将棋ウォーズ初段になるまでに使う戦法を模索した話 前編

こんにちは、ボス猫丸です。
今回は戦法選びの話になります。

初段を目指す初心者の方や級位者の方は、

「いま自分が使用している戦法で初段までいけるのだろうか?」

「もっと自分にあった戦法があるんじゃないだろうか?」

と思われる方も少なくないんじゃないかなと思います。
なぜなら、私も初段を目指す上で散々同じようなことを悩んできたからです。
今回のお話が、そんな方達にとって何か参考になれば幸いです。

といっても今からするお話は、
・どの戦法が初段になる上で最適か。
・もっとも強い戦法はコレだ。
といったものではありません。

あくまで私が、
初段になるまでにどのようなことを考えながら戦法を選んできたか。
という体験記に近いお話になります。

長くなりますので、前後編でお送りする予定です。

石田流三間飛車の時代

まず将棋ウォーズを始めたばかりの私が最初に選んだ戦法が、石田流三間飛車です。

石田流三間飛車

選んだ理由は、形が琴線に触れたからです。
と、これだけ言ってもさすがに納得されないと思いますので、もっと詳しく説明します。

まず私は将棋ウォーズを本格的に始めるにあたり、ネットで『将棋 初心者 おすすめ戦法』の検索ワードでどんな戦法がおすすめされているのか調べました。

まず最初にぶち当たったのは、居飛車か振り飛車か。
私はここに特にこだわりがあったわけではないので、覚えることの少ない振り飛車の方がおすすめというどこかのサイトの意見を参考にしました。
よって振り飛車を選択。

その振り飛車のなかでも初心者におすすめされていたのが、
・中飛車
・角交換四間飛車
・石田流三間飛車
の三つだったと記憶しています。

おすすめされていた理由は、振り飛車側から主導権を持って戦える、かつ攻めやすい陣形であるから。

というわけでその三つの戦法が使われている、将棋放浪記の動画をいくつか見てきました。

そして――。

う、うつくしい……。

となったわけです。

付け加えるなら、左側が攻めの形で右側が守りの形であり、65歩〜74歩と突けばとりあえず攻めになりやすいというわかりやすさも魅力でした。
初心者の時だと全く意識してなかったですが、今思えば振り飛車にとって予め桂馬を跳ねているというのも大きなポイントですね。

さて、実際に石田流三間飛車の動画を参考に指してみました。

まぁー勝てる勝てる。
攻めがわかりやすく、ゴチャゴチャと駒を動かしていればとりあえず攻めが繋がりやすい。
石田流三間飛車は最高だぜッ!!
たまに来る棒金や右四間飛車の暴力から目を逸らしながら、「石田流三間飛車は将棋にて最強。これで初段まで一直線や」と息巻いていました。

そう、石田流は強い。強かったのです。
ある問題さえなければ――。

そう。
75歩突けない問題が、私の前に立ち塞がったのです。

こうなってしまえば、相手の飛車先を受けるためにも角を上がるしかありません。
そして相手から角道を開けられ、早石田のような乱戦が嫌いな私は泣く泣く角道を閉じる。

こうなってくるとただのノーマル三間飛車です。

ノーマル三間飛車


つまり石田流は、相手の駒組みによっては非常に組みづらくなる戦法だったのです。
もっと早く言ってよぉ…。

しかも石田流は先手番の戦法であるので、そもそも後手番ではさらに組みづらくなるという。

組めれば高勝率。
しかし組めるかどうかは相手次第。
組めないのであればノーマル三間飛車で戦うしかない。

私も、もちろん頑張りました。
78飛戦法を少し齧ってみたり。
ノーマル三間飛車の勉強を始めたり。
しかしノーマル三間飛車、というよりもノーマル振り飛車が私には難しく感じました。

相手の攻めを受け流し、さばく。
勉強する毎に感覚は少しずつ掴めてきましたが、元々私は石田流の美しい形と、明快な攻めに惹かれて戦法を選んだのです。
なんとなくコレじゃない感を感じていました。

ただ、当たり前ですがノーマル三間飛車も有力かつ強い戦法です。3級帯までは勉強の甲斐もあって、徐々に昇級への階段を登っていきました。

しかし2級に昇格した瞬間、それまでゆっくりと確実に上がっていった私の達成率の上昇がピタリと止まったのです。

理由はいくつもあります。
終盤で寄せ切れない。詰みが見えない。奇襲作戦の対応が難しい。相振りされたら試合終了。などなど。

そしてそのうちの一つに、私のノーマル三間飛車ではお相手の攻めを受け止め切れなくなった、という事実もありました。

初段に上がったからこそ言えますが、級位者帯では受けるより攻めた方が格段に勝ちやすいです。
なぜなら、攻めの場合は攻め筋のどれかが決まれば局面を有利にできるのに対して、受けは相手の攻め筋をほぼ全て読んだ上で受けなければ、受け漏らし相手から攻め切られるからです。

つまり読む量は、攻めより受けの方が圧倒的に多いのです。

私はよく受け間違いをします。
初段になった今でも受け間違いをします。いっぱいします。初段帯の中でも受けに関しては一番下手なのではないかと思っています。
そんな私が、まず相手の急戦を受け止めることが基本とされるノーマル振り飛車を使えばどうなるか。
自明の理でした。


