
定年1063日後 カラコレというよりカラーマイニングな日々(8mmフィルムのリマスタリング)
褪色の激しい映像のカラコレに挑戦
昨年の秋から大掛かりな編集作業を続けている。
8mm フィルムで 30 年前に友人が作った自主映画のリマスタリング。
業者に 8mm フィルムをテレシネしてもらったら、フィルムの褪色が激しく青色に染まっているところが多かった。
90 分の作品で 830 カットもあるのだが、少しでもなんとかしようと FinalCutPro でカラコレを試みることにした。
ただし私は色についてマジメに学んだことがない。
最初のうちはなんとかなったものの、褪色がひどいところではどうにもならなくなり、色の扱いについてアレコレ勉強するようになった。
その結果、始めた頃に比べて多くの手法を扱えるようになり、色を見る目も肥えてきた、と思う。(あくまで個人の感想です)
FinalCutProでのカラコレスタイル
映像の補正・加工は調整レイヤーで行っている。
一つの調整レイヤーでいくつも色補正をかけることもできるのだけど、混乱するので一つのレイヤーには一種類の補正だけをかけて、クリップの上に必要な数だけ調整レイヤーを重ねるようにしている。各調整レイヤーには分かりやすい名前をつけてね。
改めてタイムラインを見てみると、最初は一つの調整レイヤーが載っているだけだった。カットが進むにつれて調整レイヤーが増えていっているのがわかる。

今回はカラコレの変遷について、忘れないうちにまとめてみることにした。
カット 4 (カラーホイールだけで)
映画冒頭のカット。
作業を始めた頃はカラーホイールの使い方しか知らなかった。マスクをかけてホワイトバランスや肌色の調整をする程度のことはしていたけど。
図 1 のクリップ(黄色の枠)のすぐ上の調整レイヤー「4-カスタム」は、クリップにつけた通し番号。その上に「1_カラーホイール」レイヤーをひとつ載せているだけ。


このカットはきれいにテレシネできていて、カラーインスペクタのカラーホイール下にある「温度」を調整する程度で済んだ。左の波形の上限が 75 ほどだが、引き上げると画像が白飛びしてしまったのでそのままにしてみた。
カット 12 (WB と肌色の調整)
白い紙と手のアップ。
いずれもヘンな色になっていたのでまじめに処理することにした。
ホワイトバランスと肌色の調整のレイヤーを載せてそれぞれ調整した。


ここも明るくするとバランスが崩れてしまうのでぼんやりとしたままにしている。
「ライトとカラーの補正」機能を使って自動的に処理させればいいじゃないかと思いてやってみたが、どのクリップでもとんでもない色合いになってしまい使い物にならなかった。
フィルムから取り込んだとはいえ、すでに電子化された画像なので色の補正手法は同じだと思うのだけど、AI には苦手らしい。
カット 73 (カラーカーブ)
全体に青味が強いカットが出てきて、カラーホイールだけではやりきれなくなってきた。で、覚えたのがカラーカーブ。
全体の明るさのほか、赤、緑、青の色ごとに調整ができる。このシーンで初めて触った。


この頃からカラーホイールで明るさを、カラーカーブで色味を調整して、必要に応じてホワイトバランスを別途調整するスタイルになった。
カット 96 (ヒュー/サチュレーション)
ここまでのフィルムは 30 年ほど前に現像したものだが、このカットから 40 年前のフィルムになる。さらにフィルムの劣化がひどく青のモノトーンのような状態になっていた。
もうカラコレというより、青色の向う側にある色を掘り出すような感じ。
さらに監督からは雑草の緑色だけを強めにという注文もあり、カラーカーブだけではうまくいかなくなってヒュー/サチュレーションを覚えた。


図 7 の「3_エフェクト」という調整レイヤーにはカラーボードによる調整が入っている。試してみたものの使い方を習得できず、じきに使わなくなってしまった。
このぐらいレイヤーを重ねると、夕焼けの中で撮影したカットも、日中の日差しのように見えるぐらい修正が効くようになった。

カット 268 (1 カットごとの作業が続く)
この頃には手順も決まってきた。
手順 1 カラーホイールで明るさをざっくりと調整。
手順 2 カラーカーブで青味を抜いて明るさと色を部分的に微調整。
手順 3 ヒュー/サチュレーションで局所的な色の調整。
同じような場面の連続なら、最初の設定をそのまま使えばいいように思うのだが、なぜか微妙に異なる結果になることがしばしばあった。
クリップごとに調整レイヤーを区切って使うほうが、状況を把握しやすかったので、編集画面上はスゴイことになってきている。


とにかく元データが劣化しているので、カラコレのつもりでも見た目に違和感がないことのほうが重要で、あえて色味をつけてバランスを取ったりして、いつの間にかカラグレになっていたりした。
作業を繰り返してみて、この素材の場合は波形にこだわらずに見た目でまとめたほうがよさそうだと感じた。波形の 0 - 100 のメモリはあまり気にしなくなっていった。
カット 315 (カラーマスク)
ワンパターンの作業を続けていると、次第に欲がでてくるよね。
このカットは晴天だったと思われるが、褪色による青味を抜くと空の青さもとれてしまい、曇り空のようになってしまった。
今までなら見逃していたと思うけど、できれば青空にしたい、白い物置は白いままで、などと考えるようになり「マスク」という機能に挑戦。
空の部分をエフェクトブラウザーのカラーからマスクして抜き出し、ヒュー/サチュレーションで青味をつけてみた。


まだ道半ば
ようやく 550 カットまでカラコレが終了した。今のところカット 315 のスタイルで処理を続けている。
あるレイヤーを調整すると他のレイヤーの調整結果に影響がでたりするし、厳密にはレイヤーの順番で効果が異なったりするのかもしれないのでまだまだ勉強が必要な感じ。
意外だったのが、色や明るさを調整する「ライトとカラーの補正」や、形状を切り抜く「マグネティックマスク」などの自動的処理がほとんど機能しなかったこと。素材の色情報が貧弱なのかな。
ま、地道にやっていくことにする。勉強になるし。
残り 280 カット、カラーマイニングは続く。
2025 / 2 / 26