ねじの話 「ドリルねじ2」 「最大適応板厚」とは
ドリルねじ特有のトラブル「ジャッキ現象」や「ドリルの焼き付き」、「取り付け物の破損」を避けるためのkeywordは「適応板厚(メーカーにより様々な呼称あり)」であることをねじの話「ドリルねじ」Vol.1でお伝えしました。
今回の記事はこの「適応板厚」を理解することを目指します。
下の表をご覧ください(画像・表などは ねじコンシェル.com より引用しています)。
鋼板に鋼板を取り付ける場合の適応板厚
(メーカーによって数値は多少異なります)
この「最大適応板厚」の意味と「締結する板厚」の概念を理解するならドリルねじ特有のトラブルを回避出来ます。
「最大適応板厚」は基本的にはドリル刃が穿孔できる最大の長さで下図の様にドリルねじ毎に決まっています。
そして「締結する板厚」のカウントの仕方は締結の状況により異なります。
今回は手始めに基本となる下地鋼板へ鋼板を取り付ける場合を考えて「締結する板厚」についてと「最大適応板厚」の関係の理解を深めます。
A-1 : 鋼板を上下2枚重ねた締結
この場合はドリル刃が上下鋼板へ同時に穿孔するので、【上部鋼板の板厚T1+下地鋼板の板厚T2】が締結する板厚Tとなります。この値が最大適応板厚以下となる様にします。
T=T1+T2≦(最大適応板厚)
A-2 : 上部鋼板に先穴が開いている場合
先穴とはドリルねじの呼び径より僅かに径の大きなバカ穴のことです。
この場合は上部鋼板にドリル刃は穿孔しないので、上部鋼板の板厚は締結する板厚Tにカウントしません。それで次の様にします。
T=T2≦(最大適応板厚)
次に鋼板間に挟み込む物がある場合を考えてみましょう。
B-1 : 重ねた鋼板の間にボードを挟み込む場合
上部鋼板・ボード・下地鋼板すべてに対してドリル刃が同時に穿孔する瞬間があるので締結する板厚Tは【上部鋼板厚T1+ボード厚T2+下地鋼板厚T3】になります。
T=T1+T2+T3≦(最大適応板厚)
B-2 : 上部鋼板に先穴がある場合
先穴のおかげでドリル刃が上部鋼板へは穿孔しないので、締結する板厚Tは【ボードT2+下地鋼板T3】になります。
T=T2+T3≦(最大適応板厚)
以上が「締結する板厚」と「最大適応板厚」についての基本的な概念です。
「下穴開け」と「タップ立て」を同時に行うことを避けるため
(締結する板厚)≦(最大適応板厚)
の原則を守ってドリルねじ特有のトラブルを回避しましょう!
次回vol.3ではよくある木質材を下地鋼板へ取り付ける場合を考察します。