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2024年9月、エビ中お笑い3本ノック!!!

2024年9月、私立恵比寿中学のメンバーが舞台で共演した芸人。

上田航平、フランスピアノ
ザ・プラン9、ニューヨーク、いぬ、Everybody、大自然、ダイヤモンド
さらば青春の光

グレープカンパニー・よしもと・森東のそれぞれから、錚々たるメンツが集結。私はこの一ヶ月を一生忘れないでしょう。


「私立恵比寿中学(通称:えびちゅう、エビ中)」は、日本の10人組女性アイドルグループです。当然、お笑い芸人ではありません。
「アイドル」と「芸人」。観客から笑顔を引き出すのが職務の一つであることは共通しているものの、完全なる異業種です。バラエティはその名の通り「多様な」人たちで構成されている(とされる)ため、アイドルと芸人が共演すること自体はありふれています。それこそ、『岩井 狩野 えびちゅうの推しかるちゃー』なんかがいい例でしょう。ここでは、エンタメを作るという目的のもと、表現者であるアイドルと芸人が(形式的に)対等な立場で交流しています。

エビ中のラジオ『えびちゅう⭐︎なんやねん』には、なすなかにしやオズワルドが出演しています。これはエビ中のホームに回し役として芸人がキャスティングされているという感じで、アイドル側が「主」、芸人側が「従」です。とりあえず、ここではそうしておきます。アイドルの良さを引き出すために、芸人の話術が必要とされているわけで、目的はあくまでもアイドルの魅力を伝えることにあります。

それでは逆に、芸人側が「主」でアイドル側が「従」になるような現場とは、どのような現場でしょうか。このような状況では、目的は「客を笑かすこと」にあり、アイドルはその目的のために自らの表現力を駆使することが想定されています。アイドルにとってそれは貴重な異文化交流体験であるはずで、表現手法をより尖らせ、またその幅を広げることにつながります。ここで一応断っておくと、アイドルが本当にただの置物・マスコット的に扱われ、笑いのための雑なフリとしてしか消費されていないような現場は含めておりません。

ともかく、アイドルと芸人との共演には色々な種類があり、各々が求められていることはその舞台によって違うということです。こう書くと、当たり前のことを確認しただけですが。

エビ中に話を戻すと、この2024年9月(正確には8月末から)は、お笑いとの異文化交流の機会がなんと三回もありました。私はもともとお笑いが好きで、アイドル(エビ中)にハマったのは今年に入ってからなので、お笑いの文脈にエビ中が乗っかりまくるこの期間は私にとってフィーバータイムです。ご褒美でしかなく、どう転んでも美味しい。

それでは早速、一つ一つの現場について感想を記していこうと思います。


①天使のように微笑んで財布なくしてガム踏んで(09/01 昼公演)

ポスター

作・演出:上田航平。「ゾフィー」というコンビでコントをやっていたのですが、最近解散してしまい、今はコントでの海外進出を目指しつつ、作家としてさまざまな芸人と交流しています。

今回の公演(以下、『天使のガム』と略します)は、コント公演です。コントと銘打っている以上、笑いが志向されています。出演者はほぼほぼ役者畑の方々ですが、それを仕切っているのが上田氏であることを考えると、これはれっきとした「お笑い」の現場であると言って良さそうです。

この公演に、我らがエビ中の最年長である真山りかが、主演として出演しました。エビ中を好きになったおかげでこのようなコント公演に巡り会えるなんて、風が吹けば桶屋が儲かるような話で、全く想像もしていなかったです。余談ですが、もう一人の主演である蕨野さんは「仮面ライダードライブ」でかなり重要な役どころを演じた役者で、私は仮面ライダーも大好きなので興奮が止まりませんでした。お笑いと仮面ライダーとエビ中。私の三つの趣味がまさかでここで合流することになるとは。風が吹いて桶屋が儲かりすぎてしまいました。余談終わり。

好きなアイドルがまっすぐお笑いをしている姿が見れる、ぶっちゃけそれだけでももう元は取れています。取れているのですが、実際のところコントとして、お笑いとして、どうだったのか。以下に詳しく感想を述べます。

天使と探偵 笑っていいやつですよ!

一つ目のコント「天使のように微笑んで」。これはこの舞台の見方を提示しているようなコントで、オープニングとしてふさわしかったと思います。主演二人のオーバーな演技。「これが笑っていいものである」というところから前提をお客さんと共有していきます。

くどいようですが、この舞台はコントです。お笑いです。しかし、演者には芸人より役者の方が多く、さらに客層も別にお笑いオタクというわけではない状況。そうなると、まず最初の笑いが起こるところが大きなハードルとなります。場を温めるところから丁寧にやらねばならない。

その意味では、その後の「ふたたび君は消えていく」(探偵のコント)も含めてじっくり場を温めるのに使ったな、という印象でした。少なくとも私の行った公演では、もっと笑いが起きても良いのにな〜という箇所がこのコントまでは多々あって、まだ温まりきってないんだなと感じました。ここまでの二つのコントでは主演とそれ以外の顔をそれぞれ見せ、またある意味ベタな展開を丁寧に積み上げていくことで、笑っても良い雰囲気を少しずつ作っていったのだと汲み取りました。

他にもお笑い現場とは違うなと如実に感じた現象はあって、例えばそれぞれのコント終わりの拍手がなかった点が挙げられます。これは良いとか悪いとかでは当然なく、文化の違いでしょう。一人だけバカでかい拍手をしていた人がいましたが、結局広がらずに終わってしまいました。

