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短編小説『特殊詐欺』
ここは東京のビル群の日影。
世界に誇るその巨大都市は、その発展を誇るかのように所狭しと天に伸びる華やかに輝くビル群を育てるが、その代わりに光の届かない影を落とす。
俺達は、その影のオフィスで、日夜うまいことやるために片っ端から電話をかける。とにかく反応がある相手にあたるまでカケコが総当たりする。
そう俺達はいわゆる「オレオレ詐欺犯罪集団」だ。
罪悪感?
はは、国の税金だって無理矢理取られて、関係ない偉いさんの懐にも入るじゃねーか。
世の中そんなもんなんだよ!
さて、組織もデカくなり表向きはまるで株式会社みてーだ。
俺はそこのボスをしている。
部下も多くなって構成員は数十名だ。
デカくなったもんだぜ。
プルル!
お、電話だ。これは犯罪用に使う特別な電話。そこに着信とは珍しい。
ピッ
「誰だ?」
「すみません!大事な金を輸送中に事故を起こしてしまいました!どうすれば良いですか?」
部下からの電話だった。
「なに?トラブっただと?いま警察に世話になるのはまずい。被害者はいるのか?」
「います。」
俺は爪を噛みながら、なんとか躱す方法を考えた。
「被害者が警察に被害届けを出したら自分も逮捕されてしまいます。」
「ちっ!仕方ないその被害者をうまく丸め混んで示談ですませろ!金ならある。」
電話を切った。警察が介入すれば組織にもアヤがつく可能性が高い。ここは穏便にすませよう。必要経費みたいなもんだ。
プルル。
再び部下からだ。
「相手は120万程度で示談にのるそうです。」
「は、たった120か安いもんだ。わかったすぐに金は持っていく」
電話を切った。
すると別室のカケコを統括するリーダー格の部下が来てこう言った。
「ボス!やりました。事故を装って示談金として120万せしめてやる段取りがつきましたぜ!チョロいもんです笑」