One Capitalがbooost technologiesへの出資を決めた背景にある、ソリューションのユニークさと人材の豊富さ
サステナビリティERP「booost Sustainability Cloud」を提供するbooost technologiesは、2024年11月、One Capital株式会社をリード投資家に据え、資金調達を発表しました。シリーズAラウンド以降での資金調達額は、総額33.5億円になりました。
なぜ、今回の大型出資が実現したのか。本投資を担当したOne CapitalのPartnerであり、現在はbooost technologiesの社外取締役を務める志水 優太と、booost technologies 代表取締役の青井 宏憲、取締役COOの大我猛に話を聞きました。
One Capitalが投資を決めるきっかけになった、プロダクトと人材の魅力
――One Capitalが、booost technologiesへの出資を決めた理由を教えてください。
志水:
大きく2つあります。まず1つ目は、エンタープライズ企業のグループ全体に導入できるプロダクト「booost Sustainability Cloud」があったことです。
2024年3月、有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示基準の草案(SSBJ)が公表され、2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業より順次、サステナビリティ関連情報開示が義務化される見込みであると発表されました。
「booost Sustainability Cloud」は開発の段階から、複雑で階層の深い組織構造のグローバル企業をメインターゲットとして想定されており、入力権限、承認ワークフローの設定など、さまざまな機能を実装したプロダクトです。
導入企業の92%が大企業であり、そのうち売上が5,000億円以上の企業が48%、売上が1,000億円以上の企業が44%と、大企業の顧客が大半を占めています。SSBJの最初の適用対象となる時価総額3兆円以上の企業に対しては10%以上に導入済みという、圧倒的なシェアを誇っているプロダクトであり、大企業においてそのような実績をもつスタートアップは他にないでしょう。
実際に、日本が誇るグローバルカンパニーの一社である伊藤忠商事にも、「booost Sustainability Cloud」は導入されており、連結対象会社約270社、11万人を越える社員が利用する、サステナビリティ分野における基幹システムのような役割を果たしています。
さらに「booost Sustainability Cloud」は、これまで社会的に重視されてきた温室効果ガス(GHG)の排出量だけでなく、ESG情報とも呼ばれる非財務情報全般を一元管理できる点も、出資を決めるにあたって大きく評価しました。
非財務情報の可視化は発展途上の分野です。これまで、さまざまな企業が独自の基準を設定し、ツールを開発してきました。しかしこれからは、世界共通の指標をベースにした可視化が求められ、財務情報への影響度合いを見えるようにすることも重視されます。そのような大きな流れのなか、非財務情報全体を可視化できるプロダクトは、世界的に見ても少ないです。
大変難しい領域ではありますが、booost technologiesはチャレンジをしており、その姿勢が素晴らしいなと思っています。また、非常に大きな市場があることは間違いなく、事業がスケールする可能性も感じました。
2つ目は、事業グロースのための人材が揃っていることです。
大前提として、エンタープライズへのサービス提供と、SMBへのサービス提供では考慮すべきポイントや、求められるスキルが異なります。営業で言えば、キーパーソンの特定や複数部門の巻き込み、ROIを意識した提案づくりなど、大企業ならではの重視すべきポイントが多数存在します。
booost technologiesの場合、代表取締役の青井さんは曖昧な領域の多いサステナビリティについて、広く深い知見をもっており、細かい部分までどのような疑問にも答えられます。取締役COOの大我さんは、企業向けERP(基幹システム)で世界最大のシェアを持つSAPで役員を務め、大企業とスタートアップの共創事業、サステナビリティソリューション事業など複数の新規事業を立ち上げた経験があります。
加えて、取締役CTOの高塚 智敬さんは株式会社NTTデータにて大企業向けのシステム開発・導入支援の経験があるスペシャリストです。VP of Salesの中西 孝夫さんは日本オラクルにてERPクラウド事業統括を務めた経験があります。この様にbooost technologiesにはサステナビリティ X 大企業向けの豊富な経営人材が揃っており、ブランド力、知見、営業力、開発力など、重要な要素が整っていると思いました。
大企業向けBtoB SaaSのグロースに、必要な知見と人脈をもつOne Capital
