01.誕生日 ---「もう一人のわたし」より
~ 地球に住むわたし、Bがいる。
そしてAがいる。もう一つの宇宙で生きる双子きょうだいだ。
姿形が同じでなくても、性格がそれぞれ違っていても、心はいつも一つ。
おおむかしのある日、ずっと一緒だったエネルギーの塊が二人に分かれた。
その瞬間から、対話録が始まった。そして、今も続いている。~
B:「ねえ、きみ誕生日いつ?」
A:「分からないな。そもそも自分に誕生日というもの、あるかな?」
B:「ふむ。じゃ私にも無さそうだね。」
「まあ、どうでもいい。どうせ、この3次元にたどり着いた日付を祝うことにあんまり関心ないから。それに、意味のある、充実した暮らしであれば、毎日が最高の祝いであると思う。」
A:「そうね。そういえば私たちはある時点から存在し始めたのではなく、ずっと生きてきたんだね。誕生日というのは、待って、私たちが分かれた日なのでは?!」
B:「確かに、その通りだ。祝うどころか、悲しむべき痛ましい日ではないのか?私たちの別れを記念するなんて。」
A:「ええ、でもあんたの家族には?」
B:「家族にはちゃんと伝えた。私にはこんな習慣がないことを。」
「プレゼント買わなくて済むから、ありがたいんじゃないか?まあ、家族の誕生日は一応プレゼント送っているんだけど。」
A:「優しいね、きみは。」
B:「仕方ないもん、だって、彼らは私ではないし、私も彼らではない。」
「あの、実は、明日が公式のわたしの誕生日だけど。まあ、生まれた記憶も一切ないし、IDがその日になっているから、一応ね。」
A:「おお、お誕生日おめでとう!まあ、祝っていないことは知っているけど...」(握手)
B:「うん、大事な日では全くないんだけど、きみからこう言われるとなぜか嬉しい。」
(暖かい手を握りしめる)「ありがとう、明日もいい日でありますように。」
A:「そうだね、3次元生物として地球に住み始めた日の周年記念であっても、別れの初日を思い出させる頃であっても、この24時間を大切に使おうね。」