【進化する最強の3人】レアル・マドリー4-1バレンシアCF
前書きとスタメンとフォーメーション
今回は初めてラリーガの試合を振り返って見たいと思います。年明け1週間目の好カード、レアル・マドリーvsバレンシア。多分リーガ的にはこういうのが、プレミアで言うと前々回のアーセナル-シティに該当するパワーバランスのカードだと思う。
ホームチーム、レアル・マドリーはここまで首位を快走。
2013-2015まで率いた名将、カルロ・アンチェロッティが第二次政権を執る今季、ライバルバルセロナ、アトレティコ・マドリーの不調もあり、リーガでは珍しく、1月時点で頭一つ抜けた首位になっている。
アンチェロッティの今季始まる前の一つの悩みは中盤の構成だったと思う。ジネディーヌ・ジダンが築いた、最強の3枚、カゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース。3人、間違えなく今なおワールドクラス・トップオブトップだが、年齢は気になる。カゼミーロはまだ29歳だが、クロースは32歳、モドリッチに至っては36歳である。
が、アンチェロッティは今季、序盤こそフェデ・バルベルデ、また今季加入したエドゥアルド・カマヴィンガがスタートで出る試合があったものの、現在では完全に最強の3枚がスターターとして固定化された感がある。ラリーガが交代枠が5枚であることは、最強の3枚に恩恵を与えている気がする。
一方のバレンシアはここまで10位。前ヘタフェ指揮官、ホセ・ボルダラスを招へいした今季はいい意味でも悪い意味でもクラブが落ち着いたイメージがある。近年のバレンシアは4-4-2がベースだったし、それを引き継ぐ形で入れたのは良かったんじゃないかと思う。このクラブはとにかく毎年なにかしらがあるクラブなので、バルセロナ同様、まず落ち着いて基盤を作り、いるべき場所に戻ってきてほしいクラブである。
攻撃の中心は左サイド。ゴンサロ・ゲデス、ホセ・ガヤがこのチームのストロング。マドリーは不動の右SB、ダニ・カルバハルが不在でルーカス・バスケスが右SBに入っている。この日のバレンシアの勝機は、このサイドで勝負できるシーンが如何に作れるか?というところな気がした。
4-4を破るには
マドリーも基本、攻撃のストロングは今季躍進するヴィニシウス、マルコ・アセンシオがいるサイドである。お互いサイドがストロングであるということは認識の上、割られたくない中を塞ぎながらサイドの1対1で攻防するシーンが序盤目立った。
マドリーは守備時は4-1-4-1の形で、意識としては、ボールホルダーに1人はアクションを掛け、ミスを誘発し、ボールを回収したい。
バレンシアはユヌス・ムサの立ち位置が微妙であったものの、ベースは4-2-2のブロックを作り、入ってきたところを潰したい。
バレンシアはマドリーの4-1-4-1にクロース‐ギジャモン、モドリッチ-ヴァスで付かれ、保持しても逃げ場を失うと分かった前半早々から、ゴメス・ゲデスを裏に走らせるロングボールを使い始めた。逆に保持時4-4-2で構える相手に対し、後ろから組み立てていくマドリーは保持の時間が増えていった。
バレンシアは左から崩していこうと決めた中、マドリーとしては、バレンシアのライン間をどう崩し、どうゴールに繋げるか?が問になっていった。
まずマドリーが行ったことは、両SBの上り。
メンディもバスケスも相手の4-4レーンライン間まで上がり、アタッキングサードで勝負をさせる。同サイドのCBの配球で大外レーンでボールを付けたところから、オーバーラップで勝負していくか。はたまたクロース→バスケス(12分)、アセンシオ→メンディ(8分)のように対角線のロングボールで、空いた逆サイドバックに付けるか。
バスケス、メンディのオーバーラップからチャンスは作ったもののマドリーとして面倒だったのが相手の中盤両サイド、ゲデスとコスタがこの上りについてくること。サイドでの数的優位が然程作れなかったのは別の手段に移行した一因だった気がする。
15分過ぎた以降のマドリーは、攻撃時右の人と左の人を分けた感じがした。
右の人3人(バスケス・モドリッチ・アセンシオ)、左の人3人(メンディ・ヴィニシウス・ベンゼマ)といった具合で。左の方は補助的にクロースがサポートに出てくることもあったが、基本この左右3人で崩しゴール前まで迫っていく。シュートチャンスがあれば各自打つ、みたいな形でやり方を明確にした感じがした。
かと言って、左右で連動がないのかと言うとそういうわけではない。
18分、右の人・モドリッチが相手のトラップからボールを奪うと、左の人・ベンゼマへ。ベンゼマは完全に左の人というわけでなかったが、とりわけモドリッチが上がってくる+ヴィニシウスと攻めたいという点から、左寄りにプレーする機会が多くなった。
ライン間で受けたところから、左の人、ヴィニシウス・メンディも絡み、最後はメンディのクロス→中に入ったヴィニシウスのヘディングシュート。
得点にはならなかったが、この辺の攻撃の多彩さが徐々にマドリー優勢・バレンシア苦戦の流れを強めていった。
日程的問題(12日スーペルコバでエル・クラシコ。)もあり、バレンシアがHTで修正する前にリードして前半を終えたい。
