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尾形充弘元調教師が受章!!
尾形充弘元調教師(75)は、この度、秋の叙勲において、旭日双光章を受章することが分かりました。JRA関係者の叙勲は、2020年の岡部幸雄、中村均両名以来、2年振りのことですが、日本調教師会の会長を務めた人物は叙勲対象となりますから、予定通りですね。
尾形充弘先生は、私の大好きなグラスワンダーを管理していた調教師で、これまた私の好きな尾形藤吉先生のお孫さんにあたる方です。お父さんの尾形盛次氏も元調教師で、藤吉先生の長男→盛次先生の長男という昔ながらの流れを汲む競馬一家で育ちました。盛次先生はあまり名前を聞かないかもしれませんが、メジロティターンを管理していたんですよ。1973年に調教師免許を取得し、1975年に開業、1996年に引退するまでJRA通算3243戦330勝を挙げました。
その尾形充弘先生は、尾形藤吉の孫で、尾形盛次の長男というポジションの重圧を嫌い、大学卒業後は一般の会社に就職したそうです。ところが26歳の時に競馬界入りを懇願、というか要請、というか強要というか、まぁ勧められて、英国留学を経て、競馬界に飛び込んだそうです。その後、1981年に藤吉先生が逝去されると、翌年に調教師免許を取得。この流れを見るとJRAが何かごにょごにょしたんじゃないかと疑ってしまいます。まぁ昔の話ですからね。忖度だなんだあってもいいじゃないですか。
開業した翌年にヨロズハピネスで日刊スポーツ賞金杯(現中山金杯)を制したものの、しばらくは障害競走での活躍が目立ち、なかなか平地競走の活躍馬が出ませんでした。しかし、1997年にあのグラスワンダーで衝撃のGⅠ初制覇を果たすと、両グランプリ制覇、有馬記念連覇など素晴らしい活躍を見せ、2018年に定年引退までにJRA通算800勝を挙げる素晴らしい成績を残します。800勝という記録は、石坂正先生や境勝太郎先生、松田国先生よりも多く、現役に当てはめると4位となる数字で、歴代30~40位ほどでしょうか。
2010年から一期でしたが日本調教師会の会長を務めました。前述の通り、日本調教師会の歴代会長は全て叙勲されていますので、流れ的に予定通りに受章となりました。来春で定年の橋田満先生や勇退した二ノ宮敬宇先生も70歳を迎えましたので、今後対象となるでしょう。
以下、尾形充弘先生のコメントです。
このたびの秋の叙勲において、旭日双光章を受章することとなり、身に余る光栄と恐縮するとともに、言葉に表すことが難しい万感の思いを感じています。尾形藤吉生誕130年のこの年に、祖父と同じく叙勲を受けることができましたのは、祖父からの厳しい教えがあり、名前を傷つけぬようにとの強い思いがあってのことであり、あらためて祖父や一門の先生方と過ごした日々が思い起こされます。今なお続く『尾形会』を代表していただいたものとして、ありがたく拝受したいと思います。今後も競馬に関する情報発信などを通じ、ファンの皆さまにより一層喜んでいただけるよう、競馬を側面からバックアップすることができれば、残りの人生が豊かになるとともに、競馬の発展に寄与できるのではと思っております。
■叙勲、勲章、褒章、受章、授章・・・紛らわしい言葉だらけ
さて、以前こんな記事を書きました。
この記事を作成するときに色々と調べたのですが、お役所仕事+マスコミのレベル差によって、内容がイマイチ理解できないケースがありますので、ここでしっかりと記録しておきたいと思います。
まず、叙勲とは何ぞや?と申しますと、顕彰するために天皇陛下が勲章を与える栄典のことであり、褒章とは顕彰するために天皇陛下が授与する栄典です。いずれも同じ栄典ですが、勲章の方が格が上であり、叙勲と同時に勲位も授かるケースがある点が違います。そのため、叙勲の対象者は原則70歳以上ですが、褒章の対象者は55歳以上となっている点に注意が必要です。
そして勲章を受け取る時は受章(受賞と間違えやすいです)と言い、授ける側(天皇陛下側)は授章と言います。色々なニュースを見ましたが、受章と受賞を間違えているケースや、叙勲や勲章と褒章をごっちゃにしているケースなどがありました。この辺も知らない読者からしたら、見るニュースによって誤解を招くケースがあると思います。
■勲章の種類
