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モブであるという誇り 『YOUR/MY Love letter』 感想

アルストロメリアのイベント、「YOUR/MY Love letter」が始まった。エイプリルフールのコミュと同時実装するんじゃないよ。こんな名シナリオをさ。

単体で見るシナリオとしては個人的に一番良かった。単体で見る、というのは例えばストレイのイベントのような、他のシナリオやコミュを知っている前提で描かれているものとは違い、予備知識的なものが無くても大丈夫、という意味で。ヴァイオレット・エヴァーガーデンの10話みたいな感じ。

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アルストの「薄桃色にこんがらがって」ではボロボロ泣いたのに対し、今回のイベントでは気づいたら泣いてた、みたいな感じだった。

このシナリオを読んで、何か込み上げてくるような感覚になったのでその思いが冷めないうちに感想を書き書きする。


アルストロメリアがいなくても世界はまわる

今回のシナリオは、モブに焦点も当たってるという話なのでアルストのボイスも少なく、人によっては評価は微妙なものになるかもしれない。ただ、これまでのシャニマスについてきてるもの好きなP達なら、おそらく満場一致で「ついにやりやがったな」という感想がまず出てくると思われる。そしてそう思った奴らは最初ずっとニヤニヤしながら読んでたに違いない。分かるよ。

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私は最初ずっと笑いながら読んでた。こんなにボイスも立ち絵もないシナリオは流石すぎる、と思って。今回でいう銀之助のようにアイドルをしっかり認知してなくても世界は動いてる、という描写があるのはかなり挑戦的なものになってる。

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アイドル育成ゲームにおいて、モブの役割は「叩く」か「推す」しかないと思っていた。この前のイルミネのシナリオイベント『はこぶものたち』はそれが顕著に出ている。言い換えれば敵か味方か、みたいな。モブだとしても物語においてはそれなりにスパイス的な役割がある。しかし、そのどちらにも属さない銀之助のような存在にも焦点を当てたのは、極端な話、アイドルがいてもいなくてもいい、と言ってるようなもの。
言ってしまえば今回のイベントは、どのユニットがやっても成立はする。アルストロメリアである必要はない。イルミネだってお便りは一枚一枚大切に読むだろうし、アンティーカも裏方のスタッフの人達のことを覚えたりするだろう。コンビニの店内放送はむしろ放クラだろと思ったりもする。てっきり「合宿免許WAO!」って智代子が言ってるもんだと。

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彼にとっては大崎甘奈もただの『高校生くらいの子』

このアルストロメリアでなくてもいい、という尖った軸は大事で、劇的なものではない、普遍的なものを描いているシナリオだからこそ、読み手として受け取ったものはデカかった。特に人前に出るような趣味や仕事をしてない、所謂名もなき人間には深く刺さるものがあったと思う。

プレイヤーがプロデューサーとして、アイドル達の成長を見守る、支えるという物語の中でも、全くの蚊帳の外で生きてる人間もいる。『兄やん』もそう。シャニマスの世界だって、私たちの生きる世界とそう変わらない、そういうありのままの世界だ。そのありのままの世界の中で何かがきっかけになって変わった人たちがいて、今回のシナリオでは、その何かがたまたまアルストロメリアだったというだけの話。

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『スタッフのみなさん』の一人。千雪は慌てるが、青年側は全く気にしていない。覚えてもらえなくても、それは当たり前だから。

シャニマスが描く"リアル"は4年経つとこうなるのか。凄い。

また、リアルなのはシナリオの構造的な部分だけではない。

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「すん…すん」って泣く29歳高校教師。萌えキャラか?

相変わらずこういうオタクの描写が巧みだし、

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社会的に自分が恥ずかしく映ってしまうからと思い込んで、何かしら理由をつける自己保身もリアル。

私も中学生くらいの頃に、"これは罰ゲームで買わされてる"という顔をしながら『ToLOVEるダークネス』を買ったことがある。勿論大嘘で、120%自分のために買った。ナナが好きで。



それでも生きることは劇的だ

勿論モブにも役割はあるが、主人公の輝きの方が強すぎて、影になってしまう。そういう風に、焦点を当てられる人間は必然と絞られる。全人類一人一人のドキュメンタリーなんて撮ってたらキリがない。そのモブの代弁者と言えるのがunknown。ネガティブな言葉を並べて、影で生きている名前のない誰かの集合体のような存在。

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私自身もこのunknownに該当する人間だ。だからunknownの言葉に思い当たる節がありすぎたせいで、その言葉を晴らしていくシナリオの流れに泣かされてしまった。

※自語り

私が明確に自分をunknownだと自覚したのは浪人した時。一人孤独に勉強をして、メンタルがギリギリの状態で日々を過ごしていた。そんな日々が続く中、ふと同級生のインスタを覗いた時、カップルで旅行に行っただの、フェスに行っただの、ベタベタな大学生のストーリーが散見され、私のメンタルは完全に崩壊した。マジで見なければ良かった。机に向かうたび、あああいつは今頃彼女とよろしくやってんだな、とか海外旅行してんだな、みたいな被害妄想的なノイズが止まなかった。当時病院行ってたら薬貰えたぐらいやばかったと思う。その程度のメンタルで浪人するな、というのはごもっともで、予備校の周りをあてもなく3時間ぐらい散歩していた時は本当にどうかしていたと思う。そんなボロボロの状態で受験して上手くいくわけがなく、結局第3志望ぐらいの大学に進学することになった。大学で友達ができてからはだいぶ楽になったが、この1年間の浪人生活は私の精神をフェイタリティするには十分な期間だった。

