「沖縄の出版社はどんな本を出しているのか」という質問から考える、沖縄の人が沖縄への関心が高いわけ
「ボーダーインクってどんな本を出しているんですか?」と聞かれるたびに、「沖縄に関する本です」と答えている。
こういうときの、「沖縄に関する本」といわれてパッと思い浮かぶものは、きれいな海や空を撮った写真集とか、基地問題に関する本などになるのだろうか。もちろんそういう本も出しているが、そればっかりじゃない。
何年も前のデータだが、沖縄は「人口比において読書人口が全国最下位」なのだという。「長いあいだ鉄軌道がなかったので、電車での通勤通学のときに雑誌や文庫本を読むという習慣がない」というのが理由として挙げられていた。モノレールが浦添まで延伸した今はどうなっているのだろうか。
こんなふうに読書人口が全国最下位といわれる一方で、全国的に見ても沖縄に出版社が多いというのも、またひとつの事実である。
日本本州よりもずっと南にあって、たくさんの島とシマで成っている諸島。かつては日本ではなくべつの王国で、第二次大戦のときには苛烈な地上戦によって犠牲者を数多く出した。それから長いあいだ米軍の統治下におかれたのちに、「祖国復帰」を果たしたものの、今でも他国の大規模な軍隊が配属されている。
この独特で複雑なありようを、人々は調べ、記録し、そして自らの歴史として読みつぐことを強く欲してきた。
さらにもっと実用的な理由も。
たとえば園芸本。
日本でつくられた園芸本というのは気候の違いなどの理由からそのまま沖縄で使うことは難しい。
琉球・沖縄史について全国的に関心も高まっているが、やはり今も昔も、歴史本のメインとなっているのはいわゆる日本史である。
沖縄の人たちが自分たちの歴史を知りたいとなれば、地元で地元の人に向けてつくられた本がもっとも実用的だったのだ。
そんなこともあって、那覇市にある大手書店の売り上げランキングには日常的に沖縄関係書がランクインしている。
「よく本を出しますね」「こんなにたくさん出して、テーマが尽きないのですか」ということもよく言われる。
本をたくさん出すのは、基本的にその本を読みたいというニーズがあるからである。
そして、たとえば過去に出したことのあるテーマでも読者が変わればあらたに読んでもらえるようにもなる。だけどそれだけじゃなく、新しいテーマの本をつくってヒットすれば、新しいニーズが生まれて、さらに数珠つなぎにどんどんテーマが生まれ、そして拡大していく。
ニーズがあるから出版する、出版するからニーズが生まれる。出版社と読者とはクルマの両輪である。われわれは出版社の立場として、どこに何が埋まっているか、どこに次の種をまくか、四苦八苦しながら自分たちに見えていない何かを探すような毎日を送っている。どこかのだれかにあたらしい読書体験が生まれることを願いながら。
ちなみに、「自分で沖縄のことを調べて、それを本としてまとめたい」という人もかなりおり、じっさいに印刷所に持ち込んでカタチになって書店にも並んでいたりもする。「読み手よりも書き手のほうが多い」なんてことをからかい混じりに言われたりもするが、それもすべて「沖縄の人は沖縄のことに関心が高い」ということのあらわれだ。
長いユンタクになってしまったが、私たちがどんな本を出しているのかということでいえば、「日々の沖縄で実用的に使ってもらいたい本をはじめ、人々がどんなふうに生きて、暮らし、歌い、考え、学び、楽しむか、そういった本をオールジャンルで出している」ということになる。
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