次のコントから、ギアが一気に上がります。

定食、有名人、脚本家

「その手をそっとすり抜けて」。定食を落とすというシステム。これは単純に音としてうるさすぎるので、暴力的に笑ってしまいます。そこからの定食を落とすまいと奮闘する怒涛の展開。これは相当笑いました。このコントと後述する脚本家のコントが私はお気に入りです。
ある意味ではどっかで見たことがあるお盆を落とすという行為。その過剰化だけでここまで面白くできるのは、上田氏の展開の巧みさもさることながら、振り回されるフランスピアノの演技による部分が大きかったなと感じました。この辺りから中川のツッコミでほぼ百発百中で笑いがドカンドカンと起こるようになっており、公演終わりまでその空気感は持続していました。三発目にこの爆発力のあるコントを持ってきたのは大正解だったと思います。
このコントは真山さんがシリアスな演技をすればするほど面白くなるシステムなので、演技を全うすることが間接的に笑いにつながります。真山さんの迫真の不倫演技が見れて最高でした。

「あなたのことがもっと知りたい」。知らないけど有名人だというだけでサインを求めるコント。上田氏の実体験がめちゃくちゃ反映されているのではと思うくらい、設定にリアリティを感じました。このコントでの大部さんのわけわからない謎ポーズは今でも思い出して笑ってしまいます。

「だけどずっと言葉にできなくて」。先ほど挙げた脚本家のコントです。ちょっとあまりにもバカすぎて大好きでした。変なことをツッコミなしである程度やりきり、あとで一つずつツッコんで回収する。この繰り返しのコントです。これは一気に変なことをやり続ける部分でちゃんと印象に残るフレーズを残しておく必要があり、そこで失敗すると回収のパートでも笑いが一瞬遅れると思うのですが、本当に、全てが完璧でした。中川が一つ一つの変な部分を指摘した瞬間に、毎回爆発音のような笑いが起きていて、そのリズムも相まって本当に心地よかったです。

やっつけ伏線回収と、真の伏線回収

「君は僕の大切な人」。無人島サバイバルコント。ちょっとこの時代にしてはニートへの当たりが強すぎないかと思わなくもないですが、真山さんのリアル嫌な女性感が堪能できてとても良かったです。スタコミュとかでも結構冷ための対応を(ノリで)しているのを見たことがあったので、こういう系統の演技は真山さんの得意分野なのかもなと思ったりしました。

「もう一度あなたに会いたい」。感動の再会のリハをやりすぎてもはやヤラセになってしまうコント。かなり序盤の段階でそうはならんだろというところまで行ってしまうので、めちゃくちゃファンタジーです。それを受け入れてしまえばあとは笑いのみが積み上がっていくシステム。こういうシンプルだけど変なシステムを考えるのが上田氏は本当にうまいですね。

「そしてまた夏が終わる」。最終コントです。序盤は青春あるあるという感じで、丁寧に演技が繰り広げられます。笑いなしのフリの時間が長かったので、一気に雰囲気が変わったのを感じました。最終コント感。
そこから徐々に雰囲気が変わっていきます。さっきまでの他のコントで出てきたキャラや設定が少しずつ再登場し、その頻度と突飛さがどんどんエスカレートしていきます。最後の方では全く収拾のつかないところまで行き切って、どうオチにもっていくのかと思ったら、全ては「だけどずっと言葉にできなくて」の脚本家の作品だったという無茶苦茶なまとめ方でフィニッシュ。
真山さんの女子高生青春演技、フリとして完璧でした。その可愛さによりしっかりとドキドキしてしまいましたし、それが笑いへの振り幅の増幅につながっていました。主演なので当たり前なのですが、改めて真山さんの存在感を感じられて嬉しかったです。

とはいえはっきりいって、最後のコントは単体で見たら意味不明ですし、俯瞰で見てしまうとちっとも面白くないと思います。作品性は一番ないと言ってしまっても良い。しかし、だからこそ、私は安心して笑い切ることができました。あの場を共有していた人しか楽しめない、クローズドで閉じた笑い。これが許される雰囲気にそこまでのコントで持って行けていた時点で、大成功だったと思います。
また単純に、こういう「やっつけ伏線回収」ものが個人的に大好きというのもあります。伏線回収という営み自体をイジっているというか、「どう?綺麗に回収しているでしょ?」というスカした感じが一切ないのが良いです。あまりにも馬鹿馬鹿しくて、全然綺麗じゃない。その無理矢理さがしっかりと笑いに直結している。良いものを観ました。

そんなこんなで全コントが終わり、舞台上に上田氏が出てきました。上田氏まで観られると思っていなかったのでその時点でめちゃくちゃ嬉しかったのですが、その後に上田氏が語った内容が衝撃的でした。なんと、一発目のコントの後に発生したバカでか拍手の主、それが上田氏だったというのです。これには不意をつかれて爆笑してしまいました。お笑い現場の雰囲気を率先して作ろうとして失敗したという、素晴らしいお笑い。その場にいた全員がうっすら記憶の中にあった気まずい拍手。それがアフタートークで回収されたのです。これこそ神様の「伏線回収」と言うべきものでしょう。最終コントでのやっつけ伏線回収と、上田氏の意図せぬ伏線回収。この二つを最後に連打で味わえて、大満足でした。正直直前まで行くかどうか迷っていたのですが、当日券買って行ってよかったです。正しい判断でした。

②久馬歩責任編集 月刊コント 15周年ルミネ号(09/09)

ポスター

久馬歩。またの名をお〜い!久馬。ザ・プラン9のリーダーです。彼が毎月主催しているコント企画「月刊コント」に、エビ中から真山りか、星名美怜、小林歌穂の三名が参加しました。
月刊コントが15周年ということで、芸歴「15」年の東京NSC「15」期生が集められているのですが、そこに結成「15」周年の私立恵比寿中学が参加することに。確かに筋は通っていますが、めちゃくちゃなメンツです。こちらは配信で見ましたが、画面越しでも凄まじい人口密度とわちゃわちゃ感でした。

