクノロジー、サステナビリティの未来は?(3)

(前回からのつづき)
こんにちは。Boundless Creative Studiosの大岡です。
前回は、Web3の概念や、その可能性について触れてきました。今回は、サステナビリティにおけるテクノロジー、クリエイティブについて触れていきたいと思います。

私たちは、Creative Techを用いて、デジタルやフィジカルでの体験へとユーザーをコネクトしていくことで、さまざまな課題に取り組んでいくチームへと進化しなければならないと考えています。
一般的に、Creative-Techとは、クリエイティブに関わる時間を、テクノロジーの力で短縮したり、変革するために用いられると思います。たとえば、動画をパワーポイント感覚で大量かつ短時間で制作できるサービスや、1つのイラストをAIで増幅し、一瞬で膨大なイラストができるサービスなどを指します。

私たちが目指す、Creative-Techとは、従来のそれとは意味が異なっていて、どのようなTechnologyやCreativeを用いて、社会課題の解決やSDGs達成のために何ができるか、という点に焦点を定めていきたいと考えています。

サステナブルな未来は、どうデザインされるのか?

日本におけるSDGs目標の達成状況

ここ数年で急速に世界中の人々の関心事となったサステナビリティ。SDGsは、2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択された、国際社会全体が取り組む目標ですが、SDGsの目標達成期限である2030年までは残すところわずか。
果たして、日本における目標達成がなされるのか、気になるところですね。

ベルテルスマン財団とSDSN、「SDG Index & Dashboards 2021」発表

2021年6月に公開された「Sustainable Development Report 2021」では、Top3はフィンランド、スウェーデン、デンマークの北欧勢が占め、日本の達成度は165カ国中18位でした。2015年〜2021年では、10位代を上下していますが、2015年においては、経済協力開発機構(OECD)の34カ国のみ対象でした(日本は13位)。

全ターゲット達成(グリーン)は
・目標4:教育
・目標9:産業・イノベーション・インフラ
・目標16:平和と正義

の3項目のみでした。

一方で​​主要な課題がクリアにならなかったの(レッド)は
・目標5:ジェンダー平等
・目標13:気候変動
・目標14:海洋生態系
・目標15:陸上生態系
・目標17:パートナーシップ

の5項目となりました(目標15においては、マイナスに転じている)。

日本においては、2018年から2020年にかけて、検索数の増加が顕著に増えているようで、「ハフポストSDGsガイドブック」によると、メディアやSNSなどでSDGsに関する情報が増加するにつれ、消費者の意識が高まり、非常に関心のあるテーマになっているようです。

国内におけるSDGsに関連するワード検索数は直近2年間で著しく増加し、特にSDGsとサステナブルへの関心は2020年に一気に高まっています。(2018年時点の5~10倍)

[e-book] ハフポストSDGsガイドブック
ハフポスト 日本版

<無料ダウンロードはこちらから>
[e-book] ハフポストSDGsガイドブック
https://pages.beboundless.jp/sdgs-ebook-huffpostjp.html


DXとSDGsはどちらが重要?

DXもSDGsと同様に2018年頃からビックワードとして注目されていましたので、Google Trendで比較してみました。2018年時点ではDXの方が検索されているワードでしたが、「DX」はおそらく一般的ではなく「でぃーえっくす」って何というレベルだったと思います。SDGsは、もっとわからない単語だったと思われます。

Google Trendによる比較ワード数の比較

今や誰もがサステナブルやSDGsという言葉に敏感で、昨年はテレビでも大きく取り上げられていたので、より身近な言葉になったのではないかと思います。
それでは、DXとSDGsはどっちが大事なの?というとどちらも大事なのですね。DXとSDGsとを結びつけるキーワードとして、経団連は「Society 5.0」という概念について、以下のように定義付けています。

“Society 5.0 とは、デジタル革新でフィジカルとサイバーの世界が高度に融合し、安心で快適な暮らしと、新たな成長機会を皆で創り出していく、持続可能で、誰もとり残されない人間中心の社会である。”

ESG 投資の進化、Society 5.0 の実現、そして SDGS の達成へ
―課題解決イノベーションへの投資促進―
一般社団法人 日本経済団体連合会

まさに世界が実現しようとしているSDGsの達成のためにはDX=デジタル革新は必要不可欠であり、私たちが思い描く未来には「持続可能性」を支えるテクノロジーが必要とされるのです。

個人的にはまずは、公共サービスのDXの進化に期待していきたいところですね。デジタル庁も発足していますから、たとえば、将来的にマイナンバーカードがなくても各種公共サービスが利用できる社会になるとか、証明書類が完全にペーパーレス化され、CO2削減に貢献できるとか、今後に期待したいですね。

サステナブルとテクノロジーが創る未来

テクノロジーの力で未来は、アップデートできるのか?

