大谷翔平 2020年 7月28日 OAK戦の投球データについて

先日、投手として2年ぶりの出場を果たしたLAAの大谷翔平選手の前回登板(2020年7月28日)の投球データを見た際に、個人的にいくつか気になった点があったのでまとめてみました。


目次
1. リリースポイントの変化について
2. 球速・球種別変化量の変化について
*尚、今回は単純な投球データのみでの比較を行いたいので、2018年の投球データも2020年のデータに条件を合わせるためにオークランド・アスレチックスのホーム球場であるリングセントラル・コロシアムで計測されたもののみを使用した。これにより、球場ごとの誤差を排除。(しかし、2018年から2020年の間にリングセントラル・コロシアムのStatcastのキャリキュレーションが何度か調整されていると思われるので、完全に同じ条件での比較とは言えない。)


1. リリースポイントの変化について
一番初めに取り上げるのは、最も気なったリリースポイントの変化についてです。
下記は、2018年(薄い色)と2020年(濃い色)の大谷選手のリングセントラル・コロシアムでのリリースポイントを図と表にまとめたものです。

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図1.2018年と2020年の大谷選手のリングセントラル・コロシアムでのリリースポイント

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図1.表1.の最も注目すべき点は、リリースサイドの変化でしょう。2020年は2018年に比べて、全球種平均で28.42cm一塁側に寄っています。こちらは、投球腕をより体に近づけ、縦に振り下ろすフォームに取り組んでいるか、プレートの踏む位置を一塁寄りに変えたかのどちらかが考えられます。
この仮説を、画像を使って検証したいと思います。下記の画像は前回登板(2020年7月28日)の速球のリリースの直前の画像に、2018年4月1日の速球のリリースの直前の画像を重ねたものです。(*素人が少ない知識で画像を重ねただけなので100%正確な画像とは言い切れません。信憑性に欠けると感じる方は無視してください。)

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画像1.2020年と2018年の速球のリリース直前の画像を重ねた画像


画像を見ていただければ一目瞭然かと思います。右側の2018年に対して左側の2020年は明らかに一塁側のプレートを踏んで投球しています。これがぴったり28.42cm一塁側にずれているかは、この画像からは正確に知ることはできませんが、「リリースサイドの変化は大谷選手が一塁側のプレートを踏んで投球していた事が理由」と言っても良いのではないかと考えます。

リリースサイドの変化は投球時の踏むプレートの位置を変更したことが要因としてあげられる事は分かりました。しかし、そうなると気になるのはリリースの高さも変化している事です。単純に投球時の踏むプレートの位置を変更しただけなら、リリースの高さは殆ど変化しないはずです。ですが、リリースの高さは全球種平均で5.43cm低い位置からのリリースに変化しています。
そこで、リリースの高さとエクステンションに注目していきたいと思います。下記の図と表はリングセントラル・コロシアムでの大谷選手の2020年と2018年のリリースの高さ・エクステンションの球種別平均とその差をまとめたものです。

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図2. 2018年と2020年の大谷選手のリングセントラル・コロシアムでのリリースの高さとエクステンションの関係
*今回のデータを見ていて初めて気が付いたのですが、エクステンションは他のリリースポイントに関するデータとは違い、0.1フィート(3.048cm)間隔でしかbaseball savantでは公開されていませんでした。これは、baseball savantの公開方法によるものでしょうか?それともStatcastの性質によるものでしょうか?詳しい方がいらっしゃいましたらご教示お願い致します。