各々のコントでちゃんと笑いましたし、縦軸もなるほどな〜と思いながら大変楽しめました。こちらは一つ一つについて詳しく感想を言う感じでもないかなと思うので、エビ中に軸足を置きつつ、気になった点のみを挙げていきたいと思います。

・改めて、ザ・プラン9の安定感がすごい。特に浅越ゴエの「しっくりくる」感は異常だった。クリティカルヒットも石丸もめちゃくちゃ笑った。

・大自然、恵方巻きでずっと喋れなかったのは少し勿体無い。でもそうでもしないと登場人物が収拾つかないというのもめちゃくちゃわかる。

・いぬとダイヤモンドは同じことを反復するようなタイプのネタ。あとで色々キャラを絡ませるときに、こういうコントは便利。とりあえずそのくだりを応用すればウケるので、今回のテーマに適したフォーマット。

・ニューヨーク、ギャンブル狂いを一貫してずっと馬鹿にしていて最高。くだりをそのまま生かせるようなネタではなかったため、大オチにかけての本筋をそのまま担う。

・Everybody、エビ中が主に絡むのがここだとは正直思わなかったけど、改めて考えると大納得。ネタチョイスもエビ中が絡むのに最適なものだったし、Tiktok的な流行を考えても、Everybody×エビ中は一番違和感がない。

・ぽーちゃん(小林歌穂)の顔と動きに終始圧倒されっぱなしだった。これは天性のものだと思う。真山さんと美怜ちゃんがchoyのパートをやっている姿が想像できない。これを担当するのがぽーちゃんと決まるのに全く時間を要さなかっただろうと推測する。

・コント内で、(多分)真山さんが嶋佐に借金のくだりでガッツリ絡みに行っていた(と記憶しているのですが間違っていたらすみません)のが嬉しかった。こんな二人の絡み二度と見れなそうだから見れてよかった。

・美怜ちゃん、圧倒的に声が特徴的だなということを再認識した。誤解を恐れずに言えば、めちゃくちゃ面白い声をしてる。恵方巻きを食べている大自然についてコメントしていた美怜ちゃん、声質も相まってめちゃくちゃ面白かったと記憶してる。コメディにおける声質の重要性みたいなのを考えるきっかけになった。美怜ちゃんありがとう。

先述したような「置物として扱われるアイドル」にはなっていなくて、一安心しました。ちゃんと各々にお笑いとしての見せ場があって、特にぽーちゃんはがっつり身体全体で笑いをとっていてすごかったです。コメディエンヌとしてのぽーちゃんをもっと見たいと思いました。あと、SSAの宣伝のときに「コントはしないですが!」と気の利いたコメントを挟んでウケていた真山さん、貫禄が凄まじかったです。舞台慣れの極致というか、15年の重みを感じました。この9月のエビ中お笑いフィーバーに全て絡んでいるのも真山さんだけですし、この一ヶ月丸ごと、真山さんの存在の大きさを改めて認識する期間になりました。

③放課後ロッケンロール -HYPER- 2024 私立恵比寿中学 VS さらば青春の光(09/27)

終了後集合写真

9月の私はこのために生きてきたと言っても過言ではありません。私にとっての超特大ビッグイベントです。

まずこのイベントは「対バン」企画という括りになっているのですが、そもそも芸人とアイドルの対バンというのも聞いたことがないですし、さらばが何をするのか本番までよくわからないという感じでした。超怖い現場です。大コケの可能性も十分ある。

しかし、個人的には行かない理由がありませんでした。もちろんお笑いが元々好きだからというのもあるのですが、さらばに関しては思い入れが違います。私が高校生の頃に、初めて生でお笑いを観ようと思って足を運んだのが、他でもないさらば青春の光の単独ライブ『大三元』でした。さらばがいなければ、今でもお笑い好きだったかどうかわかりません。そのくらい自分の人生に大きな影響を与えています。

そんな私が今年急にエビ中にハマり、そのタイミングでエビ中とほとんど直接的関連性があるわけではないさらばとの対バンが発表されました。この発表を見たときの興奮は今でも忘れられません。私を狙い撃ちにきている!いや、そんなわけはもちろんないのですが、そう言いたくなってしまうほどに舞い上がりました。生で見るお笑いの素晴らしさを教えてくれたのがさらばなら、生で見るアイドルの素晴らしさを教えてくれたのがエビ中です。自分のエンタメの幅を広げてくれた両者がコラボする現場、これを逃すわけにはいかなかったのです。

初めて行ったさらば単独のTシャツと
初めて行ったエビ中ライブのタオル

上のような装備が許される、おそらく人生で唯一の現場。胸の高鳴りを抑え、会場へ向かいました。会場の入り口で係のお姉さんに「どちら目当てで来られました?」と聞かれてめちゃくちゃ迷ってしまいました。一応エビ中と答えましたが、心の中では本当にイーブンでした。

席につき待機。整理番号がかなり良く、4列目センターでした。もうすぐで始まるかなと思っていたら、普段のライブには似つかわしくない机と椅子がステージ中央に用意されました。これで確定したこと。さらば青春の光は、コントをしに来ている。9割方そうだと思っていました(逆にそれ以外だとチュロス歌うしかないと思っていました)が、やはり目の前でそれが確定したときの興奮と言ったらないですね。コントと音楽の対バン。完全なる異種格闘技戦です。

