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三島由紀夫『文章読本』読んだ

文章読本シリーズ、先日の谷崎潤一郎に続いて、三島由紀夫だよ。

中公文庫から新装版がでていたので購入。

本書の初出は1959年であるから、『鏡子の家』が連載されていた時期になる。60年以上前じゃないか。。。

だから明治期以降の翻訳語についてまだそれなりに距離を取ることができた時代なのだろう。もちろんそれは現代の我々には不可能である。

本書では古今東西の名文を取り上げているのだが、日本の昔の文章については、翻訳語も外来語もないなかで、簡潔に、しかし豊穣に表現できていると褒め称える。またこの簡潔さは現代人には耐えられないだろうとも述べている。

海外文学についても、印欧語と日本語の構造の違いに着目しながら見解をのべている。形容詞や形容句をえんえんと書き連ねることのできるのがヨーロッパの言語の特徴である。日本語にも翻訳を通じてこの特徴が取り入れられつつあるようだ。

あと翻訳家には文学者になりそこねて翻訳でそれをやろうとしている者がいるが、原文に忠実であるべきではないかと一部の翻訳家を軽くdisってるのがおもろかった。

というような感じで、良い文章を書くというよりは、文章をより良く鑑賞するための心構えみたいなことがえんえんと書いてあって、私の目的とはやや違っていた。。。まあ良い文章を書くためには、リズール=精読者でなければならないというコンセプトは理解できるのでいいけどね。

もちろん面白くなかったわけではないが、私の勉強不足もあって本書の内容を咀嚼できたとはいいがたい。それは良い文章の意味合いが60年前とは変わっているせいもあるだろう。現代は三島の生きた時代よりも使える語彙がさらに多いのである。

そういうことをなんとなく考えるのも楽しいので懲りずにこのての本をまた読んでみようと思う。次は丸谷才一だ。


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はむっち@ケンブリッジ英検
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