子供SNS「4kiz」と本山さんはなぜマズいのか
前に2回のエントリを費やして、急いで4kizのことを書きました。
急いだのは、できるだけ早くこの問題を周知する必要を感じたためです。
一方、4kizの件は統一教会やカルトについて考える材料の一つとして、腰を据えて考えてほしい、とも思っています。
そこで、4kizのCEOである本山勝寛さんが「天一国指導者会議」での講演を含めて発信してきたことや、4kizの実態などを眺めながら、統一教会の「カルト」問題について、今回は書いてみます。
本山さんはどういう人なのか
最初のエントリでも書きましたが、本山勝寛さんは統一教会の「祝福二世」と呼ばれる、信者夫婦の間に生まれた信者です。子供5人のうち第4子で、お兄さんの勝道さん、勝由さんも、ともに統一教会の幹部になっています。
本山さんのお母さんは勝寛さんが12歳の時に亡くなったそうです。理由は分かりません。
にもかかわらず、勝寛さんが15歳のとき、お父さんが「国家メシアとして」ホンジュラスに渡ったんだそうです。
教団の人事だったのでしょうが、これはえげつないと思います。
両親がいない中、勝寛さんは一生懸命勉強し、東大に入って、当然「原理研究会」に所属します。
その後は更に「鮮文大学校」(韓国忠清南道)という統一教会の学校に入り、ハーバード大学でも学んだそうです。
2015年当時は、教団のエリートとして活躍しつつ、笹川陽平の「日本財団」で働いていたようです。
本人は信仰に従って行動している
本山さんは、日本財団在職中に何冊も本を出しているようです。
そしてこんなふうに言っています。
本山さんは、本気で「統一教会の教えを社会に広めたい」と思っているのです。そのための、ブログであり、著作だと、本人は考えています。
要するに統一教会の考え方を広める布教活動の一環です。
本山さんのような幹部級の信者も、というより、幹部級の地位を得ているからこそ、信仰を広げることに真剣みたいです。
二世信者という問題
本山さんの場合は、両親が信者である「祝福二世」で、お父さんはホンジュラスの「国家メシア」だったそうですから、教団内でもエリートに近い血筋と言えるでしょう。
兄弟ともども、良くも悪くも、その道を「運命づけられていた」と言えるかもしれません。そして、それ以外の道を選ぶことは、難しかったのではないかと思うのです。
お兄さんたちも教団の幹部になっています。統一教会では世襲の幹部が多く生まれています。
しかし、「祝福二世」はこうした幹部信者だけではありません。教団の采配(合同結婚式:祝福結婚)で引き合わされたカップルから誕生した「祝福二世」が、たくさん存在します。
「祝福結婚」は国際結婚も多いので、結婚によって韓国やそれ以外の外国へ渡った人、逆に日本で暮らすようになった人もいます。
そして、教団では避妊をさせないという話も聞くくらいで、子だくさんの「祝福家庭」が賞賛されます。
上記の講演は2015年ですが、今では本山さん自身も、5人の子を持つ父親になっています。
こうした教団のビジョンの中で生まれてくる「祝福二世」あるいは「祝福三世」たちがいます。この人たちが自己アイデンティティの問題に突き当たったとき、選択肢は限られてしまいます。
どう解釈したらよいのでしょうか。教団は、どう考えて、このようなことを奨励しているのでしょうか。
本山さんの信仰活動は肯定できるだろうか
本山さんは、この講演の中で、自らのアイデンティティについて語っています。
講演のあった2015年当時は、そうだったのかもしれません。
しかし、2022年9月4日、本山さんの名前をGoogleで検索すると、Wikipediaに本山さんのページができています。そこにある肩書きは「日本の起業家、著作家、ブロガー。株式会社4kiz代表取締役CEO」です。
ホンジュラスの「国家メシア」だったお父さんについても「父親がホンジュラスに移住」としか書かれていません。
原理研究会、統一神学校は書かれていますが、少なくとも積極的に信仰を見せているようには見えません。
これは、彼のブログやTwitterでも同じです。
彼はあくまで「起業家、著作家、ブロガー、株式会社4kiz代表取締役CEO」としてしか、振る舞っていないのです。
カルトであるということ
本山さんは、本件が話題になり始めた9月1日にこんなツイートをしていました。
本山さんが「子どもたちのため」というのは、彼にとって、たしかにそうなのかもしれません。
でも、彼の「子どもたちのため」は、彼が述べている「神様の摂理」に子どもたちや親たちを導くこと、であるはずです。
しかしそれなら、彼の信仰を明らかにし、あくまで宗教活動として布教しなければいけません。
統一教会では、人を信仰に導くためには嘘も許される、どのような手段であっても信仰に導かなければいけない、と教えているそうです。
ですが、それは人間として許されないことです。
人は誰しも、自らの信仰は、自らが主体的に得た情報に基づいて、自らの主体的な意志で選び取ったものでなくてはなりません。
そして、信仰の放棄も自由でなければならず、社会はそれを求め、支えなければなりません。
そうした社会を裏切り、騙すことは、いかなる理由の下においても、人権の侵害であり犯罪です。
そして、容認できない人権侵害を伴う宗教などを「カルト」といいます。
僕は、いかなる理由でも、本山さんの4kizや、統一教会の活動を支持することはできません。
二世信者問題
こうして考えると、「祝福二世」というのは、自らの信仰を選び取る機会や権利を、生まれながらにして著しく侵害された被害者であると思います。
もちろん他の宗教でも、子が親の信仰に大きく影響されるでしょう。しかし、統一教会の教義や活動は、およそ近代的な人権思想の下で、許される範囲を完全に逸脱していると言わざるを得ません。
教団が決めた相手と信者を結婚させ、たくさんの子を設け、二世、三世の信者を増やすことを奨励する。
僕は、教団による家畜の交配や繁殖を連想せずにはいられません。
信者の人たちは、自らの人生を賭けて献身するように言われ、同じ思考を持つ子供たちを、できるだけ多くもうけるように言われます。
このような宗教活動で、信者は自らの尊厳を全面的に教団に委ねていきます。子どもたちが与えられる親からの愛情や教えも、教団の論理から出ることができなくなるのです。
これが、統一教会信者の多くが抱える、深刻な「二世問題」だと、僕は思います。
統一教会には重大な人道上の問題があります。
それでも、内心でその信仰を持つことは信教の自由として許されるのです。
しかし、その教えを「普及させたい」と願う本山さんが、その背景を隠してスタートさせ、行政に食い込んでいるのが「4kiz」という「子ども用SNS」です。そして、そうした教団の活動を、戦前の「家制度」を賛美する自民党政権や「日本会議」などの極右勢力が、自らの目的のために支えてきました。
この人たちは、重大な人権侵害を、まさに「実行」していると言わざるを得ないのです。
僕は、これらに抵抗したいのです。