ここで、今までの現場を整理します。

①『天使のガム』は、コントです。広く見ればお笑いの現場と言って良い。しかし、客層は必ずしもお笑いファンというわけではない。お芝居を見に来ているお客さんを笑かす現場です。そこにおいてアイドル的な可愛さをフリとしてどう活かすかが重要だったのでした。

②『月刊コント』は当然コントですし、100%お笑いです。客層もお笑いを見に来ています。そこではある意味(『天使のガム』よりも)浮いた存在としてアイドルは存在していて、良いスパイスとして機能していました。

③『vs さらば』はエビ中側が主催していますが、見せ方としてはかなり対等です。さらに今回はさらばが音楽ではなくコントをやるということで、通常よりも異種格闘技性が増しています。客層はややエビ中寄りですが、さらば側のファンも多数見受けられました(さらばT着てる人とエビT着てる人の連番を見かけて、めちゃくちゃドンピシャな友人関係にほっこりしました)。

今回はエビ中のホーム。基本エビ中に優しい現場です。しかし、だからこそヘマはできません。さらば目当てで来たお客さんにもしっかり伝わるパフォーマンスが求められます。さらばもさらばで、主にアイドルを見に来た客層に向けてコントをするわけですから、割と特殊な状況(文化祭とかに近い?客層がおっさんの文化祭?)です。そんな現場で、どういった展開が繰り広げられたのか。思い出せる限り詳しく記していきます。記憶違いもあると思いますし、この対バンに関してはかなり個人の感情が文章にも表れてしまうと思いますが、ご容赦ください。客観的レポを欲している方はここまででブラウザバック!


まず前説の真山&心菜。真山さんがさらばのYoutubeを観まくっている事実に震えます。ブクロのゴルフチャンネルをいじって良いものとしていることが何よりの愛の証明になっていました。これでさらば側のファンの心を掴んだと言って良いでしょう。こういう前説的な場面での真山さんの安定感は本当に抜群だと思います。

そして、暗転。正直、小道具が出てきた時点で周りのエビ中ファンですら「さらば、あのネタじゃねぇか??」とザワザワしていたのですが、明転して確信に変わりました。満を持しての、

一本目、『居酒屋』。

(どう見ても違法アップロードに見えますが、公式です。さらばと言えば!みたいなネタなので、知らない方はぜひ見てみてください。名作です。)

開口一番、

森田:私立恵比寿中学がさらば青春の光と対バン・・・なんで!?

で完全に場を掌握し、そこからは安定の大爆笑でした。動画では何回も観たことのあるこのネタですが、生で観るとその完成度の高さに唸らされます。「自己紹介」としてこれ以上のものはないと思います。名刺ネタみたいなのがあるって本当にすごいです。

一本目が終わると、生着替え(!?)が始まりました。着替えながらトークをする。当然アイドル現場ではありえない場の繋ぎ方です。その間に起きたことと言えば、

  • 森田がエビ中の桜木心菜のことを「桜井」と呼び違え、心菜オタクから「おい!!!」とマジギレされる→森田「桜木さんの保護者ですか??」

  • その上で桜木心菜の解禁前テレビ出演情報をポロリ

  • メンバーの名前を間違えた森田をブクロがバカにし、その流れで「エビ中さんね、たしか9人でしたよね?」と言って勝手に墓穴を掘る(本当は10人)

  • 最前の女性さらばファンに、森田が下着状態で股間を見せつける

などと、やりたい放題でした。エビ中の現場に来てることを忘れてしまうような時間。

ここで少し真面目なことを言うと、さらばくらいエビ中に対して距離がある人たちとガンガンコラボしていくことは、興行としてすごく大切なことだと思います。この距離感によって紛れもなく「対バン」になっていましたし、観ている側もちょうど良いヒリヒリ感を味わえます。コラボというものは、(もちろんその後のケアまでエンタメにできるのなら、)このくらいテキトーな間柄でやっても面白い。今回の対バンは今後のコラボの幅を大幅に広げる、とても意義深いものとして機能すると思います。そう、願います。

と、まあそんなこんなで二本目なのですが、ブクロがバスローブを着ている時点で私は鼓動が高鳴っていました。
「マジか、エビ中の前で『あのネタ』をやるのか、、、!?ウソだろ、、、?」
その予想は、ズバリ的中してしまいました。

二本目、『男優』。

これも超有名ネタですが、これをエビ中の目の前でやっているという文脈込みで笑いました。これは単にセクハラ的な文脈で笑っているというよりかは、自分たちがわざわざ呼ばれたことの意味を汲み取っているというか、エビ中との対バンを真正面からやってくれているネタ選びであることは明白で、その心意気も相まって笑いにつながっているという感覚です。その後の生着替えのときにも、

森田:俺たちを呼ぶってそういうことやからな!www

と言っており、ここまで開き直られると清々しいです。私は高校生の妹(本当の意味で放課後!)と一緒に来ていたのですが、ちゃんと笑ってくれていて一安心しました。このネタに関してはなんというか、エビ中だったらこのネタも許してくれるだろう、という判断をさらば側も下してくれたこと自体がめちゃくちゃ嬉しかったです。

そして、再びの生着替え。森田がモルックについて言及してくれました。エビ中の星名美怜が最近事務所のモルック代表に選ばれたので、実はそこで森田(芸人界でモルックといえば森田です)と接点があります。個人的なことを言えば私は美怜ちゃん推しなので、この点もお得でした。確実にこの後、モルックトークがあるのですから。それについては後述します。

他にもエビ中と親しい芸人が誰かというトークで、「TKO!」と言ったファンに「そんな名前出したらアカン!!」とさらばが返したり、ラブレターズ溜口(エビ中ファミリー)がこの対バンを中止させたがっていた話だったり、「さらば×エビ中」というテーマでできるトークをほぼ全て回収したんじゃないかという満足感でした。そうこうしているうちに着替えが終わり、ラストコントです。

