兵庫県知事選挙における株式会社merchuの問題についての感想
2024年11月17日に行われた兵庫県知事選挙に関して、株式会社merchuという会社が、斎藤元彦元知事を当選させるためのキャンペーンを受託していたことが、当該会社の社長である折田楓さんによって公表されました。
その内容が公職選挙法で禁じられている「選挙運動の買収行為」そのものだったので、驚きを持って迎えられています。
SNSでは、いろんなことが言われていますが、僕が最初に思ったことを書いておきます。
運動員買収の問題
なにがダメなのか
選挙のためには当然ポスターやチラシが必要だし、ウェブサイト構築やSNSのアカウントも必要です。それらに関して、業者に依頼すればお金がかかるのは当たり前で、選挙ポスターを印刷屋さんに発注しても、ウェブサイトを業者さんに作ってもらっても、それが法に触れるわけではありません。
では、なにがダメなのかというと、お金を出して「選挙運動」をさせることです。選挙運動中に電話をかけたりチラシを配ったりする「運動員」を、お金で雇えれば、選挙でお金持ちが圧倒的に有利です。選挙は金で買えるものであってはいけないのです。
ですから、選挙運動に関わる運動員は、金銭的利害がなく、無償で候補者を応援したい個人でなければいけないはずなのです。
しかし、運動員に報酬を払う買収事件は結構起きています。そりゃあ「手伝ってもらったお礼をしたい」とかいうのも人情なので、同情の余地があるケースもあるのです。
しかし、それを許してしまうと、金持ちが金をばらまいて選挙をやったり、当選後に公金が不正に支出される、汚職の温床になります。
もちろん、運動員がゼロでは選挙戦になりませんから、選挙管理委員会に事前に届け出ることで、定めの範囲で報酬を出せる運動員も登録できます。
ネット上の運動はどうなのか
近年、インターネット上での選挙運動が解禁され、その中でどういうことが買収に当たるのか、総務省による解説があります。
当然ですが「選挙運動の対価を払ってはいけない」というのは、オフラインの場合と同じことです。
そして、業者自身が「主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う」ことも、買収に当たるということです。
言うまでもありませんが、SNSや電子メールを使って発信するのも当然「選挙運動」であり、これを行う有権者は「運動員」です。
運動員が報酬を受けてはいけないのは、先に書いたとおりです。
株式会社merchuのやっていたこと
merchuによる「選挙運動」請負い
株式会社merchuは、まさにこの「選挙運動の企画立案」や「運動そのもの」を、ビジネスとしてやっていたことをnoteで報告しているのです。
総務省によると「主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う」ことは公選法違反になります。
ここで「merchuは提案しただけで、斎藤候補の裁量に従っている」という「形式的な」逃げを打つこともできますが、merchuでは「広報全般を任された」と言っちゃってますので、かなりダメだと思います。
SNSアカウントを立ち上げる(だれでもすぐできるけど)だけなら「選挙運動」そのものには当たらないと思いますが、明らかに「運用しちゃってる」のでダメだと思います。
チームで「運営」し、本人も「配信」しているので、もう「SNS上の選挙運動」そのものをやっています。
これは斎藤候補を個人的に支援する意図ではなく、会社社長としての行動なのですね・・・。
ボランティアなのか
merchuを擁護する人の中には、運動の部分は無償であって、ボランティアなのだ、という人もいますが、さすがに無理があります。
企業として仕事を受け、社員を使っていますから、どう転んでも「無償の運動員」ではありません。
また、社長自身も「特定の団体や個人を支援する意図はない」と明言して、この成果を「会社の実績」として誇っていますから、あくまでビジネスでやっているのです。
更に悪いことには、merchuの社長さんは兵庫県や西宮市などで各種委員に任命されており、もし無償で知事選挙の運動を請け負ったとしたら、それは利益関係者による利益供与ではないかと思います。
つまり、公金支出に関わる委員への登用と引き換えに、知事候補者の選挙運動を手伝うという、公金チューチュー問題ど真ん中です。
ということで、兵庫県知事選における斎藤候補の「運動」は、公職選挙法違反の(これ以上ない)見本ではないかと思うのですが、どうなんでしょうかね。
維新の会とか自民党とかの人たちは、こういうふうに「金で選挙を戦う」のが当たり前だと思っていることが異常なことであり、これが日本を腐らせていることに、国民は気付くべきです。
日本を悪くしているのは、消費税がどうとか、103万円の壁とか、そもそもそういう問題じゃないんですよ。