ショート小説【透明階段】
今、僕は学校の屋上の端に立っているところ。
飛び降り自殺をしようとしているところだ。
学校の成績は悪くなかった。
いじめられてる訳でもなかった。
ただモブな存在で孤独だった。
どうせ、空気のように無個性で、存在感のない自分には友達と呼べる本当の友達はいない。
ゲームの中でも主人公になれない自分が死んだって悲しむヤツなんかいないんだ。
この先もずっとずっと孤独な日常を過ごすなんて耐えられない。
そんな人生に嫌気がさして、、、、
ただそれだけで死のうと思った。
死ぬ理由としては、とても簡単で馬鹿げている。
自分でもわかっているはずなのに、僕は屋上から空中へ一歩踏み出した。
カツン!
僕は落ちなかった。
どういうわけか、今空に立っている。
硬い空気の上に立っている。
「なんだこれ?」
足で何度も踏む。硬い空気を踏んでみる。、、、、、どうやら見えないガラスの道のようなものがあるらしい。
恐る恐る道を少し進んでみた。
どこまで繋がっているのだろうか?
次に道に幅があるのかを確かめた。
左右を探りながら少しづつ足で確かめた。
「うぁ!!」
どうやらその見えない道には幅があり、一歩間違えば落ちて死んでしまうところだった。
「あ、危なかったぁ」
「あれ?危なかった?」
落ちて死ぬ予定だったのに、落ちなくて安心している自分。
いままでにないくらい笑いが込み上げてきた。
なんだかすごい笑えるな!
孤独な自分でも、こんな愉快な気持ちになれるんだな。
学校の屋上から離れ校庭の上から、下を眺める。
生徒や先生達が見える。
「おーい!!見てよ!コレ!!すげぇよ!」
大声で呼んでみた。
モブな自分がはじめて特別になれたような爽快感を感じた。
生徒や先生達が驚いた様子で校庭に出てきた。
「はははっ!なぁこっちだよ!上!上!上見てみ!」
「下じゃねーよこっちだよ!」
「どこ見てんだよ!俺はここだよ!」
でも、心の中では、薄々わかっていたやっぱりと思えることのとおりになった。
集まってきた生徒と先生の真ん中には、屋上から落ちたもう一人の自分が横たわっていたのだ。
自分のために泣いている生徒が何人もいた。
それは友達だった。
孤独ではなかった。
間違っていた。
「なぁ、、ごめん、、、おれ、、、もう一度だけ生きてみたいよ!」
雨が降りはじめた。
雨は身体を下に通り抜け、横たわったもう一人の自分と友人達を濡らした。
道の先は階段となり天に向かっていた。
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