生と死の狭間で-詐欺師との出会い 変な男たち⑤
いつ出会ったのか、もう響子の記憶にはない。
響子は出会い系バーラウンジに行き出してからというもの
男性だけでなく、女性とも出会っていた。そもそも
人生に置いてアラフォーになった今も、動けば
自然と人と知り合う響子には常に出会いというものがあり
尽きない。そんな響子だから、変な人に出遇う確率も高い。
福島のタワーマンションに住む、バツ2の学は
アラフィフ石原裕次郎似の自称1,500万円プレーヤー。
最初は福島近辺の鯛めし屋はなびさんでのランチ加会食。
2回目は、有名な焼き鳥屋あやむ屋で頬っぺたが落ちそうな
絶品焼き鳥をいただきつつ。3回目はホテル阪神のバーだったか
4回目は、商談ですでにお酒の入っていた学に連れられ
適当に入った福島の激まずのイタリアンランチ。
別に何かあった訳ではない。タイプでもなく
食べ友くらいにしか思っていなかった響子。
いつもお酒を飲んでいる人が響子は好きではない。
学はいつ会ってもすでにお酒が入っているかランチでも
すぐにお酒を頼む変なおじさんだった。そんな学。
「宇宙人って信じる?」と唐突に。何の話かと思いつつ
「地球外生命体はいると思う」と答える響子を横目に
「実は宇宙人と知り合ってブラックホールを球体化する
技術を学んだんだよ」と、突拍子もないことを言う学。
とりあえず話を合わすために「それってどういうこと?」
と、興味のある振りをして話を訊く響子に学は続けて
「球体化したブラックホールを痛いところに持って行くと
真っ黒だったものがなんとまっ茶色になるんだよ」と。
「その人が痛いとか不具合があると言っていなくても
その球体を患部にかざすと痛みやガンがなくなる。」
と言うのだ。そもそもそんな話を信じる人がいるのか。
響子は信じなかったが「すごいですね」とだけ相槌を打った。
何度目かの会食後に自宅でのコーヒーブレイクに誘われた響子。
「嫌だな」と思いつつも、何もしないということを条件に
一度自宅にお邪魔することにしたのだが。そこで響子
不思議に思っていた疑問を学にぶつける。
「2回目の奥さんはある日、渡韓し、そのまま帰らず。
韓国人と結婚。元奥さんとは今でも彼女の旦那さんと
3人で韓国でご飯を食べるくらい仲良し」と言っていた学。
「奥さんとは別れているのになぜいまだに車のキーに
奥さんとの指輪を付けているんですか」と。
20歳くらい歳の離れた奥さんだったからか、好きだったのは理解。
でも、別れて、他人になっただけでなく、他の人の妻
になった嫁の指輪をいまだに肌身離さず持っているのは
「さすがに気持ちが悪い。し、諦めが悪いよな」と内心思う響子。
「今でも好きだから。想い出として残してる」という学。
そもそも、学とどうこうなるつもりもない響子。
「次回は自宅で手料理を作って」という学だったが
響子は学ともう会う気はなかった。ので、連絡が来てもスルー。
その後は、新たな出会いに明け暮れていた響子。
学のことをすっかり忘れていた響子。であったが
数年後、普段観ないテレビを付けていたらなんと
見たことのある顔が。あの学が、出ているではないか。
よくよく内容を聞くと、株を取引する資格を保持せず
「あの株、絶対あがりますよ」「この株買っておいた方がいい」
と、あちらこちらで言って勧誘し情報操作。いわゆる投資詐欺。
あらゆるところからお金を引っ張り総額10数億円。
なるほど、タワマンに住めた理由はそこかと響子。
感と嗅覚に優れている響子。ヤバい奴は一目でわかる。
が、若干ぶっ飛んでいるヤバい奴は、最終逃げ切るが
つい興味本位で近付いてしまう響子。学は後者だった。
ヤバい奴シリーズで続けるとと、将もぶっ飛んでいた。
「おっさんだからモテない」とか言いつつ、実は既婚者。
それを隠して出会い系サイトに登録。士業は取り下げ
今はそれに従事していないといいつつ立派な現役弁護士。
怪しいな、と思いつつも響子がその事実を知ったのは数カ月後。
変態なソイツは「舐めるのが好きやねん」とパンプスを
履いていた響子の素足を個室なのを良いことに手に取って
いきなり足の指をしゃぶりだす。ドン引きする響子を他所に
至福そうに目を細めて満足そうな顔をしている将。
なぜ、現役弁護士か。なぜ、既婚者だとわかったか。
というのは、詰めの甘い自称1,500万プレーヤーのソイツは
「声が聴きたい。電話無理かな?」という響子のお願いに
ルンルンと個人携帯を使って電話をして来た訳である。
響子と将が出会ったのは、Facebookをもとに
ログイン出来るサイトであったことも加味する。
電話番号を登録するとFacebookというものは勝手に
「知り合いかも」という欄に登録された電話番号相手を
抽出してくる。設定で変更は出来るのだが、余程情報に
詳しいか気をつけている人でないとその設定はせず。
よって、団子の国出身の将の情報が出てくる訳で。
ご丁寧にもフルネームに写真付き。そして氏名で検索
すれば○○弁護士事務所の○○弁護士と表示。
もっとググれば「上の息子と下の女の子を連れて」と
子煩悩なキャンプ日記すらも出てくるという有様。
「結婚してるよね?」って訊いた響子に「してないで」と
いう将の言葉はやっぱり嘘だったんだと恨やむ響子。
本能が「既婚者っぽいな」と警告していたのに…。
現役弁護士すら嘘を吐くこのご時世。一体何を信じ
何に希望を持って生きたらいいのかと思う響子。
「離婚調停中って言ったら響子と付き合えなかったよね。」という篤もそう。確信犯。現行の日本の法律では
金銭が絡まないと詐欺とは立証されない仕組みだそう。
泣こうが喚こうが、純潔であろうがなかろうが何のその。
貞操を奪われただけでは何も訴えられないのがこの国の法だ。
敢えて出来ることと言えば、貞操権の侵害と慰謝料?
