春を待ち侘びる
寒さの続く冬というのは、身体も縮こまり無駄に力が入ってしまう
街で見かける人々の上着の色は、黒、茶、紺など暗いものが目立つ
関西では奈良の東大寺でお水取りの儀式が行われるといよいよ春が近い
3月中旬でも暖かい日が続くと、気の早い桜は咲き始める
もう3月下旬
満開の桜があちこちで見られる
気の早い桜は、先日の雨で散ってしまい寂しそうに見える
来週あたりから入学式
桜が残っていたらいいなぁ
満開の桜を背景にした記念写真は宝物になるから
そんな桜の花なんだけど、これは寒くて鬱屈した冬を過ごして来たからこそ、開花に喜びを感じるんだと言われたことがある
この話は25年以上前に遡る
僕は塾で講師のバイトをしていた
同僚が3月中旬から2週間ほど中東に出かけて帰国した
彼女が出かけた時は桜はまだ開花してなくて、帰国したら咲いていた
彼女は満開の桜を見て、例年感じるような喜びを見出せなかった
その原因を探った
それは、まだかなまだかなと桜の開花を待ち侘びる時間を中東で過ごしてしまったからだという結論に至った
読書は、表紙を見てワクワクし、手に取って読み進めていき、そこに発見や驚きがあり楽しいひと時を過ごす
しかし、いきなりあとがきを読んで、物語の流れや重要な部分を知ったところで、それは楽しい読書だろうか?
彼女は中東の旅を目一杯に楽しんだ代わりに、桜の開花を待ち侘びる時を失った
しかし、満開の桜を見ても満たされないことがあると気づいたことは素晴らしいことだと思う
満開の桜を見るたびに、この話を思い出す