2023年4月16日 熔鉄のマルフーシャ
Switchのニンテンドーeショップを眺めていたら良さげなゲームを見つけました。
『熔鉄のマルフーシャ』です。
去年の8月にSteamで発売されたインディーゲームみたいですが、今年4月にSwitchやPS等へ移植されたようです。1000円ほどで買えます。
今回はエンディングやキャラクターのネタバレをそれなりに含むのでよろしくお願いします。
1.ゲーム概要
ゲームとしては、2D横スクロールシューティング×タワーディフェンスといった感じで、背後の壁を守りながら、迫り来る機械の敵を銃で撃破していくゲームです。
ウェーブを守りきると、ウェーブごとにカードを1枚購入できて、アイテムや武器を交換したり、攻撃力や連射力などをパワーアップできます。仲間を1人雇用して、バディを組むこともできます。
ゲーム自体も手軽に遊べるシューティングゲームといった感じでかなり好みなのですが、このゲームの真の魅力は「世界観」と「キャラクター」。
そして何より、とことん徹底された「救いのなさ」にあります。
では順番に行きましょう。
2.世界観
とりあえず熔鉄のマルフーシャの公式サイトから概要を引用しましょう。
重すぎる課税!
管理される人権!!
格差の大きい階級社会!!!
ブロックやカプセル、合成肉のディストピア飯!!!!
などなど、お約束ディストピアです。嬉しいね。
そんな終わってる国でパン屋さんに勤務しながら妹のスネジンカとささやかに暮らしていた主人公マルフーシャでしたが、ある日彼女の家に赤い手紙が届きます。綺麗だね。
マルフーシャ、徴兵されちゃった。
そんな訳で、都市の防壁を守る衛兵として徴兵されたマルフーシャは、壁の外で兵役任務に就くこととなります。頑張って働いたらお給料が貰えます。
まあ9割以上は税金控除や生活費諸々で差し引かれるので、手取りは1割にも満たないんですけど。
そんな少ない手取りも装備などに費やさなくては生き残れないんだから本当にタチが悪い。(マルフーシャは一般的なハンドガンしか支給されてません。しかも自腹で買ったアサルトライフルなんかも10日くらいでダメになります。最悪すぎる。)
さてさてそんな兵役任務ですが、何も徴兵されているのはマルフーシャだけではありません。頼もしく、愉快な仲間たちが一緒に戦ってくれます。(お金は必要)
3.キャラクター
ウェーブ終了時にキャラクターのカードを購入した場合、1人まで仲間を雇うことができます。SMG兵やLMG兵、ライフル兵、狙撃兵などがおり、それぞれちゃんと名前があって過去があります。
家庭的世話焼き不器用ツンデレ、努力家お茶目面白上司(真面目故に)、天才スナイパー自堕落お嬢様(暗い過去有り)
などなど。
濃ゆい個性を持つヲタクの煮凝りがそこにある。
そして彼女たちは、雇われるとマルフーシャの宿舎で同居するようになります。
宿舎に帰るごとにドット絵で描かれる各々の仕草はどれも可愛らしくキャラクターの魅力に拍車をかけます。
中でもわたしのお気に入りはSMG兵のベルカちゃん。不器用故に口が悪いタイプの心優しいツンデレです。
元々は看護師だったらしいのですが、口の悪さで患者からのクレームが絶えず、色々な病院をたらい回しにされて、結局仕事を続けることができずに兄妹を養うため軍に入隊したとか。
「アンタなんて手当するの嫌だから」が「あなたに怪我して欲しくない」の意味になるタイプのツンデレです。
彼女のイベントでは部屋の掃除をしてくれたり、宿舎ではいつも正座で洗濯物を畳んでいたりと、世話焼きで家庭的な様子が見て取れます。
そしてこのゲームはマルチエンディング方式で、10通りのエンディングがあるのですが、グッドエンドやバッドエンドのほかに、キャラクターごとのエンディングも用意されており、各キャラクターと過ごした戦いの結末が描かれます。
そのどれもがどこまでも救いがないのです。
4.救いのなさ
※ここから完全にネタバレを含みます。
まず完全にネタバレなんですが、仲間は漏れなく全員死にます。たとえ生き残っても敵国に捕虜として連行されていきます。なんでも、良い部品になるんだとか…?。みんな使い捨ての駒でしかないのです。もう本当に…この戦いには絶対に勝てないんですよ……。
グッドエンドでさえ生き残れるのはマルフーシャだけ。マルフーシャだけが軍の上層部にその能力を評価され、特殊部隊「熔鉄」のメンバーとして引き抜かれます。そのためにたった1人だけ救出され、他のみんなは駒として捨て置かれるのです。
そして救出されても尚、兵役任務は終わりませんから、また勝ち目のない戦争に再び兵士として身を投じなくてはならないのです。
ところが、それだけではありません。
エンディングを開放していくと、少しずつ敵国のこと、ないしは敵国の機械兵のことがわかってきます。
敵国は「"自国民の命"を大切にする」国、機械兵は人間の言葉を聞いて複雑な指示に従う、機械兵からジュースのような液体が飛び散る、捕虜を連行する際の「部品になりそうだ」という報告、そして極めつけには「ゴメンナサイ マルフーシャサン」と音声を発する機械兵…。
そう、機械兵の正体とは…。
はい…そうです…。
こんな感じのゲームです。機械兵が喋ったときは流石に笑っちゃった。
機械兵はマルフーシャ達の国から確保された捕虜を素体に作られていたのです。それも、複雑な指令をこなすコンピュータの代わりとして、脳みそだけを機械の体に詰め込まれるのです。
マルフーシャが倒していたのは、かつての仲間であったかもしれない人々の成れの果てであり、同郷の士なのです。
そしてグッドエンド以外では総じて、殺されるか、生きてても捕虜として部品に回されるのです。
酷すぎる。最高だね。
「ギャラリー」から閲覧できるコンセプトアートのひとつに、「父と娘」というタイトルのイラストがあるのですが……。
最初に見た時はあまり深く考えず、ふーんと言った感じで流していましたが、これ本当、本当にですよ。
機械兵、ただ複雑な指令をこなすコンピュータとして脳を使いたいだけなのに人格が残ってるのが本当に最悪なんですよね…。消しとけよ、人格は。
まあ、そんなこんなでサクッと遊べる爽快なシューティングで、魅力的なキャラクターが救われないゲームです。
よろしくお願いしますね。