上記の記事に画像を載っけているので、そちらの方が分かりやすいかもしれませんが、勲章の種類は序列順に以下のようになっています。
Ⅰ菊花章
大勲位菊花章頸飾(だいくんい きっかしょう けいしょく)
大勲位菊花大綬章(だいくんい きっかだいじゅしょう)
※それぞれ従一位大勲位、従一位と合わせて授章されます。
Ⅱ桐花章
桐花大綬章(とうかだいじゅしょう)
※従二位と合わせて授章されます
旧制度では勲一等旭日桐花大綬章とされていました。
Ⅲ旭日章
旭日大綬章(きょくじつ だいじゅしょう)
旭日重光章(きょくじつ じゅうこうしょう)
旭日中綬章(きょくじつ ちゅうじゅしょう)
旭日小綬章(きょくじつ しょうじゅしょう)
旭日双光章(きょくじつ そうこうしょう)
旭日単光章(きょくじつ たんこうしょう)
※旧制度では、それぞれ勲一等~勲六等の名称が付されていました。
Ⅲ瑞宝章
瑞宝大綬章(ずいほう だいじゅしょう)
瑞宝重光章(ずいほう じゅうこうしょう)
瑞宝中綬章(ずいほう ちゅうじゅしょう)
瑞宝小綬章(ずいほう しょうじゅしょう)
瑞宝双光章(ずいほう そうこうしょう)
瑞宝単光章(ずいほう たんこうしょう)
※旧制度では、それぞれ勲一等~勲六等の名称が付され、それにより位を
表していました。
Ⅲ宝冠章
宝冠大綬章(ほうかん だいじゅしょう)
宝冠牡丹章(ほうかん ぼたんしょう)
宝冠白蝶章(ほうかん しろちょうしょう)
宝冠藤花章(ほうかん とうかしょう)
宝冠杏葉章(ほうかん きょうようしょう)
宝冠波光章(ほうかん はこうしょう)
※旧制度では、それぞれ勲一等~勲六等の名称が付され、それにより位を
表していました。
Ⅲ文化勲章
こんな感じで、最高級の大勲位菊花章頸飾から桐花大綬章を経て、同位となる旭日章、瑞宝章、宝冠章、文化勲章までの22種に分類されています。また宝冠章は女性皇族および外国王族のみに授与されるものですし、文化勲章は単一級の勲章なので、岡部さんと中村先生が受章された旭日小綬章は上から11番目、尾形充弘先生が受章された旭日双光章は13番目の位ということになります。ややこしいですね。
なお、これまで叙勲した競馬関係者は以下の通りです。
・尾形藤吉 勲五等双光旭日章 1966年叙勲(現旭日双光章)
・武田文吾 勲五等双光旭日章 1978年叙勲(現旭日双光章)
・藤本冨良 勲五等双光旭日章 1980年叙勲(現旭日双光章)
・田中朋次郎 勲五等双光旭日章 1989年叙勲(現旭日双光章)
・保田隆芳 勲四等瑞宝章 1995年叙勲(現瑞宝小綬章)
・鈴木康弘 旭日小綬章 2019年叙勲(旧勲四等旭日小綬章)
・中村均 旭日小綬章 2020年叙勲(旧勲四等旭日小綬章)
・岡部幸雄 旭日小綬章 2020年叙勲(旧勲四等旭日小綬章)
・尾形充弘 旭日双光章 2020年叙勲(旧勲五等双光旭日章)
■褒章の種類
勲章と違い、褒章には位の差がありませんので、言ってみればどれも同位みたいなもんです。受章する褒章の違いはその中身であり、相談役が受章した黄綬褒章は「農業、商業、工業等の業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を有する方に授与される」との事です。競馬関係者は、農業に該当するのかなぁ。農林水産省の管轄だから、こうなるのは分かるけどさ。
なお、これまで褒章を受章した競馬関係者は以下の通りで、全て黄綬褒章を受章しています。
・尾形藤吉 1964年
・稲葉幸夫 1981年
・二本柳俊夫 1992年
・的場文男 2020年
・柴田善臣 2022年
もっといるかと思いましたが、こんなもんなんですね。多分、あと何年かすれば武さんやノリさん辺りは受章しそうですし、藤沢和先生や吉田照哉氏なんかも受章しても良さそうですがね。
というか、武さんに至っては叙勲も対象になると思います。その場合、旭日小綬章ではなく、旭日中綬章あるいは旭日重光章などを貰わないと他とバランスが取れないような気がしますが、それは70歳までどれくらい活躍するかで変わってくるでしょう。競馬の成績だけではなく、競馬界全体への貢献という形で推薦に差があるでしょうからね。
そんなわけで尾形充弘先生、叙勲の話題をお送りしました。おそらく、来年または再来年あたりに同じようなニュースが飛び込んでくると思います。