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こんな時代にも、上下関係はある。そして生産性を下げている

私は上下関係が昔から苦手でした。学校でも大学の寮でも、働き始めてからもずっと、上下関係に何とか適応しようとして来ましたが、これは無理だ、と感じてきました。

時代が変わって今はだいぶんフラットになり、いい時代になったな、というのが実感です。でも、こんな時代にも上下関係はあります。


春から企画的な部署に移り、グループ会社のある製品の収益性が悪い要因を調べていたら、意外なことがわかりました。なぜかグループ会社間で情報が流れて行かず、ベストプラクティスがシェアされないのです。

その製品には研究所出身の技術サポート職員がいて、研究所の成果を営業現場に展開する、という建前なのですが、どこかで情報が目詰まりしています。よく聞くと、本社にいるベテラン社員が情報を遮断しているらしい。

彼がなぜ情報を遮断しているのかというと、「後輩の技術サポート職員は、まだ最新技術を適切に販売に生かせないから、オレが取捨選択する」という言い分。親心からでした。

一方の後輩の技術サポート職員たちは、不満はあるけど大先輩には表立って逆らえない。これが情報共有を妨げている原因でした。


私が驚いたのは、科学的合理性を重んじる"理系"の彼らが、先輩後輩関係の力学で動いている、ということでした。やたらに風通しが悪い世界です。

さらには、本社と支社、親会社と子会社、コーポレート部門と現業部門という上下関係もあります。現場のサポート職員は子会社に出向しているので、親会社のかつ先輩職員にはなかなかモノ申せない。


風通しの悪い会社は収益性が悪いことは、北野唯我「職場の『空気』が結果を決める」に描かれている通りですが、リアル版を見てしまい暗澹たる気持ち。2020年の今の世にも、上下関係というのは亡霊のように生き延びています。

例えば、就職ランキングで常に上位に来る商社さんとお付き合いがありますが、むやみに上下関係厳しいです。たぶん体育会系の雰囲気なのでしょう。正直、ここでは働きたくないと思いました。就活生さんはよく見極めてくださいませ。


うちの会社の話に戻せば、私は企画的立場から、「その製品を扱う研究員と技術サポートメンバーでフラットなチームを作る」ことを提案しました。それぞれの所属はそのままに、会社とチームと二つの組織に帰属するイメージ。そしてそのフラットなチームに予算や研究開発のテーマ設定などの権限を与える。もちろん、新チームからは件のベテランさんには外れてもらう。

ですが社内の反応を見ますと、あまりイメージがわかない人が多い。"社員は必ず一つの会社に帰属し、ボスへの指示系統は一本で、権限はポストに属する"ことに、信仰に近い信念があるようです。既に現状の組織形態を"内面化"してしまっている。

うちはGoogleみたいな会社じゃないんだから、そんなオートノミーな組織はワークしない、との感想もありました。


私がこの提案でやりたかったのは、会社など所詮虚構なのだから、柵の中に入れられるように「会社に属する」イメージなど壊してしまうこと。だからレポートラインを2本にして組織をあえて曖昧化し、複雑で多数のタスクをしかもリモートでやる今の仕事のやり方の実態に、組織の方を合わせようとした。

結局、妥協案のような組織形態に落ち着きそうですが、今でも「できるはず」と思うし、上下関係という"亡霊"とまともに戦わない限り、売上は回復しないだろうと思うのです。


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