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21世紀に2つのナショナリズムを考える

ナショナリズムは「愛国心」や「国民意識」と言い換えられますが、国に対する帰属意識や愛着として、誰にでもあるものだと思います。
そうした感情や意識は社会参加意識や利他精神の土台にもなる良い面もありますが、ややもすると他者への憎悪や差別意識の温床になり、戦争の引き金になる怖いものでもあります。


国家と民族

フランス革命以後の国民国家においては、国家への参加意識(主権意識)を持つ「市民」の「市民的愛国心=Civic Nationalism」が育まれました。国家システムの基盤となる理念やイデオロギーが、愛国心の拠り所になるわけです。
革命後のフランスであれば「自由・平等・友愛」の精神や憲法、かつてのソ連や中国では共産主義などが、国家の掲げる理念として共有されてきました。
こういう「国家のあり方」は近代以降に成立したもので、市民的愛国心というのは、共和主義的な、いわば「左派的」な愛国心と言えると思います。

しかし、もうひとつ「民族的愛国心=Ethnic Nationlism」というものもあります。これは、言語や文化的伝統を共有する民族集団への帰属意識です。
古代から人類は、地域民族集団が形作る「国」が興亡する中で、多様な文化を育んできたわけですから、そうした民族意識が愛国心の源になるのは当然と言えます。
この「民族的愛国心」は、近代においては「右派的」あるいは「保守的」な愛国心と言えるかもしれませんが、かつては植民地独立運動を支えた精神でもあるのです。生得的な帰属に直結する民族意識は、やはり社会共同体の重要な基盤であり、「民族の自決権」という重要な国際理念に繋がっています。

ウクライナ問題

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