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【矯正に費やした45分】マンチェスターユナイテッド0-1ウォルバーハンプトン

前書きとスタメンとフォーメーション


マンチェスターユナイテッドはオレ・グンナー・スールシャールをワトフォード戦1-4の敗戦解任。
クラブで長年中盤を支えた、マイケル・キャリックが暫定監督となり、公式戦2勝1分と、相手を考えればこれ以上ない最高の繋ぎを果たし、クラブを去った。
そしてその後任は、近年のサッカー界の新興勢力・レッドブル系列を作り上げた、ラルフ・ラングニックを今季終了まで監督、以降2年をコンサルタントとして、クラブに招へいした。
ラングニックになってからは3勝2分。パンデミックによる約2週間の活動停止などもあったというのもあるが、そこまで"レッドブル"感は出せていないように見える。
だが、ボールを失った後のトランジション、セカンドボールに複数人が反応する姿勢などは、スールシャールから、"意識"という意味では選手に変化が見えてきた。相手はウォルバーハンプトン(以下ウルヴス)、正直ラングニック就任以降一番強敵だ。

一方ウルヴスは夏にチャンピオンシップから戦ったヌーノ・エスピーリト・サントがスパーズ就任に伴い、ポルトガルの古豪・ベンフィカで監督、主にコーチを務めた、ブルーノ・マージを招へいした。
ここ数年のウルヴスは攻守のバランスがいい!強豪相手もシティに勝ったりポイント取れる!あとは下位に勝てるか?一皮剥けられるか?みたいな、10年前のスパーズみたいな扱いになってきた感がある。今季もパッと見そんな感じで試合前時点9位だが、とにかく点が取れない。
失点数はリーグ2位のチェルシーより2つも少ないが、得点13(試合前)は19位ニューカッスル以下と、とにかくおかしな成績を叩き出している。

両チームのスタメン・フォーメーションは以下の通り。
ユナイテッドB フェルナンデスがベンチに入り、2列目にジェイドン・サンチョと、メイソン・グリーンウッドを配置した。なお、最終ラインには半月板損傷の大怪我からリーグ戦712日ぶりにフィル・ジョーンズが復帰しスタメンとなった。
ウルヴスはパンデミックの影響で約2週間ぶりの試合となった。前節のチェルシー戦から、フォーメーションを352から343に。中盤の-1はレアンデル・デンドンケル、前線の+1はフランシスコ・トリンカオが入った。

スタメンとフォーメーション

噛み合わなさの矯正、サンチョの曖昧さ

まず前提として、ユナイテッドのフォーメーション・4-2-2-2はウルヴスの3-4-3に対して噛みあいが良いフォーメーションとは言えない。
下図は仮にウルヴスがボールを保持し、ユナイテッドが4-2-2-2でブロックを作った場合である。
3CBに対し、エディソン・カバーニ、クリスティアーノ・ロナウド2枚の2v3になる。
その後ろのユナイテッドの2列目は、ウルヴスの4枚に対し、2枚で対処することになる。相手のWBも見つつ、ウルヴス心臓的存在2枚、ジョアン・モウティーニョ、ルベン・ネヴェスにも気を配らなければいけない。
またアンカー2枚、スコット・マクトミネイ、ネマニャ・マティッチの脇も気になってくる。この位置にウルヴスのWGが来たらどうするか?は配置を変えても常に前半付きまとう問題であった。

本来の配置なら?
ウルヴスの心臓(モウティーニョ・ネヴェス)が空き、
逆にユナイテッドのアンカー脇が開いてくる。

結果ユナイテッドの出したアンサーはというと、3CBに対してはロナウドが見る、ほぼ"捨て"のような形になった。
逆に2列目は枚数を増やす。カバーニをCFから落とし相手2列目・特にネヴェスを見る役。マクトミネイを上げ、モウティーニョを見る役。これで2枚の見張り役は作れた。
でここで問題になるのは、グリーンウッドとサンチョの役割である。4-2-2-2であれば、相手の中盤4枚を見る形になるが、相手の心臓2枚は監視できている。
グリーンウッドは基本相手の左WB、フェルナンド・マルカルに付くのがメイン、場合によっては相手の左CB、ロマン・サイスに圧を掛けていくタスクを担った。
一方右サンチョのタスクが定まらない。相手右CB、マキシミリアン・キルマンに圧を掛けるのか?それともセメドを見るのか?どちらに圧を掛けるのでもなく、立ち位置も相手右WG、トリンカオのハーフスペースで貰うパスコースを切るわけでもない。4-2-2-2の立ち位置が頭にあるのか、サンチョの立ち位置は謎のままゲームは進み、前半、セメドからの攻め上がりを幾度となく使われた。

4-2-2-2の噛み合わなさをカバーニ・マクトミネイで埋めていく。
一方サンチョの役割が決まらず、前半大外レーンでセメドの侵入を幾度となく許した。

潰す3CB、PJの冴え

この試合、前半のユナイテッドの出来はそんなこんなでやたら言われている。特にシュート数のウルヴス14本に対し、ユナイテッドは4。これを見て、「ウルヴス優勢」と言わん人はいないであろう。
ウルヴス優勢の流れを作ったのは、何と言っても3CBの出来である。特にキルマン・コーディの潰しは完全に攻撃の芽を摘んでいた。サイスの出来も勿論2人に負けず劣らずなのは言うまでもない、パーフェクトな出来だった。

