#18 揺れる植物の本名
生き物の分類での本名のことを、学名といます。
"かいもんこうもくかぞくしゅ"
呪文のような言葉ですが、生き物の分類はこの言葉に従っています。
漢字で書くと、"界門綱目科属種"といいます。生き物を分類していくときの、世界共通の段階的なグループ分けの方法です。
ちなみに私たち人間は、
動物界(Animalia)
背索動物門(Chordata)
哺乳綱(Mammalia)
霊長目(Primate)
ヒト科(Hominidae)
ヒト属 (Homo)
ヒト(種小名: sapiens)
というのが本名です。
人間のことを、ホモ・サピエンスというのは、最後の属名と種小名をつなげて、Homo sapiensということです。
生物の命名法は、1758年に、カール・フォン・リンネという生物学者によって定められました。生物の学名は、二名法という約束で定められ、属名、種小名(+命名者名)の順に、ラテン語で表記されています。
リンネの時代、植物の分類は形態観察によって決められていました。花の形というのは重要な要素で、花弁の枚数や雄しべの数なども、植物の種分類を行うための手掛かりとして使われてきました。
しかし、植物学者によって形態観察の判断基準が異なることから、これまで様々な分類体系の変遷がありました。ドイツのエングラーとプルによって作られた新エングラー体系、イギリスのベンサムとフッカーによって作られたベンサム・フッカー体系、アメリカのクロンキストによって作られたクロンキスト体系です。それぞれの学派で異なる分類体系を使っていたため、世界基準では統一されないままでした。
1990年代になり、遺伝子解析が盛んに行われるようになると、分類学においても形態よりも遺伝的な類縁関係がより重視されるようになりました。"遺伝子"という客観的な事実をもとに1998年に作られたのがAPG分類体系です。これにより、世界の生物の分類基準は統一されることになりました。
遺伝子に基づいて分類が行われるようになると、それまでの分類方法の形態観察で同じグループだと考えられていたものが、実は違うグループに分類されたり、逆に違うグループだと考えられていたものが、同じグループに入れてよいくらい近縁だったりと、以前までの分類から変更しなければいけない生物も出てきました。
写真のアルストロメリアは、
新エングラー体系ではヒガンバナ科、
クロンキスト体系ではユリ科、
APG分類体系ではユリズイセン科
に分類されます。
つまり、アルストロメリアは、それまでの形態分類法では違う植物と同じグループに所属していましたが、遺伝分類法で独自のグループであるアルストロメリア科に決まったということです。
科の違いというのがどのくらいの差なのか、単純に比較はできませんが、例えば遺伝子が98.8%同じと言われているヒトとチンパンジーは同じヒト科に所属するので、
別の科に所属するユリとアルストロメリア、またはヒガンバナとアルストロメリアは、ヒトとチンパンジーよりも大きな違いがあるということです。結構大きな違いですね。
植物は、同じ種の中でさらに"品種"というグループ分けがあります。これは、種名のあとにvariety(var.)と表記されます。
ということで、アルストロメリアは
植物界(Plantae)
維管束植物門(Tracheophyta)
モクレン綱(Magnoliopsida)
ユリズイセン科(Alstroemeriaceae)
アルストロメリア属(Alstroemeria)
アルストロメリア(種名)
というのが本名です。
やや難解なお話でした。けれど、分類というのは、花をみる上で結構役に立つ知識だと思います。
次回もよろしくお願いいたします。
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