三本目、『終電逃させ屋』。

始まってすぐこのネタだと気づき、私は一瞬フリーズしてしまいました。これは、先述した私の人生初お笑いライブ『大三元』で初卸しされたネタです。さらに、その中でも一番お気に入りのネタがこの「終電逃させ屋」でした。自分が高校生の頃にこのコントを観て受けた衝撃を思い出しながら、横では、その頃の自分と同じくらいの年齢の妹が同じコントを観ている。正直もうこの時点で感極まってしまいました。お笑いを観ていてこんな気持ちになったのは多分初めてで、今後もほぼほぼないだろうと思います。自分の人生ごと回収されていくような感覚。

そして、ネタ後半、なんとエビ中が登場してきます。元のネタでは歩いてくる通行人を森田が口頭で情景描写していたのですが、その部分の空白をエビ中が埋める形です。欲を言えばもっと本質的な部分で絡んでほしかったという思いは無くはないのですが、さらばとエビ中のコラボコントは私がこの対バンに望んでいたことのうちの一つだったので、それが「終電逃させ屋」で実現したというだけで本当に感無量です。オチ台詞も仲村悠菜。さらばのコントをエビ中が〆る日が来るなんて。笑いながら泣きそうになる、不思議な体験をさせてもらいました。

(出てくるタイミングだいぶミスってたエビ中に文句を垂れる森田、最高でした)

ということで、さらばパートは終わりです。ここまででだいぶ興奮は最高潮でした。大コケに転ぶ可能性も案じていましたが、この時点でそのギャンブルには大勝利しています。あとは、どれだけ勝ち分を増やせるか。


しばし休憩ののち、エビ中パートです。「ebiture」が鳴り響き、全員起立。

(エビ中側のセトリです。)

「ebiture」が終わると、あのピアノイントロが流れ始めました。

一曲目、「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」。
私は生でのMXが初めてだったので、一回一回噛み締めながら念願のMXジャンプをしました。
これはめちゃくちゃ深読みなのですが、さらばが独立したての頃にやっていた深夜番組「さらば青春の光ふぁいなる」もTOKYO MXで、エビ中とさらばは、割と初期にMXで深夜番組をやっていたという共通点が実はあります。そんな意味も込みでの「MX」なのかなと思ったりしました。偶然の可能性が高いですが。

さて、「放課後〜」と言えば「果たし状」の部分です。元の曲ではエビ中に向けて果たし状が突きつけられますが、今回は真山さんがさらばに対して果たし状を突きつけます。

果たし状、さらば青春の光! お前ら、中学生との対バンでやるネタじゃねえだろ!!!

うろ覚えですが、上のようなことを言ってのけ、会場のボルテージはMAX。エビ中は、あのネタを無かったことにしないぞ!!!!という高揚感。さらばの心意気にエビ中が応えている形です。これができるアイドルを好きになれて本当によかったと思いました。「やだ〜」とかでスカさず、真正面から言及して触れに行く姿勢、大好きです。

少し脱線ですが、「私たち下ネタもいけます!!」みたいなアイドルはそれはそれで冷めてしまいます。なんというか、そういう路線ではないんだけど、ちゃんと下ネタにもお笑いとして受け身が取れる、そんなバランス感覚を求めています。今のエビ中10人体制はその意味で最高にバランスが取れているのかもしれません。大人として受け身が取れる姉メンと、ちゃんと中学生性を保ってくれる妹メン。全員成人したらどういうバランスになるのか気になるところではあります。

話を戻します。後のMCで、例のネタ「男優」について色々語られました。

  • 二階の左スペースから真山・星名・桜井が観ていたが、「男優」が始まった瞬間に星名が桜井(高二)を強制的にハケさせた

  • 一方モニターでガッツリかじりついて観てたことを自分から告白する安本彩花

  • 攻めたネタをやってきたんだから、こっちも攻めたセトリで行くぞ!!!と盛り上げる安本彩花

などなど。とにかく、まやあやみれ(上から三人)が絶好調でした。先ほど言った「受け身を取れる姉メン」というのはまさにこのことで、下品さを出さずにこの処理の仕方ができるのは、実はだいぶ高等なことをしていると思います。三者三様、みんな別々の仕方で良さが出ていたMCパートでした。

補足ですが、MCパートはどの曲の間に挟まれたのか忘れてしまったので、内容を思い出し次第書いています。時系列はぐちゃぐちゃです。

二曲目、「青春ゾンビィィズ」。春ツ、ファミえんと、生で聴く機会が立て続けにあったため、安心感がすごかったです。やっと余裕が出てきたので、サビの振りコピがノリきれて、楽しい!紛れもない、青春ゾンビそのものです。

三曲目、「紅の詩」。TAKUYA(ジュディマリ)曲が続きます。私はエビ中楽曲の中で「紅の詩」が一番好きなのですが、生で聴くのはこれが初でした。ずっと生で聴きたいと思い続けていたのですが、いざイントロが流れると嬉しすぎたのか、脳がバグって処理落ちしてしまいました。何秒か後に「これ紅の詩だ!!!」とようやく認識する始末。推し曲まで初回収できる現場になると思わなかったので、この時点でだいぶ放心状態というか、ふわふわ夢心地でした。
好きポイント。サビ前のハートを作りに行くところでは、サビに向かっていく曲調も相まって泣きそうになりました。音源では味わえない視覚的な悦びがそこにはありました。10人だとハートが大きくてそれも良いですね。また、最後の安本→真山→星名→小林の「うぅぅ〜」の場所(伝われ、、!)が順当に大好きなのですが、生だとより一層アレンジが効きまくっていて最高でした。

