いままでもかわいいと思っていたけれど
だいすきな季節がやってきた。
一年の中で 秋〜クリスマスにかけての季節がいちばんすきだ。
市場に行くと 季節の移ろいの速さに毎回ハッとする。
気づいたらクリスマスの花材が出始めているではないか。わたしの足元は つい先週までビーサンだったのに。(骨折した小指が痛くて 靴が履けなかったため)
市場の方に 「足はもう良くなった?靴履けるようになったということは、だいぶ良くなったってことかな?寒くなる前によかったね〜。」と声をかけられた。
自分も こういう何気ないやさしい言葉をかけれる人間でありたいと思った、そんな秋口。
秋はバラがきれいな季節です。(唐突)
いままでもかわいいと思っていたけれど。いまさら、やっぱりかわいいと思わされるバラ。
夏には小ぶりだったバラたちも 見事な大輪を咲かせるようになり、出回る品種も増えてきた。
やっぱりきれいだなぁ。どの品種を見ても、そう思う。
ブライダルの装花を長年やってきた中で、打ち合わせをしていると、お客さんによく言われる言葉があった。
「バラ、苦手なんですよね。バラ以外のお花でお願いします。」
(中には「花?花なんて要りません。」という暴力的な言葉を吐き捨てる人もいた。価値観はそれぞれなのでもちろん仕方ないこと。すべての人に花を好きになって欲しいとは思いませんが、わたしはチベットスナギツネの目をしているかもしれません。)
そっかぁ...。いまの季節かわいいバラ、たくさんあるのになぁ。似合いそうなのになぁ。とわたしはお客さんに気づかれないように肩を落としてしまう。
バラを毛嫌いする人が思いの外多かった。(菊も葬儀を連想する人が多く、毛嫌いされることが多かった)
好みもあるから、仕方ない。
ただ
こんなにかわいいんだから!!!と声を大にして、わたしは言いたい。
バラは種類が豊富で、発色の良いものから、くすみカラーのおしゃれなもの、変わり咲き、八重咲き、一重咲き、香りの強いもの、品種の名前も粋なものが多い。
とにかく多種多様である。
"和バラ"という日本で品種改良された、繊細で、日本らしい奥ゆかしさのある草花のような美しいバラもある。
國枝さんの
シャルロット・ペリアンに捧げるバラ、として作られたという"ROSE CHARLOTTE PERRIAND"なんて、写真を見ているだけでため息が出るほど。
まだわたしは実際に市場で目にしたことがない。
いつか出会いたいなぁと思いながら。
毛嫌いされる理由のひとつである
茎にたくさん付いている棘を、ひとつひとつ丁寧に削ぐ作業ですら愛しい。
「他のお花と処理の仕方一緒にしないでくださる?」という姿勢ですら高貴に感じてくる。
「バラでも、めちゃくちゃかわいいものもありますよ〜最近はおしゃれなものが多いですからねぇ。きっと似合うと思いますよ〜ほら、こんなものとか...」と、わたしはチラつかせる。
「あ、かわいい〜!こういうのなら全然大丈夫です!こんな種類があるんですね〜!知らなかっただけだ〜!」という返答が返ってくると
なぜかわたしが「そうでしょう?そうでしょう!?」と得意げになってしまう。
すべては生産者さんや、仲卸してくれる市場の方のおかげなのにね〜。
布教活動成功だ。
そういうやりとりをしたお花が、2人の結婚式の思い出に深く残るといいなと思いながら。
かくいうわたしも、昔はユリが苦手だった。
まるで
"甘ったるい香水をぷんぷんと匂わせて、デパートの中をハイブランドのバッグを持ちながら闊歩しているおばさんのような花"
だと、なぜか思い込んでいたからだ。(偏見)
でも花の仕事をしていくうちに、ユリの特別な華やかさや、美しさはもちろん、大輪から繊細な品種まで、なにより品種の多さに驚いた。
「あ、わたしが知らなかっただけですね。」
と無知な過去の自分を恥じる。
ユリはとにかく傷つきやすいので、ブーケを作るのも難易度が高い。そういう意味でもとても特別な存在の花だ。
そんなわたしは、夏はササユリやタイガーリリーに夢中だったし、最近もブラウンのユリに夢中だ。
歳を重ねると適応能力は低下するし、いろいろなことに不寛容になっていく。
それは、おそらくどんなものでも映画も音楽も本もファッションも。
根底にある"すき"の軸は変わらなくても、特に花に関しては寛容でいたいと思う。
毛嫌いせずに、苦手だと思っていた花を手に取ってみよう、と思ってくれる人が増えたら良いなと思うし、わたしもそう思ってもらえるような提案をできたらいいなと思う。
秋の美しいバラとユリを見て、そう思う今日この頃。