Society5.0やSDGsといったメガトレンドを踏まえ考えると、テクノロジーは当然、不可欠ではありますが、デジタル革新により未来が作られることが目的ではなく、「より良い社会の実現」することが最終ゴールと言えます。

そんな理想の未来を絵描きはじめているトレンドに、いくつか触れていきたいと思います。

・メタバース
第1回、2回とメタバースについて書いてきましたが、ここでもいくつか触れておきたいと思います。(過去の記事をマガジンにてみました)

Meta(旧Facebook)やマイクロソフトは、すでに「メタバース空間」を利用したオフィスシステムをリリースしていますが、NVIDIA、Unityといったメタバース周辺で必要なインフラを整備する企業もそこに含まれるようです。NVIDIAは、3Dグラフィックスを描画する際に必要な計算処理を行う半導体チップを製造開発していますし、Unityはメタバース構築プラットフォーム(ゲーム・VR開発)としても知られていますよね。

ゲーミングプラットフォーム利用者であれは、すでにメタバース空間に慣れ親しんでいるでしょうし、ブロックチェーン技術を基盤としたディセントラランド(Decentraland)やサンドボックス(SandBox)などのメタバースに特化したプラットフォームもすんなり受け入れられるはずです。

2026年までに、25%の人々は、仕事、ショッピング、教育、SNSやエンターテインメントなどで、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになるという、Gartnerの予測にもある通り、これからは仕事の中心もメタバースになっていくでしょうし、ゲームで遊びながら、アイテム売買や交換で暗号資産を稼いだり、土地も家もすべて仮想空間で所有することも可能です。

ただし大量のサーバー・コンピューターが稼働し、放熱により地球温暖化やCO2削減についても、もっと考えていくことは忘れてはならないでしょう。

・ハプティッス(触覚)デバイス
人間の触覚や力覚、圧覚といった感覚を与える「触覚フィードバック」を与えることができるウェアラブルデバイスです。仮想空間内にあるオブジェクトに実際に触れている感触を擬似的に得ることが可能になります。VRゴーグルやARグラスと等しく、今後、競争が激化していくことと思われます。

Meta(旧Facebook)のReality Labsチームは、メタバースの仮想空間上の物質に触った感触をもたらす触覚グローブの開発を発表していますし、『Meta Quest(旧Oculus Quest)』と組み合わせれば、現時点でもっともMetaがこの分野をリードしていきそうな気配さえ感じました。

余談ですが、2011年から放送されている英国のテレビドラマシリーズ『ブラック・ミラー』では、すべて1話完結で、新しいテクノロジーがもたらす社会変化やSFアンソロジーを描いています。

ここではいくつかの回で「スマートストリーム」と呼ばれるデバイスを身につけ、そのワールドに没入していきます。コンタクトレンズを装着したり、イヤホンしたり、額のあたりに極小のデバイスをつけたり。そんなテクノロジーがいつ再現されるか今から非常に楽しみです。

サステナビリティ時代のブランド・エクイティ

「ブランドエクイティ(Brand Equity)」とは、企業の資産や価値と捉えて評価する考え方で、「ブランドそのものがもつ資産価値」と言えるものです。この考え方は、1991年に発行された「ブランド・エクイティ戦略」デービッド・A. アーカー (著)で発表されたものです。

目に見えず、形もないブランドを、「ストーリーテリング」に代表されるように、体験そのものや、そのブランドのストーリーに共感してもらうため、好感をもって受け入れられ、能動的に体験をシェアしたくなる消費行動をとってもらうためには、サステナビリティなアプローチが肝要です。

たとえば、Z世代に受け入れられるブランドコミュニケーションでは、どういう目的を持っているかという「パーパス」や、それをスマートに伝える「クリエイティブ」が、どうあるかによって、ブランドに対する印象が大きく影響を受ける部分でもあります。

今日の企業活動において、サステナブルへの取り組みは、必要不可欠でありますが、パーパス(=企業の存在意義)に基づき、サステナブル方針があり、その元にブランド戦略(に沿ってSDGs目標の達成を目指す)が紐づけていなければならないと考えます。ですから、たとえば、”とりあえず環境に良さそうなことをしないと”といった、場当たり的にSDGs活動を決めてはならないということです。

別に表現をするならば、「ゴールデンサークル理論」でしょうか。サイモン・シネックのTEDでの名講義"Start With Why"(WHYから始めよ)で発表された理論。

ゴールデンサークル理論

Appleは「ゴールデンサークル理論」の原理を実践する企業として知られていますよね。

"With everything we do, we aim to challenge the status quo. We aim to think differently. Our products are user-friendly, beautifully designed, and easy to use. We just happen to make great computers. Want to buy one?"
“我々のすることはすべて世界を変えるという信念で行っています。
違う考え方に価値があると信じています。
私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ簡単に使え、親しみやすい製品です。
こうして素晴らしいコンピュータができあがりました。”

Why→How→Whatで考えられたマーケティングメッセージ

この「Why」に共感してもらえない限り、顧客は商品・サービスの価値を魅力として感じることができません。

経済と環境、持続可能性を両立するサステナビリティ

将来にわたって維持される「持続可能な」取り組みとは?

