真上
牧歌的な午後、横になって真上を見上げた。
それは天井。でもそのまた先には地面が張ってあるのだ。
天井、地面、天井、地面と続いたその上にはまた天井、その次に屋根。屋根の上には、雲が空を覆う。
空の向こうには、大気。対流圏、成層圏、中間圏、熱圏と、青だけの虹が濃さを増していく。
視線が地球から旅立った。でもこれだけではつまらない。ヴァン・アレン帯の磁力とピリピリするゲームを遊んだよ、通りゃんせ通りゃんせと。
そこを通り過ぎると、太陽系。たまには火星などからの宇宙人と目を合わせる。こんにちはとさよならをして、またその一直線に沿ってそのまま旅を続けた。
空が広くなった。それはもうそらとは読まない。普段あまり寂しさを感じない僕も、明かりが欲しくなった。
真上から十万km 離れた所で、枕と花模様が付いたシーツがこいしく感じ始めた。今来たこの道かえりゃんせと迷う。
でも話を聞かない視線は駆け足で猛ダッシュする、その前へ、更に前へと。すると、現れたのは一つの星。
あれは太陽じゃないよ。「きらきら星」の歌に出て来るもう一つの輝かしい恒星だ。金色のエネルギーをたっぷりとシェアしてくれて、この先進まずにずっとその優しい光に包まれたい気持ちがした。
先には何があろうか?空、星、空、星、空、星、そしてまた空、たまには奇怪な生物が浮遊する。私は静かに目を閉じた、視線がその星から離れる前に。
午後の静寂の中で、数分という永遠の時間を、あの星と分かち合った。
そして再び目を開けて真上を見ると、白い天井だけが情けなく一面に広がる。でもその先に、もっと先には、きらきら輝く優しいお星さまが今でも輝やかせている、いつまでも変わることのない金色の光を。