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普通伊予柑こんぼう
みかんの経済寿命は30年~40年ぐらい。
さらに詳しく言えば、資産価値としての耐用年数は35年、原価償却は35年間に分けて行われる。
でも、みかんの木が実際に生きている時間は、その木による。
人間と変わらない。
ほとんどの木が、経済寿命ぐらい生きるが。
植えてすぐ枯れてしまうものや、虫に食われて枯れてしまうものもある。
逆に、50年以上生きるものもある。
私が見た中で一番樹齢が長いものは、詳しく覚えてないが、みかん研究所にある戦後すぐぐらいに植えられたもので、今でも毎年みかんを実らせている。
私は、齢26歳。
みかん農家を始める際、地元のおじいさんの育てていたみかんをそのまま受け継いだ。
山(この辺のみかん農家だけかわからないが、畑とは言わずに「山」という)にもよるが、そのおじいさんが、何年も前に植えて、育ててきた木たち、私より先輩の木もたくさんある。
これが果樹農家のいいところだ。
野菜農家では、畑を受け継いで、土を受け継ぐことはあっても、野菜をそのまま受け継いで、育てることはない。
果樹農家は、先輩農家さんが大事に育てた木を受け継ぐことができる。
受け継げるからこそのプレッシャーもあるが、それもまた1つのやる気につながる。
まぁ、やる気があるからと言って、木が枯れないわけではないが。
「桃栗3年柿8年」なんて言葉もあるが、
みかんも植えてから3年間は、木を大きくするために、収穫はできない。
さらに、経済的にしっかりとした収量が採れるのは、植えてから8年ぐらいかかる。
言葉にするなら、
みかんは、「収穫まで3年、かね8年」だ。
(なんかいやだな)
経済寿命を過ぎたくらいの木のことを、老木という。
老木は、たくさん重ねられた年輪の分、幹は太く、背が高い。
何十年も、植えられた場所で育ち、実をならし、生きている。
私が生まれるよりも前から、そこで生き続けているのだ。
でも、やはり年老いている分、木が大きく作業がしにくかったり、収穫量が少なくなったりする。
老木を生かすのも、殺すのも、農家の考え方や経営次第で、人によるが、やはり、できるだけ長く木を育てていきたいのはみんな変わらないと思う。
今年、私は就農直後からずっとお世話になっていた、老木の伊予柑を切った。
推定樹齢50年以上の普通伊予柑の老木だった。
伊予柑にも種類があり、普通伊予柑は古い品種で、作っている人はもうほとんどいない。私も、宮内伊予柑という品種がほかの畑にあるが、普通伊予柑はその畑だけだった。
就農直後はまだ面積も少なく、収入のほとんどが、その普通伊予柑だった。
木も大きく、摘果や収穫は、木に登らないと何もできないくらいで、作業は大変だったが、たくさん実がなる年は、若い伊予柑とは比べ物にならないぐらいなったりもした。
でも、畑の面積も増え、作業効率などを考えたときに、この普通伊予柑を伐って、新しい苗木に切り替えようと判断した。
木が大きかったため、伐るのも大変で、すべての木を伐り終えるのに3日かかった。
ちなみにその普通伊予柑で記念に棍棒を作った。
木を伐った後の畑は、引っ越した後の部屋のようにすっきりとしていて、木があった時よりも、広くも、狭くも感じる。
まぁ、引っ越したことは一度もないので、イメージだが。
多分そんな感じだろう。
3月には苗木が来る。
老木たちが生きていた場所に、新しい住人が引っ越してくるのだ。
私が、これからの人生をともに生きていく木を植える。
その木がどのように育つのかは、私とその木次第だ。
1本も枯れてほしくはないが、多分、早く枯れてしまう木もいるだろう。
だけど、できるだけ多くの木とともに、老いていきたいな。