ウルヴスの守備構成としては、相手がディフェンシブサードで持つなら中盤センター2枚も前に出て、マクトミネイ・マティッチにもプレスに行こうかな、くらい。前3枚が持ち手に強烈なプレスを掛けることもないので、ミドルサードまでは楽に前進ができる。
ミドルサード以降は5-4-1(5-2-3)のブロックを敷いて構える形になる。
ただアタッキングサード・それ以降は後ろ5枚の所は3CB筆頭に潰しにいくよ、という感じになる。

ただこの試合のユナイテッドは全体のミス(特に保持時は中盤2枚が目立つ)が多すぎて、ミドルサードすらもまともに越えられない状態が続いていた。
そんな中、前半真ん中以降、活路を見出したのはCBジョーンズであった。
25分、ジョーンズが持ち、その右の大外レーンでワンビサカが張る。相手WGダニエル・ポデンセを引っ張ったところで、ハーフスペースでグリーンウッドが受ける。構造的には単純なものだが、30分にも、全く同様の形で前進に成功した。(シュートまでには至らなかったが)
逆に33分はポデンセがジョーンズにプレスに来たところで大外のワンビサカへ。このシーンもシュートは打てなかったが、エリア内まで侵入に成功した。
この試合は胸の痛みで欠場したハリー・マグワイア、コロナ陽性のヴィクトル・リンデロフが欠場であったが、復帰後、序列に変化があるかもしれないと思わせる好パフォーマンスであった。
しかし、固いウルヴス後ろ5枚、またミスが続くユナイテッド。ウルヴスもシュート14本を決めれず、前半はスコアレスで終わった。

25分のシーン。PJの持ち上がりがウルヴスの4枚のラインに混乱を与えた。

矯正その2 3-4-2-1、トラオレ

前半のユナイテッドは前述の通り、ウルヴス保持時の3-4-3に対し、4-2-2-2の噛み合いの悪さから、カバーニ下げ・マクトミネイ上げの4-1-4-1のような形で噛み合いの悪さの矯正を図った。が、サンチョの役割がハッキリしない。そのため、後半頭から、矯正その2を行う。
ベースのフォーメーションから、3-4-2-1に変更し、マンツーまでとは言わないが、配置としては、ほぼ相手に合わせ、それぞれの役割を明確にした。
マクトミネイの位置を下げ、マティッチの脇の部分の改善、グリーンウッドがモウティーニョ見張りを任された。
中でもサンチョは問題点・セメドの位置である左大外レーンでの張りを任された。

後半スタートの配置。
モウティーニョ見張りをマクトミネイ→グリーンウッド、
サンチョは左大外レーンでの張りの仕事が与えられた。

ユナイテッドとすれば、大外レーンは前半から相手のWBのオーバーラップのみが脅威であり、基本ポデンセもトリンカオも、WBに大外レーンを使わせ、自分たちはハーフスペースで受けようとするので、3CBにしても、サンチョ・ワンビサカが頑張ってくれれば裏抜けもさほど怖くない。

グリーンウッドに替わり、60分にブルーノ・フェルナンデスが投入。これにより、マクトミネイ‐フェルナンデスでの入れ替わりによる、ハーフスペースの活用が増え、65~70分で、ユナイテッドはシュート3本(内1本はクロスバー)を放つ活気ぷりを見せた。
ウルヴスも黙ってはいない。66分、トリンカオに替え切り札アダマ・トラオレを投入。トリンカオよりもルーク・ショーの裏、もしくは大外レーンの活用を任された。
結果、81分結果に結びつく。ネヴェスのスルーパスにトラオレがショーの裏を突きクロス。クロスこそクリアされたが、セカンドボールをモウティーニョがダイレクトでゴールに流し込んだ。

感想

ユナイテッドとして残念だったのが、やはりミスが多かったこと。とにかく細かいミスが多い。一つのミスが失点に直結したチェルシーvsリヴァプールなどを見ると、この試合くらいミスすると対上位は厳しいものがあるなと感じた。
配置転換してまずまず(前半比)うまく行った後半。4-2-2-2は諦めるのか。単純にこの試合の噛み合わなさのための応急処置なのか。次節の配置は割と注目である。

ウルヴスとしては、厳しい試合が続いた中で嬉しいAでのポイント3。ユナイテッドとはポイント3差の8位に。
この試合とにかく光ったのは3CBの潰しの強さ。失点がシティに次ぐ2番目の少なさなのは納得しかない。
気になったことは、ブルーノ・マージは試合後Skyのインタビューである。"The players understood the plan and we deserved the three points."(選手たちはプランを理解し、勝ち点3に値した。)とコメントした。
プランと言うと、やはり前半のサンチョ‐セメドなのかな~とは思う。
マルカルも含め、相手の2列目の脇から前進するというのがプランだったのかなと。ある意味ユナイテッドとしては、次節以降の宿題を与えられたような感じ。いずれにせよまだ6試合、ラングニックがどう変えていくのか、時間はまだまだかかりそうだ。


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