【1日目】365日後に統計解析がこわくなくなる!ゆるマラソン『プラグマティックRCT』
毎日1つ、実際の論文で使われているデザイン・統計解析の手法を分かりやすく紹介します。
統計解析をもっと身近に!1日5分のゆるマラソン🏃♂️💨
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今回紹介する論文はこちら
「A Randomized Trial of Drug Route in Out-of-Hospital Cardiac Arrest」(NEJM, 2025)
Methodsの冒頭にいきなり"pragmatic, open-label, randomized trial "と出てきます
最近よく見る Pragmatic RCT(プラグマティックなランダム化比較試験)。この試験デザイン、どこが「Pragmatic(実用的)」なのか気になりますよね?
1.「Pragmatic RCT」って何がプラグマティックなの?
Pragmatic RCT(実用的ランダム化比較試験)とは、実際の臨床現場に近い環境で治療の有効性を評価する試験デザイン です。通常のRCT(Explanatory RCT)よりも制約が少なく、実臨床での適用可能性を重視します。
つまり、通常のRCT(Explanatory RCT)は「介入そのものの効果」を明らかにすることが目的 ですが、Pragmatic RCTは「実臨床での治療方針の決定」に役立つ 試験と言えます。
📌 Pragmatic RCTのポイント
✔ 患者の選び方がざっくり(inclusion criteriaがゆるい)
✔ 最初の介入のみ割り付け(その後の治療は通常のプラクティスに委ねる。治療のクロスオーバーや変更も許容)
✔ 実際の医療現場に近いデザイン(市中病院や救急現場でも実施しやすい)
📌 PRECIS-2ツール
Pragmatic RCTの「実用性の程度」を評価するためのPRECIS-2というツールがあります。すべてのPragmatic RCTで、このツールを用いて評価することが求められています。
2.この論文ではどこがプラグマティック?
📌 この論文の概要
この研究では 心停止患者に対する血管ルートの比較(骨髄路 vs. 静脈路)を、イギリスの救急医療システムで 多施設オープンラベルRCT として実施。結果として、30日生存率は 両群で有意な差なし という結論でした。
実際、本論文では、組み入れが「成人の院外心停止患者」とざっくり。介入は最初のみ骨髄路 vs. 静脈路に割り付け、その後2度トライして成功しなければクロスオーバー可となっていました。
3.Pragmatic RCTの落とし穴
盲検化をしないため、バイアスの影響を受けにくいエンドポイントの設定が必要
因果関係の特定が難しい
外的妥当性(External Validity)を高めるために、多施設で試験を行う必要がある(その分コストや運営の負担が大きくなる)
4.まとめ
なぜPragmatic RCTが注目されるのか?
現場での適用がしやすい
現実的なエビデンスが得られる
厳密なRCTよりもコストが抑えられる
つまり、「本当にこの治療は現場で役に立つの?」 を知るための試験デザイン。
今後もますます目にすることが増えそうです。
2025/1/31