【簡単な戦術分析をやってみたんだ】Arsenal1-2Man City
前書きとスタメンとフォーメーション
ホームチーム・アーセナルはエバートン戦(1-2)以降、公式戦5連勝中。しかも5試合全部複数得点、しかもしかも直近3試合はリーズ4-1、サンダーランド5-1、ノリッジ5-0と大勝中と、最高の形で2021年を締めた。
ポイントとしてはメンバーが固定化されたこと。
前線はここ数年エースだったオーバメヤンがコロナウイルス・プロトコルを破ったことから、規律違反でチームを外され、CFがラカゼットに完全に固定化された。また2列目も、左からマルティネッリ、ウーデゴール、サカが固まった。現状リザーブ扱いだが、エミール・スミスロウもリーグ4試合連続ゴールと、頗る調子がいい。
DFラインもGKから、シティ戦の5失点大敗以降スタメンに入ったアーロン・ラムズデールが正GKになった。また昨年入ったガブリエル・マガリャンイスと、今夏ブライトンから5,000万ポンドで加入したベンジャミン・ホワイトが完全に真ん中を固める形になった。そして右SBはラムズデールと同じタイミングから、日本代表・冨安健洋が固定化された。この日もここ数試合と同じスタメンになった。なお、監督のミケル・アルテタは29日コロナウイルス陽性でベンチから外れた。
アウェイチーム・マンチェスターシティはアーセナルに劣らないほど調子がいい。
ラポルテがDOGSOで退場となったCパレス戦以降、リーグ戦10連勝中。前節のブレントフォード戦こそ1-0と辛勝だったが、その前はレスター戦6-3、ニューカッスル戦4-0、リーズ戦7-0と、3試合合計17点というえげつない戦いをしている。
この試合のポイントは不動の右SB、カイル・ウォーカーのコンディション不良でベンチスタート、また試合前まで特にニュースはなかったが、左SBのジンチェンコ、前ならどこでもできるフィル・フォーデンがベンチ外となった。結果、両チームのスタメン・フォーメーションは以下の通りになる。なお、シティはこの試合前までの対アーセナル(A)は6戦6勝と、大得意である。
2つのアクションから前進を狙うシティ
シティは前述の通り、右SB、ウォーカーがベンチであり、10連勝中も右利きながらも左SBを主戦にしていたカンセロが前節から右SBに回っている。そのカンセロが移った左SBもジンチェンコがベンチ外、メンディは性的暴行容疑で今季これまで不在の為、本来CBの左利き、ナタン・アケが入った。
シティは5分のボールポゼッションから、ケヴィン・デブライネ(以下KDB)が左の大外レーンに流れ、スターリングと合わせ、2vs1で左サイドを攻めようとし始めた。スターリングは基本ピン留めで左に張っており、冨安もそこをマークする。
となればKDBを右のCMF・トーマスが付いていく。
であれば、画像で言うと右のハーフスペースが空いてくる。動き直しでKDBが貰うのか、ロドリがズレて受けて貰い、前に進んでいくか。
この流れは主にCBラポルテから、左SBアケに渡ったタイミングで起こった。ただアケはジンチェンコじゃないし、カンセロでもない。元は5分はKDBが降りたタイミング、7分はKDBが上記の流れで指差しでロドリもハーフスペースで受けようとしたが、アケからパスが出てこない。また後ろのパス回しからのやり直しとなり、前進できない形が目立った。
アーセナルもプレッシャーのかけ方は5失点した前回とは大きく改善され、プレッシャーは概ねマンツーマンで掛けていく。
徹底していた箇所はマルティネッリ‐カンセロの所とウーデゴールのロドリへの配球切り。マルティネッリがカンセロからの進行を切って、ラカゼットが真ん中から左にズレて、ルベン・ディアスをマークした。
アケの配球は前述の通りそこまで期待できないが、KDBも後ろの大外レーンに来ているので疎かにはしておけない。ラポルテを追いながら、アケも切る、一人二役を任された。
