
書評:わが投資術 市場は誰に微笑むか
非常に人気で2024年を代表する投資本です。
内容も現実的で非常に納得感のある記載でした。
著者の投資に対する考え「投資においては常に少数派であるべき」という考え方は仮想通貨においても基本戦略だと思います。
また,理系の私は「市場は平衡状態を常に目指していて,その平衡状態が崩れた時が収益源」だと捉えています(あくまでイメージの話です)。
具体的には,通常は買いと売りのバランスが取れているのに暴落の恐怖から投げ売りやロスカットが起こっているような時は均衡状態から外れ,理論値より安く買うことが出来る,というようなものです。
この考え方と整合するような記載も多く見られました。
この本の目玉の一つであるネットキャッシュ比率による評価のパフォーマンスも後ほど確認してみたいと思います。
(J-Quants APIだと計算可能なのはプレミアムプラン…!?)
読書記録を兼ねて,私が大事だと思った点を箇条書き形式で書き記します。
市場と少数意見:多数派と同じポジションは、間違えた時の損失が大きいが、少数派の意見やポジションはリスクが相対的に小さくなる。
割安小型株の魅力:小型株は投資家が少なく、株価に織り込まれている情報が少ないため、何が評価済みかを把握しやすい。「投資アイデア=織り込まれていないアイデア」を探すことが重要。
バイアスを利用する:大多数の投資家が何らかのバイアスに陥っているときは投資チャンス。
情報の織り込みスピード差:大型株と比べ小型株は市場参加者も少ないため、情報の織り込みが遅い。機関投資家は小型株だけでなく中大型株にも投資する必要があり、その分、小型株は個人投資家有利。
暴落株への投資:暴落後に買うことは実際のリスクは小さいが、心理的には大きなリスクを負っていると感じがち。
マクロとミクロ:マクロ的な予想で勝つのは困難だが、ミクロ的な分析からは多くの勝機が見いだせる。
イベント投資的視点:市場が一時的に正しい確率に達しないタイミング(ニュース発表直後など)に収益機会がある。
割高・割安評価:PERだけでなく、バランスシート全体(資産・負債)、特にネットキャッシュ比率などを考慮して割安度を測るべき。PBRは「解散価値」を示すわけではなく、低PBRだけを頼るのは危険。
ネットキャッシュ比率:
ネットキャッシュ=流動資産+(投資有価証券×70%)-負債
ネットキャッシュ比率が1以上は「会社をただで買えるほど割安」というレベル。
割安小型株は増配や自社株買いによるリターンが見込める可能性。
キャッシュニュートラルPER:
PER×(1-ネットキャッシュ比率)で計算し、預金金利ゼロ前提下で割安度を測る補助指標。
低PER株の魅力:
将来予想期間が短く、調査が容易
将来増益を前提としなくても投資が成り立つため、金利変動リスクの影響が小さい。
バリュートラップ注意:PBRの低さのみで飛びつくと、バリュートラップに陥りやすい。中身(業績見通し、財務構造)をよく見る必要がある。
マザーズ(グロース)市場嫌いの理由:割高な小型株が多く、研究効率が悪い。
小型不動産株のチャンス:中小不動産会社は市場評価が低いため、健全な財務構造を持つ会社は割安で有望。
SNSなどの正のフィードバックビジネス:成長への期待が大きいが、予想の難易度が高い。
小型株投資と分散:
個人投資家は小型株に自由に投資でき、機関投資家より有利。
初心者はTOPIX ETFと小型株の組み合わせで相場感を鍛える戦略が有効。
狙うべきは最低2倍。
「才能」より経験:10銘柄程度分散すれば、当たるものも外れるものも出てきて経験値が上がる。
悪材料への免疫とサプライズ:
相場は驚きの程度に反応する。悪材料が織り込まれ慣れると下がりにくい。
地政学的リスクなどでは、最悪ケースに備えたショートよりも、外れた時に大きく儲けられる安値ロングが有効な場合も。
先物と現物の裁定残高:
先物中心の投資家は短期筋で踏ん張りがきかず、先物と現物のポジション状況からテクニカルな強弱サインを得られる。
「先物売り・現物買い」ポジション蓄積は弱気、「先物買い・現物売り」蓄積は強気サイン。
割安小型株はヘッジ不要:基本的にショートヘッジは必要なく、ペアトレードはコストがかさみリターン低下を招く。
個別株空売りの難しさ:空売りは手数料、品貸費用、海外勢との競争などから個人投資家不利。
テーマ型投信とバブル:
テーマ型投信の流行で割高株がさらに割高になり、最後に空売り筋の買い戻しでピークを形成することも。
相続問題やオーナー経営者の動向は株価に大きな影響。
日本市場の特性:
基本的に内需主体ビジネスは成長が見込めないが、経営統合や生産効率化などでチャンスが生まれ得る。
消費者余剰の概念や産業構造の縮小に対処する企業統合戦略が鍵。
機械セクターは非効率ながら経営統合による投資チャンスも存在。