SDGsはただ目標を達成すれば良いと思う人もいるでしょうし、ESG投機対象になることが大事と考える人もいることでしょう。目標達成は2030年となってはいますが、永続的に自分たちの地球や社会を守っていきたいですよね。

ここでは、個人的に、地球や社会の環境が将来にわたって維持される「持続可能な」取り組みについて取り上げてみたいと思います。

・ビルゲイツが約2億ドルを投じてトイレの再発明
先日、NETFLIXで視聴したドキュメンタリー番組『天才の頭の中 ビル・ゲイツを解読する リミテッドシリーズ パート1』が印象深かったです。

トイレの環境が整っていない国や地域では、排泄物は川というより、川のように堰き止められた堀などに汚物やゴミが溜まっていて、そこで、平気な顔をして遊ぶ子たちは、その濁った水をそのまま飲用水として飲みます。つまり、病気や死を引き起こす危険性がある環境がまだこの世界に沢山あるのです。

こうした課題に対して、取り組んだのが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のビル・ゲイツ(元マイクロソフト創業者)でした。

10年以上の歳月もかけて…誰も振り向きもしなかった問題に取り組んだという点に、非常に感銘を受けました。

・パーキンソン病患者の生活を改善するデバイス
Microsoft Researchで働く、カイエン・チャンは、パーキンソン病を29歳で患ったロンドン在住のグラフィックデザイナー、エマ ロートンと会い、彼女を助けたいと考えました。エマは手の震えによりタイプも絵や字を書くこともできず、グラフィックデザイナーとしてのキャリアをあきらめざるを得ないと考えていました。

そこでカイエンは、手の方に外部(エマ・ウォッチ)側から特定の周波数の振動を与えると、そのフィードバックループに変化が生じ、手の震えが止まるというウェアラブルデバイスを開発しました。

これも少し前の話ではありますが、こういうデバイスがさまざまな人々をサポートできるような世界が当たり前になると素敵ですね。

・ゲーム感覚で環境美化に協力できる取り組み
家にいながらにして、ゴミ収集の手助けができるゴミ掃除ロボット「TRASH ROBOT」は、シカゴ川のノースブランチ運河沿いに位置するワイルドマイルと呼ばれる公園を管理している非営利団体Urban Riversの画期的な取り組みです。

ボランティアスタッフが毎日掃除しても川のゴミが増えていく課題に対して、世界最大規模のクラウドファンディング「Kickstarter」により資金を募り、遠隔操作できるロボットが開発・運用されています。誰でもWebブラウザから「TRASH ROBOT」を制御できます。

日本でもテーマが異なりますが、分身ロボット『OriHime』&『OriHime-D』を遠隔操作しサービスを提供しているカフェ『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』があります。これは外出困難者である従業員がロボットを通じて接客してくれるカフェで、これまで簡単に社会参加ができなかった方々にとっての希望の場所ですね。

弊社でも昨年ボランティア活動として、「HOT Tasking Manager」というマッピングプロジェクトにチャレンジしました。人命救助や改善に役立つデータを必要とする世界各地の地域の衛星画像から地図を確認して、建物、道路、その他の地物をトレースするアクティビティでした。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

4月からは「プラ新法」が施行されます。フォークやスプーン、ホテルなどの備え付けのヘアブラシやクリーニングハンガーなどが対象になります。このような小さな取り組みを実践していくことで「より良い社会の実現」に少しでも、近づけたらと思います。


*Boundless株式会社(バウンドレス)は、米国に本社を置くYahoo Inc.の日本法人です。

Boundless Creative Studiosでは、DE&Iな視点や公共性の高い事業やブランド・サービスを「より良く」する支援を、Boundlessのプロダクトを通じて、行っていきたいと考えています。サステナブルな世界やイノベーションを実現させるための取り組みにご一緒できれば幸いです。お気軽に、お問い合わせください。

Boundless Creative Studios



クリエイティブ&テクノロジー
クリエイティブ&テクノロジー