基本後ろの3枚でのパス回しがポゼッションの大枠を占め、なかなか前進ができない中、目立ったのはGKエデルソン・モラレスのビルドアップ参加だった。
エデルソンのビルドアップ貢献、また超ロングフィードが恐怖なのはプレミアファンならば全員周知のことだが、この日はCBの位置に上がりビルドアップに参加した。元イタリア代表で、現セリエAスペツィア・カルチョ監督のチアゴ・モッタがGKもポジションを離れビルドアップに参加する、「2-7-2」というシステムを提言していたが、それを思い出すようなビルドアップだった。
初めの実行は7分50秒~。14分にも同じシーンがあるが、今回は割愛する。
前述のアケがボールを出せず、再びラポルテにボールが戻ったシーン。ディアスが大外のレーンに開き、エデルソンが右CBの位置に入る。ディアスとパスを回し、ラカゼットに一人二役をさせ、エデルソン-ラカゼット、KDB-トーマス一瞬と、マークが一瞬遅れたところを綺麗に通した。KDBがワンタッチで頭でスターリングに繋ぎ、最後は富安に負けたが、シティがこの試合初めて後ろからのビルドアップでゴール前まで迫ったシーンだった。
しかし、マルティネッリ‐カンセロによる右サイドの停滞、左サイドもKDB+スターリングで崩そうとするも、スターリングが富安との1対1で引っかかる。前半は支配率67%も、枠内シュート0と、攻撃の停滞感を感じさせる内容だった。
マルティネッリの2本のシュート
一方のアーセナルは33%のポゼッションの中からチャンスを狙う。
基本ここ数試合、スタメンが固定化されたアーセナルは、ウーデゴールは右寄りに球を貰いに行く、左ではマルティネッリが幅を取り仕掛ける、スターリングのような形が多い。この試合のアーセナルも、マルティネッリの左からの仕掛けが目立った。(シュート数は両チーム最多の5本。)
シティは前述の通り、絶対的右SBウォーカーがコンディション不良でベンチスタート。カンセロが右SBに回った。カンセロもシティ入団時から考えればプレミアリーグにも慣れてきて、守備は良くなったが、ウォーカーの制圧感には劣る。
15分、ガブリエルがスターリングをエアバトルで制したところから。
シティはボールロストの鉄則、7秒プレスで嵌めに行くが、トーマス→富安が逃れる。これで前にKDB、マフレズはまだ前残りの状態である。ウーデゴール→トーマスと繋がり、KDBのカバーに来た、Bシウバを股抜きでかわし、左のマルティネッリに展開し、最後はエデルソンが凌ぎ、コーナーを獲得した。
38分、富安からラカゼットに楔が入ってから。ラカゼットにディアスが飛び出し潰しに掛かるが取れず。ウーデゴール+サカ-ラポルテ-アケという状況を右で作り、最後は左のバイタルで受けたマルティネッリのシュート。
ちなみに30分に、サカのゴールが決まるが、このアシストは左SBのキーラン・ティアニーのバイタルでのグラウンダークロスからである。
15分・30分共に、KDBの穴埋めにBシウバが本来のポジションにいないのは、今後各チーム、シティ攻略の糸口になるかもしれないと感じた。
また個人的に後半開始から、コンディション不良といえ右SBにウォーカーを入れると思っていたので、ペップ・グアルディオラが何も変えず、後半へ挑んだのは意外だった。
退場→サイド攻め→5-3-1
後半7分(52分)、左のCMグラニト・ジャカがB シウバへのファールでPKを返上する。スターリング・KDB、前半守備貢献の少なかった2人のプレスバックからボールを奪ったのがスタートになったのは実にシティらしい。
ハーフスペースでカンセロ→大外レーンマフレズ→ハーフスペースBシウバでポケットを突きPKゲット。最早何度も見たシティのチャンスメイク黄金パターンである。
その前のマルティネッリへのロドリのスライディング判定から前半以上にファンも選手もヒートアップしたアーセナル。得点の僅か40秒後、CBのガブリエルが2枚目のイエローで退場する。因みに1枚目は57分に貰っており、退場が59分なので約2分で2枚貰い退場となった。