結局のところ、アイドルでもなんでもない我々unknownは、影に生きるモブでしかない。

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読んでいる時ゾクっとした。俺すぎて。


なんてことは無かった。


そんなモブであった彼ら/彼女らの名前が表示され、灰色だった彼ら/彼女らに色がつく演出。彼ら/彼女らは、モブであっても決して村人Aのような名前な訳ではなく、かといって「太郎」のようなありきたりなものでもなく、親の願いが込められた大切な名前を一人一人持っている。個体を識別するためでもない、誰かの陰になるためでもない、自分だけの名前がある。

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父から娘への愛。ありきたりなものに映ってみえるけど2人にとってはそうじゃない。

この演出が出たと同時に、昔親に聞いた私の名前の由来を思い出した。個性的な由来でもなく、ありきたりなものではあったが、この名前を授かったことにはちゃんと意味がある。決して私の名前は一般人Aなどの記号的なものではない。ここで私は完全にunknownと同一になった気がした。

unknownに該当する私のような人間にとって、このシナリオがまさかここまで心にくるものだとは思わなかった。まるでシャニマスが私を題材にドキュメンタリーを描いてくれたようなもので、モブ達は皆名前も役職も性別も全く違っていたのに、自分のことのように感じた。

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なので、シャニPの言葉ないしシャニマスというコンテンツ自体が自分のことを受け入れてくれた気がして、自然と泣いてしまった。悲しい、とか嬉しいという感情ではなく、なんというかこう…抱きしめられたみたいな…?こんな感情で泣かされることってあるんだって思った。


シナリオを読んでて、何故か『めだかボックス』を思い出した。最初から最後まで全部覚えてはいないが、強く印象に残ってる言葉がある。主人公黒神めだかが第一話(箱)の冒頭で放った台詞だ。

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「世界は平凡か?未来は退屈か?現実は適当か?
安心しろ それでも生きることは劇的だ!」

当時読んだ印象としては「う〜ん…」って感じだったが、大人になると心に刺さってくる。誰もが誰かにとってのunknownであり、unknownではない。考えてみれば当たり前のことを、システム上モブが存在する「物語」という形の中で描いている。モブだとか主人公だとか、そういう「キャラクター」に囚われた超絶かわいい安心院さんにもめだかちゃんはこの台詞を放って更生させたりするが、詳しくは読んで欲しい。

とにかく、何も起きない人生だからと言って自分で自分のことを退屈にしてしまうのはあまりにも寂しいもの。実際生きてるだけでめちゃくちゃ偉い。凄い。働いたり勉強したり遊んだりできるなんて。こんな凄いことないよ。それを肯定しない社会がおかしいだけ。そう思わせてくれるほど黒神めだかの言葉は強かった。今回のシナリオは黒神めだかを別視点で見たモブの話とも言える。いや言えないかもしれない。
どちらにせよ、私にはこの言葉を連想させるほどの強いメッセージを受け取った。生きているということは物語じゃないから、自分らしく生きなきゃ。

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という感じで、今回のシナリオは本当に凄かった。めちゃくちゃ壮大な『肯定』の話だった。今までのシナリオがBtoC的な感じだったのに対し、今回はBtoB、CtoC…みたいな、誰もが同じ土俵に足をつけてるような感覚で、自然と共感してしまうような構造だった。シャニマスを知らない人にも読ませたくなるシナリオ第一位になったかも。

これからはunknownであることに誇りを持って生きようかな。

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ありがとうシャイニーカラーズ …



あとちょっとだけ触れるとエイプリルフールも良かった。怪盗283の演技でゾクっとしたり、死体を検死する霧子が見れたりなど、2次創作で見たことあるやつが続々と出てきて非常に満足した。


…。







おい桑山千雪!

シャニマスの運営は桑山千雪をどうしたいんだよ。触れずにはいられないだろこれ。#こじ開けるじゃ飽き足らず、めちゃくちゃクズの犯罪者になって…。今年はもう千雪イヤーだろこれ。今年の流行語は「桑山千雪」という概念でいこう。

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クズすぎて笑っちゃった。Y/MLLの千雪は何処へ。

今回の桑山千雪を見て、いろいろ疑問に思っていた彼女のリプも謎が解けた。なぜ彼女は「チュ チュ チュ」と3回刺したのか。一度の注射で3回も指す必要などない。そして、「終わる」とは何を意味しているのか。

これは3回の注射を一度にするというわけではなく、3人分の注射をする、と解釈すれば理屈が通る。つまりこのリプは、

チュ(桑山千雪)   チュ(和泉愛依)   チュ(弟子)

(間抜けな探偵達が私のシナリオ通りに踊らされることも知らずに真相を暴いた、と偽の勝利を)歌ってるあいだにチュって、(私たちがアンプルを使ってしまえば、探偵達は)終わっちゃいますよ♪

という風に読み解くことができる。

リプライパーティー…これがまさか伏線だったとはね。


冗談はさておき、狡猾な犯罪者桑山千雪を追うあさふゆ探偵事務所の話を読みたいんですけど。

愛依の一周忌になって酒飲めるようになった冬優子がやけ酒してあさひがそっと毛布をかける、あさひの成長と冬優子の弱さが見えるエピソードとか、桑山千雪の弟が出てきて真相が明らかになるのか…?みたいな匂わせがある劇場版とかはどこで読めるんです?もしかして各自で妄想するしかないのか。そんな殺生な。



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