大谷翔平 2020年 8月2日 HOU戦の投球データについて

2020年8月2日大谷翔平選手がエンゼルスのホーム、アナハイムで投手復帰2戦目となるヒューストン・アストロズ戦に先発しました。結果は皆さんご周知の通り、1回2/3 被安打0 3奪三振 5四死球 2失点で、試合後MRI検査を行い右肘の回内屈筋群の炎症と診断され、球団からは「今シーズンの投手としての出場は無い」との発表がありました。私は、エンゼルスファン・大谷翔平選手ファンではありませんが(10年以上のレッドソックスファン)、日本人のMLBファンとして投球内容とその後の診断結果は非常に残念なものでした。
事実上、今シーズンのラスト登板となったHOU戦ですが、トラッキングデータを確認したところ、復帰第1戦目のOAK戦のものと幾つか変化が見られたので、今回もまとめさせていただきました。


目次
1.リリースポイント・球種別変化量の7月27日登板との変化
2.球速低下時のその他の数値の変化
*尚、今回も単純な投球データのみでの比較を行いたいので、2018年の投球データも2020年のデータに条件を合わせるためにロサンゼルス・エンゼルスのホーム球場であるアナハイムで計測されたもののみを使用した。これにより、球場ごとの誤差を排除。(しかし、2018年から2020年の間にアナハイムのStatcastのキャリキュレーションが何度か調整されていると思われるので、完全に同じ条件での比較とは言えない。)


1. リリースポイント・球種別変化量の7月27日登板との変化

前回の記事で取り上げさせて頂きましたリリースポイントと球種別変化量ですが、前回登板と今回登板を比較するだけでも幾つかの変化見られました。結論から申し上げますと、殆どの数値が2018年に近い値を示す様になっていました。
まずは前回最も特徴的だったリリースポイントから、下記の図と表は前回登板と今回登板のリリースポイント平均をまとめ、比較したものです。

図1.2018年と2020年の大谷選手のアナハイムでのリリースサイド・リリース高の関係
*今回登板(濃い方)・前回登板(薄い方)

図2. 今回登板(濃い方)と前回登板(薄い方)の大谷選手のアナハイムでのリリースの高さとエクステンションの関係

表と図を見ていただければお分かりかと思いますが、前回登板では、2018年の数値より28.42cm一塁側に寄っていたリリースサイドは、今回登板では2018年に非常に近い数値に変化しています。恐らく、プレートの位置を以前までのものに戻したと思われます。まず、このプレートの位置について、以前と同様の方法にはなりますが、画像での検証を行いたいと思います。(*素人が少ない知識で画像を重ねただけなので100%正確な画像とは言い切れません。信憑性に欠けると感じる方は無視してください。)
以下、検証結果の画像と今回登板のリリースポイントと2018年のアナハイムでのリリースポイントを比較した図と表になります。

画像1.2018年と2020年のアナハイムでの4シームの投球を重ねた画像

図3.2020年(濃い方)と2018年(薄い方)の大谷選手のアナハイムでのリリースポイント

図4. 2020年(濃い方)と2018年(薄い方)の大谷選手のアナハイムでのリリースの高さとエクステンションの関係

OAK戦についての以前の記事をご覧頂いた方は、画像1のかなりの変化にお気付きかと思いますが、2018年と2020年の投球モーションが殆ど一致している事が分かります。つまり、大谷選手はプレートの踏む位置は今回登板より従来と同じ位置に戻していました。
他のリリースポイントに関する数値も、若干ではありますが、前回登板よりは2018年の数値に近づいています。ここからはデータに基づくものではなく、推測になりますが、大谷選手が以前(2018年)のリリースポイントに戻そうとしていたのかも知れません。このリリースポイントは今後も特に注目して、逐一追っていこうと考えていたので、そう言った面でも今シーズン中に登板しないのは残念です。


続いて、球種別の変化量の変化についてです。まずは、前回登板と今回登板の球種別変化量をまとめた表と図をご覧頂きたいと思います。

図5. 2020年(濃い方)と2018年(薄い方)の大谷選手のアナハイムでの球種別変化量

こちらは、4シームを除き前回登板からの変化が見られ、個人的には今回登板ではリリースポイントの変化より、球種別変化量の変化に注目しております。変化量の平均値だけで比較すると、まだ2018年との差がありますが、元々スライダーやスプリットは変化量のバラつきが多く見られるため、4シーム以外の変化量は以前までのものが戻ってきていると言っても良いと思います。
回転数について、前回の記事では触れませんでしたが、前回登板時点で回転数は全球種とも2018年と殆ど同等の値を計測しており、今回登板は2018年よりも高い値を記録していました。しかし私自身、スポーツ記事やテレビ中継の解説の際に時折取り上げられている「単純に、回転数が高ければ高い程、良い投球」というものに懐疑的な見方をしており、回転数だけで球質を判断する事は出来ず、回転数自体の球速や被打球速度との強い相関関係もあまり見られない事と、よく見るスポーツ記事の様に回転数だけで球質を断定しては面白さにも欠けると思い、前回登板の記事では、一旦2018年と同等の値を示した回転数関しての言及はしませんでした。
球質は、回転数と変化量やリリース、回転効率(回転効率はbaseball savantでは公開されていない)などの他のデータと掛け合わせて総合的に判断すべきと考えています。(回転数に関しては、今後個人的な見解をまとめて記事にしようと考えています。データの捉え方・特に重要視している指標などは、様々な意見があると思いますので、ご意見がございましたら遠慮なくお願い致します。)


リリースポイントに2018年との差がまだ若干見られましたが、前回登板より2018年に近い値を示しており、変化球は以前のものと遜色無いと考えられるため、大谷選手自身も以前の様な投球感覚を掴んできていたのではないでしょうか?


目次では、「2. 球速低下時のその他の数値の変化」を予定しておりましたが、2を執筆中に個人的に非常に興味深いと感じる点があり、別の記事まとめる事にしたため、今回は取り急ぎ以上とさせて頂きます。
別の記事に関しては、近いうちに公開予定ですので、そちらもご覧頂ければ幸いです。


また、こちらは素人が独学だけで書いたものなので、解釈の間違いなどありましたら遠慮なくご指摘お願いいたします。

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