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表2.の通り、リリースの高さが低くなっている分、エクステンションが長くなっている事がお分かりになるかと思います。前回登板(2020年7月28日)の方が2018年に比べてリリースの高さ・エクステンションがまとまっている様にも見えますが、リリースの高さ・エクステンションのこの2つが以前の投球フォームとの明確な違いであることは明らかです。
私は、前回登板(2020年7月28日)のリリースポイントのデータを見たとき最初は最も変化の大きかったリリースサイドの変化が0/3回、30球、被安打3、3四死球、5失点の最も大きな要因ではないかと考えましたが、実際は、リリースサイドの変化が投球時の踏むプレートの位置を変更したことによるものと仮定した場合、投球フォーム自体の変化はリリースの高さとエクステンションなので、それが乱調の真の要因の1つなのではないかと思いました。
現在、大谷選手自身が「投球フォームの変更に取り組んでいる」との発言をしている記事も見られるので、この変化が新しい投球フォームの結果なのか、手術の影響なのか、単に実戦での登板間隔があるためなのかの判断はできませんが、素人が物凄く単純に考えると、リリースの高さを高くし、エクステンションを身体寄りになるように調整することが、復調への一番の近道なのではないかと感じました。



2. 球速・球種別変化量の変化について
これまではリリースポイントについて触れてきましたが、ここからは球速・球種別の変化量について触れていきたいと思います。こちらもリリースポイントと同様に、前回登板(2020年7月28日)と2018年を比べると変化が見られました。
まずは、2018年(薄い色)と2020年(濃い色)の球種別平均球速と、球種別平均変化量を見て頂きたいと思います。

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図3.2018年と2020年の大谷選手のリングセントラル・コロシアムでの球種別変化量


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まず、この図と表の中で最も気になる点は、やはり色々な記事でも取り上げられている球速の低下でしょう。これは私も非常に気になりました。4シームは球速が低下し、スライダーとカーブは2018年に比べて4シームとの球速差が減少しており緩急を使えていない球種になっており、唯一4シームとの球速差が増加したスプリットは、逆に速球系の球との球速差が少ない方が打者を抑えやすい球種なので、球速に関しては全球種悪い傾向にあると考えます。速球は速ければ速い程良いという研究結果も出ているそうなので、以前の様な100mphに迫る速球を再び見られることをMLBファンとして願っています。
しかし、個人的に球速以上に気なったのが、球種別の変化量です。なぜ気になったかを一言で言うと「変化量が小さくまとまっているから」です。
4シームには後程触れますが、スライダー・カーブ・スプリットのすべての変化球が2018年に比べて4シームとの変化量の差が減少しています。いくら大谷選手の投げる球といえど、球速が低下し更に変化球の変化も小さくなったとなれば、打ち崩す事はメジャーリーガーならそう難しいことではないでしょう。次回の登板で変化量が2018年程度の値まで戻っているかにも注目したいと思います。
しかし、全ての球種の変化量が悪化したとは捉えてはいません。4シームに関しては2018年に比べ、シュート成分が非常に少なく時折スライド成分がでる所謂マッスラ系の4シームになっています。これはCWSのダラス・カイクル投手がこの様な変化の4シームに意図的に変更してからサイヤング賞を獲得する程の活躍をするようになり、他にもLADのクレイトン・カーショー投手が似たような変化の4シームを投げているため変化量としては良い傾向ではないかと考えます。しかし、その良い傾向以上に球速の低下と請求の乱れがあのような結果を招いたのではないかと思います。前回登板(2020年7月28日)で投じた4シーム16球の内、ストライクやファールでストライクカウントを稼ぐことが出来たのはわずか5球でした。これでは、いくら良い変化をしていても打者を抑えることは難しくなってしまいます。ですが、逆にとらえれば、手術の影響でしばらくの間本来の球速が戻らなくともコントロールだけでも改善されれば打者を抑えるのに有効な球種となり得るとも考えられます。


私の気になった点は、以上になります。前回登板(2020年7月28日)は残念な結果となってしまいましたが、次回登板では少しでも復調することを願っています。今回紹介した気になった点が次回登板では、どのような変化したかを、個人的な復調したかの判断基準として楽しみに待ちたいと思います。


また、こちらは素人が独学だけで書いたものなので、解釈の間違いなどありましたら遠慮なくご指摘お願いいたします。

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