0711 「死にたい夜にかぎって」みてん

眠れん。毎日3時間くらいしか寝れんのをかれこれ3週間くらい続けてる気がする。土日にどかっと一日15時間くらい寝てるから、そこで帳尻が合ってるんやろうけど、ちょっと自分が心配になる。たぶん眠れん原因は一日家で仕事してたりして元気なまま夜が来てしまうからやと思う。体力がバチバチに余りまくってるのを感じる。

こないだ友達の家で飲んでるときに「死にたい夜にかぎって」の話になったから、それを観た。本はだいぶ前に読んでめっちゃ好きな話で、こういうどうしよもない恋愛を重ねてる男の中のさらに1ランク上におるスタープレーヤーって、どの時代にもおるんやなあって関心した。

優しくて冴えない、子供の頃の家庭環境に問題がある男が主人公で、女の子ははつらつとした、でも鬱(になる)の子。減薬中の彼女に首を締められながら、それをポイントカードに記録をつけて、10個溜まったら外食、20個なら温泉…とかなにもかもを彼女とのものに還元しようとする、歪やけど果てしなく愛が深い話。お父さんが光石研で渋かったり、全裸で地べたを這いずる裸の安達ゆみが見れたり、わりと想像以上にいいドラマだった。

舞台は沼袋。事実やからもちろんやけど、沼袋ってとこがめちゃくちゃリアルに感じた。男は作家志望で彼女はミュージシャン志望、でも二人とも売れてなくて金もないアルバイト漬けの日々…みたいな。中野に行ったりすると、そういうカップルが無数におる。貧乏で、別に貧乏でいいとも思ってないけどその楽しみ方を知ってて、夢もなかば諦めがちなとこあるけど会社員になるような選び方はしない。夏休みみたいな毎日を過ごしながら一つのベッド、そう広くない部屋で日中からセックスして、その社会とのあわいにいる居心地の悪さにたまに苦しまされる。みたいな。すべてがだらしないけど人間的には剥き身で、ちょっと羨ましくなるような感じがある。別れた彼女が新しい彼氏と沼袋に移り住んできて、新しい彼氏と仲良くなる、みたいなことも全部、めっちゃ想像の沼袋ときれいに一致する。漫画かよ!って言いたくなるけど、人生には漫画以上のことが平気で起きてるよな、っていうのを再確認させてくれた。

不幸に鈍感でなにもかもを優しさだけで包み込んでしまう悲しいモンスターの話。テクニックとかじゃない、ただ愛の一本槍で最後まで貫き通すその姿勢に、最後泣いてしまう。仕事柄、年齢とかキャリアとかスキルとか、そういうふうに人生を設計していくだけの考え方を見聞きしているばかりに、余計こういう生々しい人生の理不尽さが、そうだよなあ、と思わせてくれる。(別に似たような経験したこと一個もないけど)

この作者の爪切男って人を近くのラーメン屋で見かけたことがある。二席しかないテーブル席に、女の人と一緒だった。女の人は、カッスカスのラジオから聞こえてくるラジオを目を閉じて聞いていて(ラーメン屋で)、上下ジャストサイズの小綺麗なジャージで異彩を放ってた。(部屋着じゃなさそうなのが不思議だった)爪切男はそれを待つでもなく、ラーメン屋の店主と二、三言葉を交わしながら、ただじっと時間が過ぎるのを待っていた。それを見たとき、本としては女に振り回される人生は終わったように見えるんやけど、こうやって脈々と、まさに今目の前で起きてる瞬間まで続いている、続いていくもんなんやなと思った。その意識しない一貫した姿勢に、作家ってやっぱすげえなあと思ったことを覚えてる。

あと「火花」でも流れてたけど、この斉藤和義の曲は、どうしようもなく悲しむ男たちに手を差し伸べる曲やとおもう。高架下とか、高円寺駅前の公園の地べたとか、汚い風景と、それとまったく関係ない顔でいる空に浮かんだ、うすい都会の星が見える。遠くから缶ビールの空き缶が転がる音とトラックの通る音が聞こえるような、これまたどうしようもない時間が思い浮かぶ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?