アーセナルは62分にCBのロブ・ホールディングをウーデゴールに替えて投入した。4-4-1のブロックを作る。
シティは相手の退場以降、サイド攻めを徹底する。
63分、昨シーズン2列目からの飛び出しで得点を量産した、イルカイ・ギュンドアンをガブリエル・ジェズスに替えて投入する。クロスへの反応・ポゼッションの安定を狙った投入だと思う。69分にはカンセロが2本のクロスを放り込んだ。
シティのクロス攻めに対し、アーセナルは70分、ラカゼットに替えスミスロウを投入。ジャカに対し3本指を立て、3CBへの移動を指示した。
当然後ろ4-4-1の時と比べ、5-3-1の方が幅、また中の人数が増えるので、シティは70分以降、マフレズが迫った以外、エリア外からディアス・ラポルテのシュートと、ペナルティエリア内を閉ざされる時間が続いた。
84分のアーセナルのサカに替えたエルネニー投入の時点で、勝ち点0は無さそう、ただ1で終わりそうという、退場で逆に面倒になったという、よくある流れで終わるように見えた。
貫いたスタイル→ゴール
得点は92分、KDBのクロス→ディアス→ロドリで生まれた。
解いていくと、始めは90分。エデルソンがクロスをキャッチしたところからスタートしている。右サイドでカンセロがボールを運び、KDB→大外レーンのマフレズに。関心するのはPKを獲得したシーン同様、カンセロがインナーラップし、ポケットを狙っていることである。
結果マフレズからボールは出てこなかったが、ジャカがボールに食いつき気味であり、エルネニーも反応が一瞬遅れた為、出ていたらPK獲得時に近い状態になっていたかもしれない。
結果マフレズがハーフスペースに回り、カンセロが大外レーンでボールを受けた所でファールをゲット。ティアニーを誘ったうまい貰い方。このフリーキックによって前残りになったラポルテが得点のアシスト(シュートミス)をすることになる。
セカンドボールを拾い、再び右から狙いを定める。ハーフスペースカンセロ→大外レーンのKDBへ。アーセナルも一人少ない+ポケットを狙われている為、KDBにプレッシャーに行けない。ハイラインで裏が空いた所に突っ込んいったのは、伏兵・ロドリだった。
前半はウーデゴールの執拗なマンツーに合ったが、相手が5-3-1になった以降ボールタッチ37回と、チーム最多になったロドリ。3列目からの飛び出しでヒーローになった。
感想
PKと退場。サッカーの試合に取ってNo.1とNo.2に重い罰が勝つ流れだったアーセナルを大きく変えた。
アーセナルは冨安とティアニーがどこまでやれんのか?みたいな感じだったが、10人中10人が冨安とティアニーの勝ち!と言うくらいのハイ・パフォーマンスが、前進に成功して後もシティを苦しめ、60分以上「シティ劣勢」という流れにした。
前4枚の攻守に渡る活躍も本当に素晴らしかった。これまで、リヴァプールフロント3だけが、シティの最終ラインにプレッシャーを掛けられる、みたいな感じだったが、形ややり方は違えど、アーセナルの前4枚もシティに嫌な印象を与えたことは間違えない。これで直近のシティ戦の連敗はまたもストップならずだが、そう遠くない未来にストップはあるはず。
シティはベストメンバーではないが結果勝ち点3を積み上げた。
PK奪取以降のポケット狙いでも感じたが、人は違えどその立ち位置でやることが明確化されており、それをできる実行力が化け物すぎる。2点目も単純にセットプレーの残りだろ、とか思っていたらちゃんとアンカーに居た所から入ってくるロドリ、アンカーじゃない・・・
全部の試合を見ていないので、他の試合でもやっているのかもしれないが、エデルソンのCBでのビルドアップ参加など新たな発見もあった。苦しい試合でも貫くこと、新しいことを試すペップのシティはやっぱり面白い。
2022もオープニングゲームから新たな発見が生まれたことが嬉しかった。
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