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定年後 970 日目 30年前の自主映画をリマスタリングすることになった話

今日は半分昔話。


40年前の動画づくり

20 代から 30 代にかけて動画づくりにハマっていた。
ビデオテープが家庭に浸透していき、それまでの 8mm フィルムは衰退を続けていた時期だったが、私はどちらも使っていた。

最初に使った 8mm フィルムカメラ(左)とビデオカメラ(右)

フィルムはたくさんの粒子が発色して映像を作るのに対して、ビデオは光が変化する一本の線(走査線)が並んで映像を構成している。
8mm フィルムの場合は一コマの幅が 5mm ほど。ビデオは 525 本の走査線で画面を構成していたので縦方向の解像度は 525 ドットと言えるかもしれない。

そんなレベルだったので、フィルムとビデオの特徴の違いは明瞭で、どちらを好むかもはっきりしている人が多かった。

制作期間12年の自主映画

8mm フィルムで遊んでいた 22 才ごろ、友人から自主映画づくりに誘われた。はじめは半年ぐらいで撮りきってしまうつもりだったようだが、結果的に 44 人の仲間を巻き込んだ 90 分の大作になってしまい、完成まで 12 年もかかってしまった。

その映画は 8mm フィルムで作られていた。
メインカメラは FUJIFILM の ZC-1000。1 カットごとに入射光を測定し、距離をメジャーで測りながら撮影は進み、いまでは考えられないような手間がかかっていた。

当時のカメラの最高峰(だと思う) FUJICA ZC-1000

1 カットを 5〜10 テイクぐらい撮らないと監督の OK が出なかったし、現像から上がってきたフィルムによっては撮り直しになることもあったので、天気のいい週末にしかできない撮影はなかなか進まなかった。
費用もフィルム・現像代だけで 40 万円ぐらいはかかっていたと思う。

東京都写真美術館で上映

完成した映画は「丘を越えて」と名付けられ、恵比寿にある東京都写真美術館のホールで上映した。

東京都写真美術館( 画像 : ぴあ映画 HP より )
ホールで投影できる映写機を業者からレンタル

上映したのはその1回だけ。その頃は映写機を手軽に調達することもできなくなっていて、再度上映されることはなかった。

コンテスト作品で手タレ依頼

その 30 年後。私は長らく離れていた動画づくりを再開していた。

昨年、参加しているオンラインサロン MAGNET で 2 分間の動画コンテストが開かれた。
私は 8mm フィルムの編集の様子を作品にして出品することにし、実際の編集作業の再現を「丘を越えて」の監督にお願いした。監督とは長いこと連絡を取っていなかったが、撮影に参加するのはかなり久しぶりだったらしい。

このときの作品づくりの顛末はこちらをどうぞ。

その帰り道、「丘を越えて」を電子データにして当時の参加者に配布したいという話を聞いた。
私も賛同し、まずは パソコンで編集できるデータに変換してくれる業者を探さないとね、ということになった。

レトロ通販にテレシネ依頼

8mm フィルムをテレシネするサービスを扱っているメーカーはいくつかあるが、いずれも DVD にするサービスらしくパソコンでいじるには不向きだった。
そんな中、監督が「レトロ通販」という会社を見つけてきた。8mm フィルムなどのテレシネサービスを中心に行っているようで、テレビ番組からの依頼も受けているらしい。

技術的には SONY の放送業務用テレシネ装置 BM-2100 に EOS 5D Mark II を組み合わせて、レンズを通さずに直接撮像素子に投影しているとのこと。

BM-2100 (左) とEOS 5D Mark II (右)
( 画像 : filmkorn HP / CANON HP より )

監督と 2 人で錦糸町にある会社に行って相談してみた。
店内には 8mm フィルム関連機材があちこちに山積みしてあり、技術的なことを相談しても丁寧に対応してくれた。

質素な店構えの「レトロ通販」

テレシネはここにお願いすることにした。
フィルムを預けてからちょうど2週間でテレシネが出来上がってきた。

「丘を越えて」フィルム

データは問題なく編集ソフトに取り込むことができた。
スクリーンに投影したものを映写機の隣にセットしたカメラで撮影するのとは違い、フィルムの映像がきれいにデータ化されていた。

カラコレ、する?

8mm フィルムによる撮影はあとから色補正をすることはできず、すべて撮って出しになる。撮影時に色味の調整をしておかなければならない。
しかもフィルム面に入る光とは別に独立したファインダーで色味を想像しながら撮影するので、もともと思うようになっていない部分もあった。
また上映から 30 年、クランクインから 40 年経っているフィルムは褪色が激しかった。

はじめから薄々予想していたけど、ワンカットごとにカラコレしないわけにはいかないよなぁ、という雰囲気なった。

最初の一歩

素材の褪色にどのように対応すればいいのかよくわからないし、私のウデも心配だけど、とりあえず手をつけてみることにした。

まずは素材データをつなげて、カットごとに通し番号をテロップで付けた。数えてみると全部で792カット。

監督とは頻繁には会えないので、とりあえず素のままで YouTube にアップして見てもらったら、最初の 60 カット分の色味の修正メモが LINE で送られてきた。編集時にビデオ撮影しておいた映像と見比べて当時の色味を思い起こしているようだった。

監督から送られてきたメモ

メモから正確なニュアンスを読み取るのは難しく、ざっくりとカラコレした映像を再度アップして監督に見てもらうことにした。
処理はとりあえずこんな感じ。

元映像 (左) と粗補正画像 (右)

再びコメントが戻ってきたけど、やっぱりいっしょにモニタを観ながら作業しないとムズカシイ。
まぁ、当面はこんなやり取りで進めていくことになりそう。


( 参考情報 )

元フィルム:
FUJIFILM Single-8 約30分ロール 3本
撮影18fps
主・副音声トラックにアフレコ音声

データ化:
形式 MPEG4 29.97fps
解像度 FHD
主・副音声に入っている音声をL・Rチャンネルに振り分けて収録

納品期間:
14日間 ( 通常2週間で納品 )

料金:
69,300円・税込( 基本料金 7,000円/10分 )




2024 / 11 / 25

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