やばボーズ流角交換四間飛車+右四間飛車の時代


三間飛車を使いながら、2級帯の壁に立ち往生してしまった私は考えます。

「もっと攻めやすく、定跡を覚えるのが楽な戦法はないだろうか」と。

三間飛車の定跡も勉強はしていましたが、当時の私にとっては覚えるパターンが多いと感じていました。
もっと覚えることが少なく、簡単に勝てる戦法があれば…。
そんな怠惰な思いを胸に、いろんな戦型の動画を漁り始めます。
そして私は、とある動画と出会いました。

攻める振り飛車チャンネル。
それはYouTubeを漁っていた時に偶然目に入った、動画投稿者であるうまさんがすごく楽しそうにやばボーズ流角交換四間飛車という戦法を指している動画だったのです。

やばボーズ流角交換四間飛車


最初は何気なく動画を見ていましたが、次第にワクワクしていったのを覚えています。
攻めがわかりやすい!
覚えることが少ない!
しかも勝ちやすい!!
それをうまさんが、視聴者に楽しそうに伝えてくるのです。

これだ。
私が探していた戦法は。
私の運命の相棒は、『お前』だったんだな――。

それから私は狂ったように攻める振り飛車チャンネルの、やばボーズ流が指されている動画を視聴しまくりました。

中でも特に嬉しかったのが定跡解説動画。
相手の駒組みに対しての仕掛け筋を、よく出るパターンに分けて解説してくれるのです。
それが級位者の私にとっては非常にわかりやすいものでした。

1〜2週間ほど動画で勉強し、試しに将棋クエストでいざ対局。

勝てる。
勝てる勝てる。
勝てるぞ!!??

私は飛び上がりました。
並行して五手詰めと寄せの手筋をひたすらやっていたこともあり、今までだとまるで歯が立たなかったような相手に勝てるようになったのです。

なんだこの戦法は。
今まで私が手も足も出なかった相手を、どんどん退けていく。
こんな強すぎる戦法が許されていいのか。
私は次第にやばボーズ流の魅力に取り憑かれていきました。

そうはいっても、やばボーズ流はあくまで角交換四間飛車の一種です。
つまり相手に角道を閉じられれば、やばボーズ流にはできません。それは困る。

そこで私はふと考えました。
待てよ…。
『ヤツ』がいるじゃないか。
相手が角道を閉じてきた時――66歩もしくは44歩と突いてきた時に発動できる最凶の戦法が。

級位者の振り飛車党にとっての天敵。
まさに数の暴力。
『ヤツ』に泣かされてきたことは数知れず。
歩く姿はまるで将棋界のガキ大将(偏見)。

そう。
右四間飛車が。

右四間飛車


右四間飛車の戦法パワーは、三間飛車時代に幾度も受けてきたので知っています。
攻めの方針もわかりやすく、見様見真似でもできそうだと判断しました。
何より角道を閉じる相手の多くが振り飛車党だったので、対抗形の形にできるのも大きかった。
これで相振りから逃げられる。

というわけで、私は右四間飛車を学ぶべくそらさんの右四間飛車チャンネルを狂ったように視聴し始めました。

そらさんの動画自体は、色んな戦法の動画を漁っていた時にゲラゲラ笑いながら視聴していましたので、右四間飛車を使うと決めた瞬間すぐに飛び付きましたね。
もし私が居飛車党であったなら、そらさんの動画をひたすら見ていたでしょう。おすすめです。

そうして二つの武器を手に入れ、将棋クエストで調整を終えた私は、再び将棋ウォーズへと足を踏み入れて行きました。

相手が角道を閉じてこなければやばボーズ流
相手が角道を閉じてくれば右四間飛車
相手から角道を閉じずに相振りにされた場合は試合終了。

たまに来る、そもそも角道を開けて来ない相手には四苦八苦しましたが、達成率80パーセントまでは一気に爆走。
さすがに昇級間近になるとお相手も強くなり苦戦も増えましたが、それでも勢いでそのまま1級へと滑り込みました。
1級昇格戦はまさかの試合開始と共に通信不良で勝利。

さて。
やばボーズ流を覚えて2級帯を一気に駆け上がった私は思います。
「やばボーズ流は将棋にて最強。このまま初段まで一直線や」と。
この時の私は、目の前に立ち塞がる現実が見えていなかったのです。

今から足を踏み入れる、将棋ウォーズの段級分布において最も人数が多いとされる魔境。
初段という光を目指し、多くの者がもがき苦しむ蠱毒の壺。
1級帯という地獄を。


次回

棋神「お前が強いのではない。ただやばボーズ流が強かっただけなのじゃ」

我流のやばボーズ流では通用しない!?
押し負ける序盤。
手筋一発で跳ね返される中盤。
立ち塞がる強者になぎ倒される日々。

「私に初段は無理なんだろうか」
諦めかけたその時、救世主たる『アイツ』が舞い降りる。

中飛車「待たせたな」

後編へ続く。

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