弁護士費用と総裁くらいか裁判するだけなんとこちらの
時間の無駄という仕組み。騙される方が悪いらしい。
7個下のあの子だって「結婚する」っていうから
付き合うことを了承した。ただ付き合うだけなら
他の女性に行けばよいものを「どうして響子と」か。
「時間を無駄にしたな」と思うが「出来なかった経験を
したんだ」と、思えば、よし。と思う一方で、響子と
別れてからたった数年で、他の娘と結婚したと聞き
「やっぱり何だったんだろあの一年」と、虚しさを
覚える感覚もなきにしもあらず。
確かに顔は格好よかった。面食いの響子も認める。
名の知れた高級中華料理店のシェフ。美味しいご飯を
いつも作ってくれるあの子は、池内博之似のイケメン。
とは言っても、二十歳の記念に入れたという百合の花の
タトゥが胸に入ったあの子を受け容れることはタトゥ嫌いの
響子には元より難しかった。やはり御縁がなかったんだな、と。
コンサル業を営む、という自称1,000万円の賢二。
「変態やねんけど、受け入れてくれる?」と初めて
会食したランチのあとの会話はぶっ飛んだ内容だった。
詳しくは書けないが、とかくジェルが好きな奴だった。
不細工なのに何故だか甘え上手で、でも会計はいつも
年下の賢二が「響子ちゃん、いいよ」と全部出してくれた。
賢二もバツイチで顔も不細工。本人はイケメン風。を装っていたが背も響子より低く、響子のタイプではなかった。
が、寂しさから流されるままに、連絡がくれば会っていた。
しかし、賢二も変な奴で住む場と車のナンバープレートの
地名が違い。はたまた「姉貴の子供達にピザを」と
幾度となくねーちゃんの子たちが話に出てくる訳で。
「あ、コイツ既婚者だな」という臭いがプンプン。
結婚を響子が匂わすと案の定、あれだけ頻繁に来ていた連絡も
会話も止まる止まる。「響子ちゃんのこと好きだけど…」
「結婚は…」なんて逃げ口上。こちとらタイプじゃないし
別にいい。自前でジェル持ち歩く変態野郎こちらからお断り。
顔が格好よくても誠実な人はいる。が、遊び人が多く。
不細工でも金持ちやイケメン風、格好を着飾ればそれなりに。
誠実な人はちゃんと早い段階でいい女を見つけている。
残っているのは女も男もロクな人間ではないのかも。
いや、真理として、まともな人というのは響子の願望であり
みんなどこかしら変で何かしらあり、だからこそこのご時世
バツイチだらけ。3人に1人、2人に1人の割合でバツが…。
そう思って「じゃあ逆紫式部方式でいこうか」と
10歳下の子に誘われて御飯に行くも、割り勘どころか
半分ずつ出したのに、お釣りを全部持っていかれる。
上から受けた恩恵は下に返す響子だが、女性として
響子を口説こうとしているのに店員さんから返された
トレーから小銭を全部取って自分の財布に何も言わずに
しまう行動に。「んー。。。」と悲しくなる響子。
せめて一言「おつり貰っていい?」と訊くとかないのか。
いや訊かれたとて「ないな」と思うだろう響子。
出会いが悪いのか世の中変な奴しかいないと学習する響子。
どんどん進んでいく世界に着いていくことが出来ず
どうやってこの辛い世界を1人で生き抜くか日々葛藤。
死ぬか生きるか、どんどんと結婚が遠退いていく響子。
いつになったら、この悪夢が醒めるのかと現実から
目を背けて、切に終わりを願うのであった。
つづく
#創作大賞 #7部作⑤
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