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新聞記者だった僕が聞いたのは、13人の沖縄人の「熱き仕事道」だった。
本書の著者は元新聞記者の内間健友。琉球新報社で社会部、政治部記者を務めたのち2017年に退社、その後は沖縄の雑誌『モモト』などに関わり、2023年、『日本バスケの革命と言われた男』(安里幸男著)の文章を共同で担当するなど活躍中のフリーライターである。
丸14年勤めた会社を、僕は辞めた。ちょうど38歳のことだった。
勤め先は地元沖縄の新聞社で、僕が社会人になってすぐに働き始めた会社である。
そこでは長い期間を記者として過ごした。仕事は忙しく、要領が悪かった僕は、毎日が一杯一杯で苦しかった。それでも、自由な社風と、頑張れば頑張るだけすぐに結果となって現れる仕事内容に、充実感さえ抱いていた。だが、そんな中、迷いが生じた。ここにはない違う人生が自分にはあるのではないか、と思い始めてしまったのである。
(中略)
会社にいた14年間がものすごく忙しかった反動なのか、しばらくは、毎日が祝日のような気持ちで遊びまくった。沖縄で生まれ育ちながら、恥ずかしながらしっかり回ったことのなかった沖縄県内各地の城跡を回ったり、昼間から映画館で映画を見たり、冒険心から、平日に昼飲みも試したりした。そんな生活はもちろん、長くは続かない。人生への焦りも出る。だが、僕の中で、やりたいことが一つ、すでに決まっていた。
(中略)
この先の仕事や生き方で迷った僕が、あふれるほどの情熱を持って生き生きと輝いている方々から話をうかがうことだ。会社を辞めたものの将来の展望を見通せない中で、そういった方々から話を聞いて、気づきと、自分の考え方の変化を期待するとともに、それをインタビュー記事にすることによって、同じように悩んでいる人たちの何か助けになりたい、という思いだった。生まれ育った場所が同じ沖縄ということで共通点が多く、僕がより身近に感じる沖縄出身や関係者へインタビューができたら、なおいい。そう考えた。
こうして、輝く人を訪ねる僕のインタビューが始まった。
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著者がそうやってインタビューを重ねてきたウチナーンチュ(沖縄人)たちは、小説家・ 落語家・バスケ指導者・平和教育ファシリテーター・ラジオパーソナリティー・元国連開発計画防災専門職員・大学教授・ミュージシャン・海外起業家・ファッションスタイリスト・ドラマー・映像作家・お笑い芸人と、肩書きも立場もさまざまだが、いずれも仕事に、人生にと、時に悩み時に迷いながら、それでも熱く仕事道を切り開いてきた人たちばかりだ。
やると決めたら、空いている時間を全部つぎ込むと考えた
#1 知念実希人 小説家/医師
やらない方が後悔する。やってみてから考えたらいい
#2 金原亭杏寿 落語家
笑われてもいいから高い目標を立てることが大事
#3 安里幸男 バスケットボール指導者
〝分からない〟を追求したことが情熱へと変わった
#4 狩俣日姫 平和教育ファシリテーター/株式会社さびら共同創業者
やりたいことを自分で口にするように意識している
#5 玉城美香 ラジオパーソナリティー/カフェ経営
目標達成って、たぶん原則は同じ
#6 仲村秀一朗 元国連開発計画防災専門職員/元米州開発銀行職員
兼業を続けた先に生まれる〝新たな融合〟が、社会を動かす種に
#7 豊川明佳 沖縄大学・大学院教授/有限会社インターリンク沖縄取締役
あたりさわりのない歌詞で満足なのか? 迷いの果てに見つけたもの
#8 比嘉栄昇 BEGINボーカル
どこで仕事をしても相手は人間。構えたり不安に思ったりしない
#9 金城拓真 海外(アフリカ)起業家
夢は叶う、叶えるもの。自分を知り信じてあげることが大切
#10 知念美加子 ファッションスタイリスト
あなたがそれを選んで、あなたの心が喜んでいることが重要
#11 中村亮 ドラマー/作曲家
自分の体を動かして、感受することを大事にしている
#12 山城知佳子 映像作家・美術家/東京藝術大学先端芸術表現科准教授
自分を信用する。自分の気持ちを大事にする
#13 内間政成 お笑い芸人・スリムクラブ
13人が語る、熱き「仕事道」と人生とは。
インタビューを終え、そして著者自身がたどりついた「14番目の仕事道」とは。
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