四曲目、「オメカシ・フィーバー」。妹が中山莉子(りったん)推しなので、心の底から嬉しそうでした。基本的に私は美怜ちゃんを目で追っている割合が非常に多いのですが、この曲に関してはさすがにりったんを見る割合が高まります。こういう誰がメインかわかりやすい曲があると良いですね。ついつい推しだけ追ってしまうという無意識の偏りを避けられます。

五曲目、「キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~」。歌い出しの「気をつけ」でいつも鳥肌が立ちます。大好き曲です。前の席が「歴戦の雄」という感じのオタクで、最後の「着席」でちゃんと座っていてさすがだなと思いました。そういうノリが一緒にできるオタク友達がいるって素晴らしいことだよなあと。すみません、曲と全然関係ないことを書いてしまいました。
この曲の「It's gakugeeeekai」を叫ぶ時がこのライブ通して一番声を出した瞬間だったと思います。シンプルなコール&レスポンスですが、それゆえに問答無用でぶち上がります。春ツでは予習不足で出しきれなかった感があったので、今回はがっつりノリきれて嬉しかったです。

(「歴戦の雄」といえばこの動画。)

このあたりでMCがあったような記憶があります。美怜ちゃんがモルックの話を始め、かなりしっかりめにルールを解説していきます。森田は先ほどまで真山星名桜井が見ていた場所で上から見ていたのですが、美怜ちゃんがたびたび「これで合ってますかね〜??」とか森田に向かって叫ぶので、渋々上からひょこっと顔を出して森田が答えてあげていました(「ポーランド!!」)。森田をこんなに可愛いと思うことがあると思わなかったです。

六曲目、「トーキョーズ・ウェイ!」。そういえば、さらばの事務所に「トーキョーズ・ウェイ!」のCDがあったとだいぶ前に一部のファンの間で話題になりましたが、これはなんだったのでしょうか。オールナイトフジコで渡されて飾ってたみたいなことなんですかね。これが騒がれていた時点ではまさかここまでのがっつりコラボがあるなんて思っていなかったのですが、もしかしたら伏線だったのかもしれません。

七曲目、「キャンディロッガー」。お恥ずかしながら音源でも聞き漏らしていて、正真正銘初見曲でした。いつもそうですが、ライブで初見を食らった曲はもれなく好きになってしまいます。今回も当然そうでした。また、一週間後の『ちゅうおん』でも聴けたので、このライブがいい予習になりました。
この一ヶ月で真山さんへの信頼度と好き度が急上昇していたのですが、この曲での真山さんはそれをさらに後押ししてくれました。あまりにもカッコ良すぎる。「言いたいヤツには、言わせとけ」。

八曲目、「EBINOMICS」。春ツに引き続き。こちらは小林歌穂(ぽーちゃん)をじっくり楽しめる曲。先の『月刊コント』に関連してぽーちゃんのコメディエンヌ性について言及しましたが、その一端を垣間見ることのできる曲になっております。振りににゃんこスターの踊りがあるので、さらばに伝わることを願っての選曲かな〜などと勝手に深読みしてました。

九曲目、「TWINKLE WINK」。「Knock You Out!」を除けば『indigo hour』で一番好きかもしれません。最初に聴いた時はそうでもなかったのですが、ライブで聴いたりしているうちに、いつの間にか大好きになっていました。「今この、しゅんかーん」の時の時計の針を半周回すような振りが大好きで、普段音源聴いている時もそこだけ指でやってしまいます。現場で一緒に振りができるのって最高です。

(エビ中最新アルバム『indigo hour』)

十曲目、「ゼッテーアナーキー」。「7!」のときにモルックを投げまくっていた美怜ちゃん、お茶目で超可愛かったです。それに限らず、この曲は自由演技パートが多いので、ライブで来るとめちゃくちゃ嬉しいですね。その場限り感を共有できる、まさにライブならではの楽しさ。
そして、これは本当にこのライブの中でも一番と言っていいほど興奮したのですが、「おまえの母ちゃんアナーキー」のところでペンラをグリグリして美怜ちゃんを指していたら、なんと、目があって指をグリグリし返してくれました。人生で初めての爆レスです。その後の数十秒の記憶はほとんどないです。雷に打たれたような、と形容するほかない衝撃でした。レスのほとんどはオタクの勘違いと言われますが、もうそれでも構いません。大事なのは事実ではなく、確かにここにある幸福感なのです。

十一曲目、「イート・ザ・大目玉」。私はその前の『ファミえん』で初見だったのですが、妹は今回が初見で、なおかつずっと大好きな曲だと言っていたので、イントロの時点でとんでもなくテンションが上がっていました。この曲になると、なんでかわからないのですが、ずっと小久保柚乃(ゆのぴ)を見てしまいました。イタズラ感あふれる歌詞がゆのぴと無意識に結びついているからかもしれません。サビの振り、真似しやすい上にステージ上の躍動感がすごくて大好きです。こちら側の熱気も凄くて、ライブ全体のラストスパート感を感じました。

十二曲目、「シンガロン・シンガソン」。何気にこれも初回収でした。「イート・ザ・大目玉」に引き続き、腕を上下左右に大きく動かす振りが多く、会場の一体感も失われることなくラストに向かってどんどん上昇していきました。
「バイバイなんて言いたくないね」。本当にその通りです。この夢のようなライブが永遠に続けば良いのに。
「いつまでだって夢を見ていいんです」。ありがとう!!!!この夢のようなライブのことをずっと思い出して生きていきます。