――booost technologiesが、One Capitalをリード投資家に決めた理由を教えてください。
大我:
理由は大きく3つあります。1つ目は、大企業向けのビジネス展開のあり方に関して共通のプロトコルで会話ができたことです。
今回の投資をご担当いただいた志水さんはBCG、アクセンチュアと大企業向けのコンサルティングの経験が豊富です。特にアクセンチュア在籍時代には、大企業向けのERPシステムの導入を長く経験されてきました。DX、SXとテーマに関わらず、大企業で何らかの変革を行おうとした際、ステークホルダーが多く、それを紐解きながら進めていく必要があります。
企業のSXを推進していくために、当社が新しいカテゴリーとして提唱している「サステナビリティERP」で、中長期で効果がでてくるサステナビリティの取り組みをデータで測れる様にしていくことが必須と考えていますが、まだ世の中に前例がありません。まったく新しいスタンダードをつくりながら、大企業の方々に認めてもらう必要があり、コミュニケーションの難易度は非常に高いです。その難しさをご理解いただき、我々と同じ目線でチャレンジいただけることが、信頼につながりました。
2つ目は、ロジカルに仕事を進めてもらえることです。
これも志水さん個人の特性によるところが大きいです。仕事の進め方がロジカルで、非常にやりやすいと感じます。目的やゴールを明確にした後、最終的な期限からマイルストーンを設定し、タスクを詰めていくという進め方は非常にわかりやすく、納得感の高いものばかりです。志水さんであれば、曖昧性を排除しながら仕事を進められると感じました。
3つ目は、One CapitalがBtoB SaaS分野に明るく、投資実績も多いことです。資金面でのサポートはもちろん、グロースのための知見やノウハウを共有いただけると思いました。
青井:
特に代表の浅田 慎二さんの存在は大きかったです。VC業界で経験が豊富であることに加え、SaaSへの知見が豊富です。一度展示会でお会いした際はその場で、我々の事業と似た海外の事業について、2〜3件紹介いただきました。そのうえで、理想的な組織構成や、気をつけるべきポイントについてもアドバイスいただき、頼れる方だと感じました。
また、豊富な人脈を築いておられることも魅力に感じたポイントです。実際に、今回のフェーズで伊藤忠商事からの出資がスムーズに進んだのは、浅田さんの人脈のおかげでもあると思っています。
ベンチャー同様のスピード感をもっているところも、One Capitalの魅力だと思います。今回の資金調達もそうですが、出資の検討を開始してから提案内容をまとめるスピードが非常に早く、booost technologiesの求める進行スピードにフィットしていました。
サステナビリティに正しく向き合う企業を増やし、日本をSX先進国へ
――志水さんから見て、今後のbooost technologiesに期待することを教えてください。
志水:
「サステナビリティERP」というポジションを確立していただきたいです。
そのためにもまずは、2026年より規制対応が求められる、時価総額3兆円以上のプライム上場企業のなかでプレゼンスを築いてもらえればと思います。その後は、規制対象企業の拡大に合わせ、時価総額1兆円以上の企業、5000億円以上の企業、と徐々に導入企業の範囲を広げてもらいたいです。さらにその先は、海外企業へもアプローチし、日本発のグローバル サステナビリティERPとして認知されるくらい大きく成長してほしいと考えています。
そのようなbooost technologiesのグロースに貢献できるよう、引き続きエンタープライズのお客さまの獲得や協業企業とのリレーション獲得など、個人のつながりもOne Capitalとしてのつながりもフル活用するつもりです。
――最後に、booost technologiesの今後の展望を教えてください。
大我:
我々がつくるのは、サステナビリティ情報開示のためだけのソリューションではありません。企業のSXを推進するためのソリューションをつくっており、実現のためには、創業以来蓄積し続けてきたデータの活用が重要だと考えています。
サステナビリティに関する取り組みは、どうしてもコストと見られがちです。本来は企業価値を高めるため、企業成長のための取り組みであると正しく認識してもらうために、企業が描いた「価値創造ストーリー」をデータで検証できるようにして、中長期目線で企業のSXを支援できればと考えています。サステナビリティに正しく向き合う企業を日本中に増やすことで、日本が世界から、SX先進国だと評価される未来に貢献したいです。
そのためにも、One Capitalとは、我々の目指す理想に向かって一緒に歩むパートナーとして、連携を深めていければと考えています。具体的には、大企業とのつながりづくりと合わせて、booost technologiesが会社としてさらに大きくなるための、仕組みづくりや組織づくりをご支援いただきたいです。組織を強くし、事業規模を飛躍的に高め、One Capitalと一緒に、日本をSX先進国にする挑戦ができればと思います。