25分頃からはカゼミーロの突撃が見え始めた。クロース・モドリッチを飛び越え29分はベンゼマの横まで走って行った。31分は同じく2人を飛び越え前線まで持ち上がる。バスケスのクロスに最後は自分自身で頭で合わせた。
40分はインターセプトから持ち上がり、最後はペナルティエリアで倒されPKゲット。ベンゼマが左隅に決めて、待望の先制点をゲットした。
中盤のトライアングルの形を変える。一見すると原型通りのクロース・モドリッチの2の方が枚数がいて攻めるにおいていいように思えるが、カゼミーロの突撃という1が相手のラインを破っていく。枚数だけじゃない破り方を最強の3枚は見せてくれた。
センター空けのポゼッション
後半スタートでビハインドチーム・バレンシアはメンバーチェンジを行わなかった。失点の40分から前半終了までの時間はある程度ディフェンスラインを高め、プレッシャーを掛けに出た。後半スタート後もギジャモン、ヴァスは出る回数が増えていった。
でもボールを失わないマドリー。後ろからの繋ぎでクロース・モドリッチは外に流れ、相手の真ん中2枚のプレッシャーから逃げていった。保持を高める動きが前半の4-4ラインを破るアンサーにも繋がっていった。
51分。モドリッチが右の大外に流れた所からである。大外に流れ、できたハーフスペースにバスケスが走りながらカゼミーロに受け流す。カゼミーロもモドリッチと同じように大外に流れながらムサ・ギジャモンの圧を受けながら空いたモドリッチへ。モドリッチへ受け流した所からインナーラップで走りこんだバスケスへモドリッチが通した。
メリーゴーランドのようにくるくる回り空いたバスケス。ここからベンゼマ→大外ピッチーニと1vs1のヴィニシウス へと渡り、最後はゴール前でベンゼマとワンツー。冷静に流し込んで2点目をゲットした。
ジダン政権で築いた伝家の宝刀・クロース、モドリッチをCB・SB間に落とすビルドアップ(IH落とし)。この試合はクロースは落ちるシーンがあったものの、基本モドリッチは外開きで受け、ビルドアップの逃げになるのに加え、バスケス・アセンシオにハーフスペースで受けさせ、左のヴィニシウスまで展開していくシーンを作っていた。
バレンシアが前の4をボール保持者へのアクションを強めたことで崩れやすくなっていたところを突いたモドリッチ、またモドリッチの動きを意味あるものにするカゼミーロのサポート。ヴィニシウス・ベンゼマの2人の活躍が目立つマドリーだが、そこには最強の3枚の活躍があってこそである。
59分、ムサのボールを奪ったクロースからアセンシオのシュート→こぼれ球をヴィニシウスで3点目。バレンシアとしては残念な形でゲームが決まってしまった。
65分、バレンシアは3枚替え。5枚替え可能なリーガでこそみたいな交代だが、この交代で投入された、デニス・チェリチェフが左サイドMF、ゲデスが右に回ることになった。戦術的な変更というよりも、単純にチェリチェフの適正的なものだと思う。
マドリーも70分、カゼミーロ→カマヴィンガ、モドリッチ→ダニ・セバーリョスを投入。中盤の3人のうち2枚を変えた。
このあと、76分、メンディのイージーなファールでPKをゲットし、一度はティボ・クルトワに止められるも、こぼれ球をゲデスが詰めなおし、ゲデスのゴールで1点返す。しかし反撃もここまで。88分にはメンディのクロスから最後はベンゼマで4-1。試合もこのまま終了した。
感想
マドリーの積み上げたものの強さを見せつけられたゲームだった。
多分ラリーガでのマドリーのホームゲームの前半は今日と同様、どれだけ手を施して点を取ることができるか、どんだけ引き出しを開けなきゃいけないのかという所が焦点になっているんだと思う。
そこで取れるか取れないか。取ってしまえば、IH落としのように、ゲームをコントロールできる術は、個々・チーム幾らでもある。
保持時はそんな感じだが、守備においてもチーム全体が落ち着いているように見えた。前述の通り、守備時は4-1-4-1だが、守備のカギを握るのも中盤3枚な気がした。中央は割らせない、外へ外へで、クロスが来てもはじき返す。今まではセルヒオ・ラモスというエアバトル最強のCBがおり、今季から加入したダヴィド・アラバはそこまでサイズがないので、不安視される声が多かったが、カゼミーロがうまいことそこはカバーしているように見える。
課題とすれば、カゼミーロ・モドリッチが替わった後、失点したように最強の3人が替わった後の守備。メンディのイージーなファールとはいえ、その前にクロスを上げさせるまでのカマヴィンガ、セバーリョスの守備は緩い。それまでであれば、入ってくる前にボールが取れる強度があった。
現状マドリーのベストイレブンはこの試合のスタメンから、バスケス→カルバハルくらいであろう。ジダン政権では、"エキーポ・べー"、所謂Bチームの層の厚さが半端なかった。
現状のエキーポ・べーを見るとロドリゴやカマヴィンガなど若手もいる一方で、マルセロ、エデン・アザール、ナチダョ・フェルナンデス、また現在怪我で離脱中のギャレス・ベイルと、20代後半、30代の選手が顔を揃える。
アザール以外はマドリーの3連覇を支えたメンバー。これからのシーズン佳境に差し掛かっていく中、エキーポ・べーの活躍は必須であろう。