曲が終わり、さらばが出てきます。

東ブクロ「モニターで見てたけど、あれ、にゃんこスターの振りやってんねんな」

出てきて早々放たれたこの言葉に、ブクロの人柄というか性格が凝縮されているように思います。「EBINOMICS」でのにゃんこスターダンスに気づいて、その上自分から言及してくれるなんて。仮にエビ中側が私の深読み通り意図していたとしても、さらば側が気づかなければ(ちゃんと見ていなければ)意味がありません。こういうところのブクロの生真面目さが、なんだかんだ許されてしまうブクロの人柄を象徴しているように思います。また、森田は上から見ていて、ブクロはモニターからと、別々に見ているのもめちゃくちゃさらばです。


2024/10/25 修正とそれに伴う追記:修正前には、上のブクロの発言とともに

森田「上から見てたよ、まあほぼ寝てるみたいなもんやったけど」

という発言を取り上げ、

森田が上から見ているのはこちらからも見えましたし、わざわざ「寝てるみたいなもん」とか言うのも照れ隠しでしかありません。

という分析をしていたのですが、これに対してコメントにて、「『寝てるみたいなもん』ではなく『出てるみたいなもん』ではないか」という趣旨のご指摘をいただきました。コーさん、ありがとうございます。今となっては確かめようがない儚さがまたこのライブの味ですが、それはそれとして、多分コーさんのご指摘が正しそうです。
私としては「寝てる」という発言をわざわざ言うことの意味がどうしてもわからず、その理屈づけを試みたわけですが、「出てるみたいなもん」だったのだとするならば、そこまでの文脈に沿っています。見てるだけのはずだったのに何度も会話させられたことについて、森田は「出てるみたいなもん」と表現したのだ、と。絶対こっちじゃないですか!!!ようやく自分の中でも森田の発言が腑に落ちました。投稿しなかったらこの可能性に思い至れなかったかもしれないと思うと怖くて仕方ないです。こういった交流が生まれると、文章に残して良かったなとしみじみ思います。
(追記終)


さらばに関してここで言及した全ての要素が、続いての曲、大トリへの伏線になっています。ついに正真正銘、ラスト曲。

十三曲目、「永遠に中学生」。
「永中」で終わるライブは神。そう聞いたことがあります。そして、今回もそれは正しかったようです。
今までのアーティストとの対バンの際は、トリでコラボ歌唱をしても違和感ありませんが、さらばとなると話は違います。さらばが参加できて、尚且つこのライブを〆るのにふさわしい曲。この曲が唯一解としか思えません。楽曲の幅が広いことがこんなふうに作用するとは。ヒャダ曲でケンカを売る(買う)ところから始まり、ヒャダ曲を共に歌って終わる形になりました。

本来、この曲を聴くと私はなんだか寂しくなって涙ぐんでしまうのですが、今回は、イントロの時点ですでに爆笑しています。さらばが「永中」でセンターを飾っているという異常空間。森田が音楽にノるときのあの独特のぎこちない感じ。どんなに風邪にうなされながら見る夢だとしても、こんな光景を想像するのは不可能というものです。現実は、夢を遥かに超えてくる。

(このコントみたいな感じで終始森田は体を揺らしていましたw)

「〇〇だって中学生」の部分を真山さんが歌詞改変したことにより、さらばの二人とマネージャーのヤマネさんが公式に中学生認定されました。歌詞をガン見してニヤニヤしながら低音で歌うさらば。照れていて可愛すぎました。そう思うと、森田がコントみたいに体を揺らしているのも一種の照れ隠しである、という深読みも可能です。それに比べると、ブクロは照れてはいるものの、まだ真面目に歌っていました。これは、ブクロの生真面目さの表れと見ることが可能です。さらばの各々の個性がここでも表れている。

さて「永中」といえば、途中で肩を組むパートがあります。これはファン側もやる雰囲気で、新宿フリラのときは人見知りを発揮してしまい失敗したのですが、今回は隣が妹だったのもあってちゃんと肩を組めました。この肩を組むパートでのさらばはこんな感じでした(2,3,4枚目)。

12人が繋がるわけではない。そう、森田とブクロは肩を組まないのです。これはめちゃくちゃ解釈一致というか、なんかグッときました。まあマイクを持つ手がたまたまそうなってしまったというのはあると思うんですが、それにしてももっと近寄ってもいいはずです。さらばは、そういうんじゃないんですよね。だからと言って不仲とかそういうのとは真逆です。これは男性コンビ芸人特有の(というかむしろ非芸能界における一般的な?)距離感です。冷静に考えて、アイドル現場的な感覚から言えば、肩なんてなんぼでも組めば良いじゃないですか。これが男性アイドルだったらこんなことはありえないわけで。ここにも芸人とコラボしたからこその異種格闘技性が表れています。

全員が名前を言っていくところも、「東ブクロでした〜」「森田哲矢でした〜」が挟まりますし、「次の登校日いつでしょね」もブクロの低音がしっかり響いていました。ラスサビ前には、さらば二人で渾身の「ありがとっ」が放たれます。ちゃんと可愛いのが腹立ちます。ゆのぴと森田の「ちょっとだけよ〜」(上の6枚目)は森田が言うと下ネタか?と思いましたし、彩ちゃんとブクロの「おとうさ〜ん」(上の7枚目)も最高でした。こんなに寂しさと切なさを微塵も感じない「永中」があるんですね。ずっと笑いっぱなしでした。

これは後から真面目に考えてみて気づいたことなのですが、今回の「永遠に中学生」は、本家のそれがどうしても表現することのできない「男子中学生」という要素を補完するものであったと言えるのではないでしょうか。

