定年後 726 日目 生成AIは「できること」が「やりたいこと」を超える世界
今日は生成 AI について感じていること、映像制作に影響しそうなあれこれ。
1 新しい技術への恐怖
Adobe Photoshop や illustrator が登場したとき、それまでの絵師たちの中には「undo でやり直しができる電子データが作品と呼べるのか」と疑問を呈した人たちがいたらしい。
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写真が登場したときも、現実世界をコピーしたような画像を見て「芸術とは言えない」と言った人々がいたのだろうと思う。想像だけど。
そういえばデジタルカメラをはじめて買った頃は、フィルムカメラの方々の多くが「作品が撮れるようにはならない」と口をそろえて言っていたっけ。
![](https://assets.st-note.com/img/1711442996119-O6hDdPW3bf.jpg)
こうしたことは何度も繰り返されていて、CGが登場したときも、ワープロが登場したときも、テレビが登場したときも、きっと「いかがなものか」という論調があっただろうと想像する。
このような否定的な意見は、それまでの流儀が失われることへの抵抗感と、未知のものへの恐怖心が発端になっているのではないかと思う。
2 「できること」 ⊃ 「やりたいこと」
最近、生成 AI が世間を騒がせている。その理由は主に2つ。
ひとつは、コンピュータが自動的に作ったモノが、まるで人が作ったようなクオリティを持っているから。もうひとつは、それがこれまでの流儀を超越していて、多くのクリエイターの代替になってしまいそうだから、だと思う。
これは歴史が繰り返されているだけのような気もするけど、今回は大きな違いがひとつあると感じている。
これまでに登場してきた新しい技術は、いずれも「できること」が「やりたいこと」未満だった。
それに対して生成 AI は想定外(想定以上)の結果を出してしまう。つまり「できること」が「やりたいこと」を上回ってしまっていて、人にはできないことがコンピュータにできてしまうような構図になっている。
こうした点が、単に否定的な意見を招いているだけではなく、政治的に制約しようとする動きにも繋がっているのではないかな。
余談だけど、ヨーロッパでは法律などによって積極的に制約していこうとする動きがあるのに対して、いつも何かと保守的な日本はこの点についておおらかなのがとても不思議。
技術は規制のないところへ流れていく。
生成 AI が人類破滅への第一歩となるのか、新たな創造ツールとして身近なものになるのかわからないけど、規制の少ない環境でそれを見届けられそうなことに、ちょっとワクワクしている。
3 人間史を凌駕する生成AI
生成 AI の問題点のひとつとして、学習するために取り込んだ既存のデータに対する著作権がある。裁判沙汰にもなっているみたい。
ところが学習するためのデータを生成する AI というのが登場したらしい。で、生成されたデータが現実の事象に照らして正しいかどうかを判断する AI というのもあって、それによって精選されたデータを使って学習させれば著作物に関係なく無限に学習することができるとか。
ニワトリ・タマゴ的な気もするけど、それが可能なら人間が持っている 4 千年(5千年?6千年?)の歴史によって形成された資産なんてすぐに凌駕することになるだろうし、人間の知らない「世界」を生成 AI は獲得していくことになる。
このことは経験値においても人類より AI のほうが上回ることを意味していて、人には理解できなくても AI はより大局的な見解を示してくる、なんてことも起きるのかもしれない。
4 ド素人による生成AI
生成 AI の存在は巨大だけど、身近なところにも浸透してきている。
今年の年賀状は、なんと生成 AI を使って作成した。
用意したのは3枚の画像と、2つの楽曲。
画像は SeaArt で風景と3人の人物を生成した。これらを組み合わせてハガキの中にレイアウトした。
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楽曲は作詞を ChatGPT にさせ、その歌詞を Suno に読み込ませて男性ボーカルと女性ボーカルの曲を作らせた。いずれも無料アクセスの範囲での試み。
年賀状に QR コードを印刷して、スマホで再生できるようにした。
このとき Suno を初めて使ったが、作詞を始めてから曲ができるまで、たった15分ほどだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1711437235141-T0zwou7tlq.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1711437296338-CawQFv7sFO.jpg)
完成度は低いけど、ド素人がチャッチャッといじっただけでこれだけの結果が出せてしまう。現実世界や人間の創作物との違いが判らないレベルに達するのに、たいした時間がかからないだろうと容易に想像できる。
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写真撮影にカメラもモデルも必要としない時代はすでに始まっている。
5 現在の映像制作は「油絵」になる
現在無料で触れるのは画像と楽曲あたりだけど、動画にも同じ展開が起きるのは目に見えている。
OpenAI が Sora という動画生成 AI を開発して話題になっている。まだ一般に公開はされていないものの、画像の次は動画の波が来るのだろう。
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カメラもモデルも必要としない映像作品の時代がやってくる。
みんさんは笑うかもしれないし、モデルさんにカメラを向けて撮影する手法もなくならないとも思う。
でも今の撮影・制作スタイルは、油絵や書道のような位置づけになっていくと思っている。
こうした状況の中で、生成 AI に対してどのようなスタンスをとっていくのか、映像制作をしている方々は見極めなければならない時期にきているのは間違いない。
映像制作者集団のオンラインサロン MAGNET のメンバーにそんな話を振ってみたりするのだけど、ほとんど老人の戯言的雰囲気になってしまう。(笑)
今のところね。
みなさんは、どう思いますか?
2024 / 3 / 27 追記
soraの新しい動画が公開されました。
2024 / 3 / 26