エビ中(女子中学生)の前で下ネタを披露してゲラゲラ笑うさらば。「男優」はその意味でかなり男子中学生的ネタだったと言って良いと思います。
「永中」で照れながら歌うさらば。こんなの、合唱のときに真面目に歌わない男子中学生そのものじゃないですか。

本来「中学生」という概念が持つ思春期特有の汚くて下品な部分。その闇の部分を今回さらばが忖度せずにぶつけてきてくれたからこそ、説得力のあるリアルな「永遠に中学生」が実現されたのです。これは芸人という違う畑からの刺客だからこそ達成されたことです。そして、いつまでもくだらない下ネタで笑ってしまっているというそのこと自体が、さらばも、エビ中姉メンも、笑ってしまった客も含め、全員が永遠に中学生であることの証明になっています。人類皆私立恵比寿中学。この切り口での「永遠に中学生」の魅せ方は、おそらく今後どうやっても実現不可能なのではないでしょうか。そう思えるほどに、今回のさらばの動きは男子中学生性を付与するのに完璧すぎる立ち回りでした。あえて大袈裟に言えば、ある特殊な意味において、さらば青春の光は「永遠に中学生」という楽曲を完成させたのです。おそらく今後、誰も真似のできない一回限りのやり方で。

下校のベルが鳴り、曲が終わります。エンディングトークでは、美怜ちゃんはゆのぴを無理やりモルック仲間にしようとするパワハラwが行われました。そして、真山さんが本当にさらばのファンであること、そして、「裏さらば(さらばのサブチャンネル)」に出演したい旨が伝えられ、口約束ではありますが、さらば側も「ぜひ良ければ」のスタンスで応じてくれました。また、実はオファー自体は昨年にかけていたらしく、さらば側のスケジュール都合で今年になったそうで、本当に危なかったです。もし昨年にやっていたら、エビ中を知らない私は多分行っていなかったはずで、今年に入ってからその存在を知って発狂していたことでしょう。全ての運を使い果たした気分です。

そんなこんなで全てが終わり、演者がステージからはけていきます。去り際、森田の放った「ありがとっ(「永中」での言い方)」は震えました。最後までこっちの心を射抜いてくる。抜け目ないです。「ありがとっ」の瞬間だけ、間違いなくさらばはアイドルでした。


おまけ

Xにて、さらに二つほど衝撃がありました。

一見普通のポストですが、「ありがと!」となると話は変わってきます。現場に行っていない人には普通のポストに映り、現場に行った人だけがその真の意味を理解できるめちゃくちゃ粋なポストであることが、ここまで読んでいただいた方ならお分かりいただけると思います。森田は本当にこういうのが上手い。やられました。

そして、そこへのリプでのやり取り。

帰りの電車内でこれを見て大声を出しそうになりました。さらば側から「メインのほうで」と言っているということは、先ほどの口約束が社交辞令ではなかったということになります。
さらばの、あのメインチャンネルに、エビ中が出る?
ライブが成功するかどうかのギャンブルは大勝ちも大勝ちで幕を閉じましたが、それでもまだ私の夢のような時間は終わらないようです。


総括

まずは真山さん、本当にお疲れ様でした。真山さんのバラエティ力の強さを思い知った一ヶ月になりました。エビ中に対するオズワルド伊藤の言葉を借りれば、「もっと売れていい」です。本当にあとは売れるだけだ、というくらい力があると思います。これはエビ中全体にも言えることですが。

そしてまやあやみれの姉メン七五三トリオですが、改めて安定感と役割分担が神がかっているなと感じました。しっかりトークで落としてくる真山さんと、もはや何を喋っても面白い彩ちゃんと、ボケにもツッコミにも回れる美怜ちゃん。『vs さらば』のトーク部分はほぼこの三人が担っていたと言っても過言ではないと思います。この三人のトークライブを定期的にやってほしい。いや、トークライブと言わず、カホリコライブみたいに七五三ライブ本当にやりましょう。お願いします。

今回の三つの現場では、エビ中がアイドルとして求められている要素が全て異なっていたため、色々な側面からエビ中を楽しめて非常に充実したひと月になりました。言い換えればそれは、新たな視点でお笑いを見ることでもありました。今まではおまけくらいにしか思っていなかったお笑いにおけるアイドルの存在を、むしろそっちメインで見ることになろうとは。人生とはわからぬものです。私の中のエンタメの感受性はこのひと月で大幅に広がりました。エビ中を好きになってからは正直お笑いよりもエビ中に時間を割いていたのですが、それが回り回ってこんなお笑いに繋がるなんて。「予測不能な展開と過去に振り回されて舞う」とはこのような状態を指すのだと思います。

最後に。『vs さらば』で隣にいた妹ですが、そのさらに隣にはさらばのファンの方が一人で来ていました。妹曰く、「ebiture」のときに周りが立ち上がったのを見て慌てて立ち上がっていたようなので、本当にエビ中のことは知らないで来ていたのだと思います。でも、エビ中のライブ中もできる限りノったり、見よう見まねで振りコピしたりして、精一杯楽しんでいる様子でした。そんなさらばファンの姿を見て、妹はグッと来たらしく、「永中」のときはなんなら妹側から肩を組みに行っていました。エビ中女子高生ファンとさらば男性ファンが全ての垣根を越えて笑顔で肩を組む現場。ステージ上だけでなく、客席側にも、夢のような光景は広がっていたのです。人類皆、私立恵比寿中学。永遠に中学生。その標語がファミリーの内輪を飛び越えていく希望の萌芽を、確かに私は目にしました。


blue hour。青春の光。その喪失を示すのが『indigo hour』であるならば、「さらば青春の光」との邂逅はむしろ必然だったのです。

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